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106遭難

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俺は周辺に魔獣が居ないか広範囲に探索魔法を使って確認していくと

「遠くてハッキリ分らないけど遭難者が2人居るみたいだ。」
「拓ちゃん、俺はいつでも行けるぞ。」
「何を言っているんだ。駄目だ、こんな天気で外に出たら2重遭難になる。
 そもそも、こんな雪の中スキーを使ってもまともに進めないだろ。」

俺と浩司をロウガさんが止めようとする。
それでも行こうとすると、アクセルさんが一緒に行くと言い始めた。

「アクセルさん、ありがとうございます。申し訳ありませんが、俺と浩司だけの方が確実に救助できます。
 レオ、温かいスープを用意しておいて。
 ガラ、念のため30分置きに魔力の放出して位置を知らせてもらえる。」

浩司と俺の体をロープで繋いで外に出ると、エアウォークで雪の上を走り抜ける。
吹雪のために何も見えず、探索魔法だけが頼りだ。
そして見つけたのは、狼族の男の子と女の子の2人だった。
俺達の姿を見ると、男の子が女の子をかばうように立ち上がり警戒をするが今にでも倒れそうだ。

「安心しろ、君達を助けに来た。他には誰も居ないのか。」

浩司が優しく話しかけると男の子が首を横に振った
俺は探索魔法で周辺を調べるが、他に誰も見つける事が出来ない。

「駄目だ、周辺には誰も居ない。2人を連れて戻ろう。」

2人に自分達のコートを着せて背負って雪の上を走り抜ける。
皆が交互に天幕の周りに立って吹雪の中で魔力を放出して位置を知らせてくれていた。

「早く中に。2人にスープを用意してある。」

子供を背負ったまま天幕の中に入り、サイズは合わないが浩司と俺の服を着替え用に渡した。


「何でもやります。だから妹を助けて下さい。」

男の子の最初の言葉だった。

「大丈夫、心配しなくても良い。まずはスープを飲んで体を休ませて。」

レオが話しかけると少し落ち着いたみたいだ。
用意してくれたのはポタージュスープだった。
パンも用意したが、2人が遠慮して余り口にしない。
そこで、浩司がお代わりをする度に2人の皿にパンを置いて食べさせて行く。
ブルネリ公爵領で手に入れた果物で作ったジャムを出してあげると驚いていた。

男の子の名前はカイ、女の子の名前はレム。カイは俺より1つ、レムは3つ年下だった。
彼等の住んでいた村は獣人に対する差別が酷かったらしい。
そこで、別の村に逃げようと20人程の獣人が夜に紛れて村を出たが、途中で盗賊に襲われ2人は両親が盗賊の目を引きつけている間に逃げたそうだ。
他の獣人がどうなったかは分からない。
それから俺達に救助されるまで3日間雪の中を歩き続けたらしい。
安心したのかレムが眠そうにしているので、テントの1つで寝かせることにした。

2人が寝た後、地図を見ながら盗賊に襲われた場所を検討していく。
たぶん、彼等を見つけた場所から20キロ位行った街道だろう。
この近くは洞窟も多く、盗賊が隠れる場所が多いらしい。

「この雪の中で盗賊はどこかの穴に身を潜めていると思う。
 もしかすると、獣人を生かして捕らえているかもいるかもしれない。」
「拓ちゃん、今から探しに行くのは無しだぞ。
 あの場所で探索をかけても見つからなかったんだよな。
 これ以上はさすがに危険だ。とりあえず、今夜は休もう。」

浩司に止められ、しっかり抱きつかれて眠りについた。
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