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039後始末2

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2日も休めば俺の体調も完全に戻り、後処理を行う。
集めた魔獣の部位を浄化で奇麗にし、キラービーの毒袋から抽出した毒は瓶に移す。
そして、ミスリルの鎧を材料にしガラ、レオ、そしてエチゴさん達の今使っている防具と同形状の物を錬成した。
後は実際に防具を付けた状態で動いてもらい細かく形状を修正していく。

武器を確認してみると、威力を付ける為に中に他の金属を加え、それなりの重量を持たせてあった。
俺では、重心の感覚などが分らない為、作るのは無理だろう。
集めた武器にはミスリル製の片手剣、両手剣、斧に槍などが揃っていたので、その中から使い勝手の良い物を選んでもらい
刀身は刻まれた文字やマークを消し、持ち手部分を各自の好みに合わせて微調整を行うだけにした。
残ったミスリルの武器や防具について、どう分配するか相談したが、エチゴさん達は必要ないと言う。

「拓さん、ミスリルの武器、防具が高級品なのは、材料が高いだけではありません。
 それを錬成できる技術者が少ない上、魔力消費量が多く非常に時間がかかる為です。
 錬成術を使わない熟練の職人の場合、更に大変な作業になります。
 今回の様な微調整を行うオーダーメイドは、貴族だろうとなかなか出来るものではありません。
 この装備には、それだけの価値がありますよ。」

俺の錬成術は保有している魔力量による力技になっている。
そんな認識なので、エチゴさんに言われるまで感覚のズレに気付かなかった。
ガラやレオにも、自分専用に錬成したミスリルの防具だけで十分だと言われ、

「拓ちゃんが使いたいように使うのが一番なんじゃないか。どうせ錬成できるのは拓ちゃんだけだし」

との浩司の言葉で、皆の防具を無料修理する事にし残りは俺が受け取ることになった。
既にエチゴさんの前でアイテムボックスを使ってしまっていたので、ミスリルの武器と防具を収納させてもらった。

「改めて見ると、アイテムボックスというのは凄いですね。
 商人としても、冒険者としても憧れます。」

エチゴさんの言葉は、欲や嫉妬の感情も無く素直な気持ちみたいだ。
この人達なら、信じても大丈夫だろう。

魔石や他の魔獣の部位について頭分割でどうかと話を持ちかけたが、
これについても、自分達の分は必要ないと言われOZが頂くこととなった。

アルさんの防具はは動ける様になってから微調整を行う事にし、先に要望を伺ったのだが
肩にツノを付けたり、鋲の様な突起物をつけたいと独特の要求をするので全員から却下された。
元々体が大きく厳つい感じなるので、ヘルムだけを少し派手にすれば十分だろう。
作ってみると気に入ってくれたみたいで、隣に置いて始終笑顔で眺めている。

この広場でも何度か魔獣の襲撃を受けたが、暫くするとその姿は見かけなくなった。
そして10日後、アルさんを馬車に乗せて出発。
全員残念がっていたが、全ての装備はミスリルとは分らない様に細工をさせて貰った。

残りの道のりは順調で、俺達はエデンの町に到着した。

******

半年前
勇者の遺跡と言われる有史まえの建造物の地下から見たことの無い2つの魔道具が発見された。
学者達が魔道具を調べても、何の為に作られたものか分るものは誰もいなかった。

4ヶ月前
1つを発動させることにした。
しかし、発動させた魔道具は大爆発を起こし、周囲がクレータとなった。
この破壊力を知ったアスラーンとグランザムの王国は、残り1つの魔道具を手に入れるため遺跡へ精鋭部隊を派遣する。

先に、アスラーン側が魔道具を手に入れたものの、グランザムの兵に渓谷の上まで追い詰められ、
崖を背にして最後の抵抗を行っていたが戦況は悪化の一途をたどる。
このまま敵に渡るくらいならとアスラーンの武将が魔道具を発動させた。
大地は揺れ、崖が崩壊し両軍の200名を超える精鋭部隊は共に谷底へと消え、誰一人として戻って来た者はいなかった。
その死んだ肉体に幽体の魔獣が取り着き渓谷を、森をさまよい、エデンの町の方角へ進んでいたのだった。

魔道具の事は秘密とされ、
今回の戦を「大戦で失った領土を取り戻す戦い」として市民には伝わった。
その後、いくつもの遺跡が発掘されているが、何も発見はされていない。
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