異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日

文字の大きさ
上 下
50 / 759

050マクニス王国

しおりを挟む
「密偵より、先に起きたアスラーンとグランザムの王国間での戦争の原因となった魔道具の報告が有りました。」

どの国も先の戦が国土を取り戻す為の戦いでは無く、魔道具の争奪だったと知っている。
そして、その魔道具に対し軍事力としての興味を強く持っていた。

「その魔道具とは、いったい何だ。」
「ハッ、今までに無い未知の魔道具です。
 大きさは30cm程の四角い箱、上面に水晶体がはめ込まれているだけで装飾は有りません。
 探索魔法でも内部に高密度の魔力が蓄えられている事が分っただけです。
 1つは、遺跡近くで発動させると爆発し、巨大なクレータを形成。
 残りの1つは、先の戦争で発動され両軍の精鋭数百名を滅ぼしたとの事です。」
「それが何かも分らず、制御も出来ないのか。しかし、その破壊力は無視できぬな。」
「我が国も、直ちに遺跡の調査を行うべきかと考えます。」

密偵よりもたらされた報告により、マクニス王国においても遺跡調査を行う事となった。
王国で把握している勇者の遺跡の数は26ヶ所
その中で可能性の高そうな場所から調査を開始したが、新しい発見は何も無かった。
そして、最後となったのがエバの遺跡だった。


城の長い回廊を1人の大きな男が歩いていると、庭で御付の者を従えた女性から声を掛けられた。

「バラン将軍、少し宜しいでしょうか。」
「如何なされましたか、サリナ姫。」

バランはマクニス王国において最強と呼ばれる武人。
そして女性はマクニス王国第3王女 サリナ姫
バラン将軍を庭に連れ出すと、侍女を1人残して人払いをした。

「バラン将軍、次に行くエバの遺跡に私も連れて行ってくれませんか。
 その旅で、私の運命に関わってくる人との出会うかもしれないの。」

人払いを行うと、サリナ姫は急に砕けた口調でバラン将軍に話しかける。

「それは最近はまっているという占いですか。結婚される相手と出会うとは。」

バラン将軍がため息交じりに話す。
最近、貴族の女性の間で占いがはやり、このサリナ姫もはまっている。
カードを並べて、そこに描かれている絵を見て占うらしい。

「そんなロマンチックな出会いなんて有る訳が無いじゃない。
 でも、何度やっても同じ結果が出て来るのよ。
 それに、実際に遺跡を見る良い機会だし。」
「駄目だと言っても姫は付いてくるのでしょう。全く姫でありながら、こんなにお転婆とは」

国王には、王子が3人、王女が3人おり、サリナ姫は1番年下だった。
母は元女中で国王に見初められサリナ姫を身篭ったが、産後の経過が悪くサリナ姫が10歳の時に亡くなった。
母を失い後ろ盾も無いサリナ姫の周りには、彼女を取り込もうとする貴族が集まって来た。
彼女の母の護衛をしていたバラン将軍が、彼女の盾となり守っている。

サリナ姫は出身が貴族、平民関係なく気さくに接している。更には人族、獣人の垣根も無く対応していた。
それが他の貴族、一部の人族から反感を買っているのは分っていた。
何度か身の危険を感じる事も有ったが、彼女は自分の考えを変える事は無かった。

「サリナ様、この様な所でバラン将軍と何を話されているのです。」

1人の男が近付いてきた。

「バラキエ侯爵、どうかされましたか。」

サリナ姫は表情を消し、近付いてきたバラキエ侯爵に話しかける。

「サリナ様がバラン将軍と話されていたので、どうかされたのかと思いましてな。」
「ただの世間話です。侯爵には関係ありません。」
「そうですか。
 世間話も良いですが、いつまでも獣人なぞに情けをかけておらず、王女としての立場を自覚して頂けませんと。
 バラン将軍も、獣人なんぞ部下に置かず、魔法の使える人間だけで部隊を編成されては如何ですかな。
 サリナ様の警護に魔法も使えない者を付けられては困りますからな。」
「バラキエ侯爵、将軍の配下は将軍に人事権が有ります。幾ら侯爵とはいえ口を謹んで下さい。
 それに、バラン将軍を私の警備に付けたのは貴方ではないですか。」

バラキエ侯爵の言葉にサリナ姫が強い口調で反論するが、バラキエ侯爵は気にしなかった。

「そうでしたな。魔法が使えない獣人の護衛に意味が無い事を理解して頂けると思いましたが。
 まさか、使えない護衛に同情するとは予想外でした。」

「同情ではありません。バラン将軍の部下は頼りになります。
 侯爵こそ、獣人の能力を過小評価されているのではないですか。」
「サリナ様が襲われた時、盾になるくらいはなるでしょうが直ぐに壊れますよ。
 命は大切にしてもらいたいですね。」

そう言うとバラキエ侯爵は笑いながら立ち去って行った。
バラキエ侯爵は魔法を使えない獣人を否定している貴族の1人だ。
サリナ姫の母親が存命の間は、獣人にも普通に接していたが、亡くなると手のひらを返すように獣人を否定し始めた。
噂では、サリナ姫の母親を取り込み権力を得る為に獣人への偏見は無いと偽っていたと言われている。
そして、今ではサリナ姫の動向をチェックし何かと口を出して来る。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

筋トレ民が魔法だらけの異世界に転移した結果

kuron
ファンタジー
いつもの様にジムでトレーニングに励む主人公。 自身の記録を更新した直後に目の前が真っ白になる、そして気づいた時には異世界転移していた。 魔法の世界で魔力無しチート無し?己の身体(筋肉)を駆使して異世界を生き残れ!

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

異世界を服従して征く俺の物語!!

ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。 高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。 様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。 なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

処理中です...