107 / 759
107村を捨てる
しおりを挟む
******(カイ)
俺の住んでいた村は酷い場所だった。
生きるために、獣人は一日中働いた。いや、働くしかなかった。
体だけは大きかった俺も一生懸命両親の手伝いをした。
あの日の夜、20人程の獣人が村を棄てて逃げることにした。
冬の移動は大変だが、冬眠している魔獣も多く一番安全な季節だ。
これから向かうブルネリ公爵領は獣人の差別が禁止されているらしい。
寒さの中、厳しい移動だったが新しい町での生活に希望を持っていた。
後5日も歩けば町に着く・・・そんなときに、盗賊に襲われた。
皆バラバラに逃げた。父さんと母さんに手を引かれ何処を走っているのかも分からなかった。
レムも一生懸命に走ったが、大人の足には敵わない。
盗賊に追いつかれそうになった時、
「カイ、レムを連れて早く逃げろ。」
父さんと、母さんが盗賊に向かって行くのを見て、俺は泣いているレムの手を引いて森の中をひたすら走った。
風が強くなり、直ぐに吹雪になる。
この吹雪から身を守る場所を見つけないと。
数メートル先も見えなくなる中、レムを抱きしめて雪の中を進む。
「レム、大丈夫か。もう少し頑張ろうな。」
「お兄ちゃん、お父さんと、お母さんは」
「無事だよ。きっと後で会える。さあ、行こう。」
本当に会えるなら、どれだけ嬉しいか。
雪が降り足跡を隠してくれたが、俺達もこの雪の中で完全に道が分からなくなった。
「お兄ちゃん、もう眠いよ。」
「レム、寝ちゃだめだ。」
辺りは吹雪となり、もう歩くのは無理だ。
レムを抱きしめて少しでも温めようとしたが、俺も限界だった。
父さん、母さん、ごめんなさい。俺、レムを守る事が出来ない。
空耳か。吹雪の中で声が聞こえる。
人間だった。盗賊なら、一矢報いてやる。
俺と同じ位の子供も一緒だ
後から知ったが、浩司さんと拓さんだった。
「安心しろ、君達を助けに来た。他には誰も居ないのか。」
浩司さんが声を掛けてきたが、獣人の俺達を本当に助けてくれるのか心配だった。
魔法だろうか。浩司さんに抱きしめられると体全体を温かい空気が覆った。
拓さんは、この吹雪の中で探索魔法をかけていたのだろう。
他に人が居ないと分かると、どこかに連れて行く事を決めたみたいだ。
自分達のコートを俺達に着させると吹雪の中を軽々と走り抜けた。
連れて来られたテントには大勢の人間が居た。
でも、俺が知っている人間とは違う感じがする。
テントの中は暖かく、直ぐに新しい服の着替えを渡された。
レムだけは、なんとしても守りたい。
何でもやる、だから妹を助けて欲しいと言う俺の言葉に、レオさんが大丈夫と言って温かいスープを渡してくれた。
こんなに美味しいスープは初めてだった。
そして食べた事も無いフワフワのパンに甘いジャム。
俺達がどうなったのか話をしているうちに、レムが眠くなってきたのかウトウトとしている。
そんな姿を見て、寝場所を用意してくれた。
温かい布団の中、今が夢でない事を願いながら重たくなった まぶたを閉じた。
俺の住んでいた村は酷い場所だった。
生きるために、獣人は一日中働いた。いや、働くしかなかった。
体だけは大きかった俺も一生懸命両親の手伝いをした。
あの日の夜、20人程の獣人が村を棄てて逃げることにした。
冬の移動は大変だが、冬眠している魔獣も多く一番安全な季節だ。
これから向かうブルネリ公爵領は獣人の差別が禁止されているらしい。
寒さの中、厳しい移動だったが新しい町での生活に希望を持っていた。
後5日も歩けば町に着く・・・そんなときに、盗賊に襲われた。
皆バラバラに逃げた。父さんと母さんに手を引かれ何処を走っているのかも分からなかった。
レムも一生懸命に走ったが、大人の足には敵わない。
盗賊に追いつかれそうになった時、
「カイ、レムを連れて早く逃げろ。」
父さんと、母さんが盗賊に向かって行くのを見て、俺は泣いているレムの手を引いて森の中をひたすら走った。
風が強くなり、直ぐに吹雪になる。
この吹雪から身を守る場所を見つけないと。
数メートル先も見えなくなる中、レムを抱きしめて雪の中を進む。
「レム、大丈夫か。もう少し頑張ろうな。」
「お兄ちゃん、お父さんと、お母さんは」
「無事だよ。きっと後で会える。さあ、行こう。」
本当に会えるなら、どれだけ嬉しいか。
雪が降り足跡を隠してくれたが、俺達もこの雪の中で完全に道が分からなくなった。
「お兄ちゃん、もう眠いよ。」
「レム、寝ちゃだめだ。」
辺りは吹雪となり、もう歩くのは無理だ。
レムを抱きしめて少しでも温めようとしたが、俺も限界だった。
父さん、母さん、ごめんなさい。俺、レムを守る事が出来ない。
空耳か。吹雪の中で声が聞こえる。
人間だった。盗賊なら、一矢報いてやる。
俺と同じ位の子供も一緒だ
後から知ったが、浩司さんと拓さんだった。
「安心しろ、君達を助けに来た。他には誰も居ないのか。」
浩司さんが声を掛けてきたが、獣人の俺達を本当に助けてくれるのか心配だった。
魔法だろうか。浩司さんに抱きしめられると体全体を温かい空気が覆った。
拓さんは、この吹雪の中で探索魔法をかけていたのだろう。
他に人が居ないと分かると、どこかに連れて行く事を決めたみたいだ。
自分達のコートを俺達に着させると吹雪の中を軽々と走り抜けた。
連れて来られたテントには大勢の人間が居た。
でも、俺が知っている人間とは違う感じがする。
テントの中は暖かく、直ぐに新しい服の着替えを渡された。
レムだけは、なんとしても守りたい。
何でもやる、だから妹を助けて欲しいと言う俺の言葉に、レオさんが大丈夫と言って温かいスープを渡してくれた。
こんなに美味しいスープは初めてだった。
そして食べた事も無いフワフワのパンに甘いジャム。
俺達がどうなったのか話をしているうちに、レムが眠くなってきたのかウトウトとしている。
そんな姿を見て、寝場所を用意してくれた。
温かい布団の中、今が夢でない事を願いながら重たくなった まぶたを閉じた。
25
お気に入りに追加
210
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
筋トレ民が魔法だらけの異世界に転移した結果
kuron
ファンタジー
いつもの様にジムでトレーニングに励む主人公。
自身の記録を更新した直後に目の前が真っ白になる、そして気づいた時には異世界転移していた。
魔法の世界で魔力無しチート無し?己の身体(筋肉)を駆使して異世界を生き残れ!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界を服従して征く俺の物語!!
ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。
高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。
様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。
なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる