上 下
38 / 709

038後始末1

しおりを挟む
目覚めると昼過ぎみたいだ。浩司と2人でテントの中で横になっていた。
元通りという訳ではないが、有る程度は回復した。
浩司は既に目覚めていて、俺が起きたのに気が付くと

「拓ちゃん、おはよう。体調はどうだ。」
「未だ怠いかな。浩司は大丈夫か。」
「俺の方は、もう問題無い。ガラに未だ寝ていろと言われて横になっているだけだ。
 しかし、今回はお互いに無理し過ぎたな。」

それでも、全員無事で良かったと笑っている。
浩司の体を調べて問題無い事が確認できた所で外に出た。
アルさんは、まだ裸のままシートの上で寝ている。
昨夜の痛みで、体力的にも、精神的にも限界だったのだろう。
昨夜は余裕が無かったが、落ち着いて来るとアルさんの体をマジマジと観察してしまう。

「拓さん、この度は本当にありがとうございました。
 おかげでアルも一命を取り止める事が出来ました。」

突然声を掛けられ変な風に見られてないかと焦ったが、エチゴは普通に話を続けた。

「こちら、薬の代金です。勿論、足らない分はラグテルの町に戻り次第、支払わせて頂きます。」

金が入っていると思われる袋を渡そうとするので

「それは受け取れません。
 代わりに、町に辿り着いたらお勧めの食事を御馳走して頂け無いでしょうか。」

あそこまでの酷い痛みの中、無事に一命を取り止められたのはアルさん自身の力だ。
それに、未だ後遺症が有るかもしれない。
こんなリスクの高い薬で金を貰う訳にはいかないだろう。


アルさんに使った秘薬は効果は高いが、その反動も大きい。
体の痛みは治まっても、10日間は動かす事は出来ない。
もし、無理に動かせば、治った傷が簡単に開いてしまう。

「拓は、もう動いても大丈夫なのか。」

起きている俺を見て、ガラが声を掛けてくる。

「まだ体が怠いかな。さっき、浩司の体を見たけど、もう元気になっていたよ。」
「そうか。でも浩司と拓は無理せずに休んでろよ。
 広場に散らばっていた魔石とアンデットが着けていた防具は集めてそこに置いてある。」

昨日は良く見れなかったが、立派な防具や武器が綺麗に並べて置かれていた。
街道の方に魔物が出てきている以上、安全確保を行った方が良いだろう。
土魔法を使い、岩の壁で周囲を囲んでいく。
正直、今の状態で魔法を使うのは辛かったが、安全の確保は最優先だ。

「万全の調子でないのに悪いな。拓は食事をして休んでいてくれ。
 俺達は、その間に倒した魔獣の後始末をしてくる。
 放置しておいて、他の魔獣が死体を食いに集まるとやばいからな。
 エチゴさん、2人の事を宜しくお願いします。」

ガラはそう言ってレオとダリウスさんと一緒に街道へ向かい
俺はエチゴさんが用意してくれた食事を頂きながら状況整理をさせてもらう。

「アンデットが着けていた鎧や武器はミスリル製で、見たところ2種類が有りますね。
 彼等は何処で亡くなったのでしょう。」
「装備を見るにアスラーンとグランザムの兵士かと思います。」
「それは、山脈の向こうに在る2つの王国ですよね。」
「両国の間で3ヶ月程前に戦が有ったと聞いていますので。
 あの山脈には1ヶ所だけ通り抜けられる渓谷が有ります。
 たぶん、アンデットになり、その渓谷を通って来たのでしょう。」
「やはり戦争ですか。しかし何の為に。」
「100年の大戦で失った領土を取り戻す戦いと言われていますが、実際はある魔道具の奪い合いらしいです。」

大戦で多くの人が死んだのに、馬鹿な事を続けるな。
しかし、大量のアンデットが現れた原因を知る事が出来た。

休んでいるとアルさんが目を覚ました。
体を動かす事は出来ないが、痛みはほとんど治まっているそうだ。

「それにしても、全身汚れと血で酷い状態ですね。一度体を洗った方が良さそうだ。」

エチゴさんは俺に休んでいる様に言って、小川の水を桶に汲むと上半身裸になりアルさんの体を洗い始めた。
石鹸も使って、アルさんの体は既に泡だらけだ。

アルさんの体は大きいので、俺も手伝う事にした。
腹の弾力が気持ち良い。体毛は軟かく、乾いたら顔を埋めて楽しみたいところだ。
それにしても、熊系の獣人だからか改めて確認すると筋肉が恐ろしいほど凄い。

浩司がテントから起き出してくると、水汲みを行ってくれた。
最後に水で流しタオルで全身を拭かれていた。
ガラ達が戻ってきた所で、乾いた所にアルさんの巨体をゆっくりと運ぶ。

「無事にアンデット討伐を成功させたお祝いをしようぜ。」

そう言って、浩司がバッグからフルーツタルトを取り出した。
見かけによらず、ダリウスさんもアルさんも甘党で
ダリウスさんは、アルさんが動けないのを良い事に、目の前で楽しそうに食べてご満悦。
しばらくアルさんの文句を楽しそうに聞いていたが、その後アルさんにも食べさせていた。
ダリウスさんの意外な一面を見たが、仲が良い2人だと思う。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

残り一日で破滅フラグ全部へし折ります ざまぁRTA記録24Hr.

恋愛 / 完結 24h.ポイント:24,963pt お気に入り:13,759

婚約破棄されたので、愛さないと決めました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,164pt お気に入り:1,835

悪役に好かれていますがどうやって逃げれますか!?

BL / 連載中 24h.ポイント:944pt お気に入り:2,554

記憶を失くした婚約者

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:2,978

処理中です...