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061技術提供

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サリナ姫がアークのメンバーに向って話しかける。

「皆さん顔を上げて下さい。今回の件、私達の争いに巻き込んでしまい申し訳ありません。
 彼のおかげで、全員無事に済んだことを大変うれしく思います。
 罰を受けるのは、あなた方ではなく、その背後に居る者です。
 マクニス王国第三王女サリナの名において、この度の行為を咎める事はしません。
 ただし、ここに居る者全員、この件について話す事を禁止とします。
 ブルネリ公爵もこれで良いでしょうか。」

ブルネリ公爵がサリナ姫の言葉に頷く。
やはり、貴族だったか。公爵と聞いても分からないが、たぶん高い地位なのだろう。
それに、サリナ姫が凄い。本物の姫みたいだ。いや、本物の姫なのは分っているのだが。

「ありがとうございます。」

ロウガさんの言葉に合わせて、アークのメンバー全員がサリナ姫に頭を下げた。

「拓ちゃん、王国から離れていて身内だけなら、何とでもなるのよ。」

そう言うサリナ姫が、とてもカッコよく見えた。俺は改めて礼を言った。
サリナ姫が下がると、ブルネリ公爵が話し始めた。

「サリナ姫の言う通り罪には問わないが、協力してもらいたい事がある。
 正直、我々が服従の魔法について解明している事は少ない。
 皆の体には未だ魔力の残骸が残っているかと思う。
 念の為、暫くの間は我々の監視下で過ごして頂きたい。
 後、服従の魔法を使用している者を捕えるためバラン将軍に協力して頂きたい。」

アークのメンバーは協力する事を了解した。そしてブルネリ公爵が俺の方を向くと

「拓殿、魔道を目指す者にとって新しい術がどれだけ貴重かは分っている。
 それでも、我々に解除方法を教えて頂けないだろうか。」

そう言って、頭を下げてきた。
先程の魔導師も、バラン将軍、兵士達も同じように頭を下げる。
こういう状態は苦手だ。

「拓殿、私からもお願いします。もちろん、それ相応の礼をさせて頂きます。」

そうサリナ姫が言い、頭を下げようとするのを慌てて押し止め

「やめて下さい、サリナ姫。どうしたんです、本物の姫みたいですよ。」

俺のセリフにサリナ姫のチョップが頭に炸裂した。

「私は本物の姫よ。拓ちゃんだって姫を付けて呼んでいるじゃない。」
「あれっ、そうですよね。分かっているんですが、本人と敬称が一致しなくて。」

更に、サリナ姫の空手チョップが俺の頭に炸裂した。このチョップ、地味に痛い。

「解除方法について教えるのは問題ありません。
 とりあえず、ブルネリ公爵、皆さんも頭を上げてもらえないでしょうか。」

それでも何故か全員が頭を上げないと思ったら、肩が小さく揺れていた。
バラン将軍が声を上げて笑うと、サリナ姫と気まずい俺を除いた全員が笑い始めた。
皆が落ち着くのを待って、俺が行った解除方法の説明を行う。

「理屈は分かります。しかし、必要な技術が高過ぎる。」

ブルネリ公爵が考え込んでいると、

「ブルネリ公爵、私は光と闇の魔力を持っています。
 服従の魔法を破れるなら、その技術を習得してみせます。」

服従の魔法を確認していた魔導師がそう言って前に進み出た。
アークのメンバーも罪に問われる事も無くなり、解除魔法を習得する優秀な魔導師もいる。
犯人の手掛かりになる裏切り者のレンドについては、バラン将軍に任せるしかないだろう。
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