上 下
28 / 713

028孤児院

しおりを挟む
レオとトドリの実を受け取りに孤児院に行こうとすると、浩司も行きたいと言うので全員で。
建物は結構なボロ。そこに、40人の子供が暮らしている。
国から金が出ているが財政状態は厳しいらしく、周囲からの寄付でなんとかもっている感じだ。
本来は定員30人の所を、無理やり40人で暮らしているらしい。

施設運営をしている院長と話している間に
この間の猫耳の女の子達がヘタの取ったトドリの実を持ってきてくれた。

『拓よ、トドリの実は癖は有るが、そのまま食べる事もできるぞ。』

グリムの言葉に従い1つ口に入れてみたが

「・・・不味い。」

食べれなくはないが、決して美味しいものではなかった。
それを見て、院長が笑いながら

「今では食べられなくなりましたが、昔は大切な栄養源でした。
 良ければ、トドリの樹を見て行きますか?」

院長に従って庭に出ると、そこには立派な大樹が2本そびえ立っていた。

「右がチコの樹、左がトドリの樹です。
 立派な大木ですが、今ではお腹を空かした子供達がおやつ代わりに食べる位です。」

『食料と薬を兼ねて、この2本を植えたんじゃろう。』

「拓ちゃん、あれって柿の木か?」

浩司が指し示す奥の方に木を見ると、確かに柿の木みたいだ。
近付いてみると、まだ緑色だが柿の実が付いている

「その実は、オレンジに色付いても渋くて食べられません。」

『儂も、その実を使った薬は知らんのう。』

「少し試したい事がありますので、実がオレンジ色になったら2,30個売って頂けますか。」
「使い道の無い実ですから差し上げますが、何に使われるのですか?」
「何か意味が有って植えたのではないか調べてみようかと。」

見た目が同じだからと言って、全てが同じとは限らない。
しかし、昔の人が目的を持って木を植え、チコの実やトドリの実の様に戦争の間に忘れ去れた可能性もある。
食べれるかも知れないなら、試してみた方が良い。
何と言っても柿は大好物だ。

「ところで、この広さの庭があるなら畑を作っては如何ですか。」
「そうしたい所ですが、ここの土地は岩なんです。残念ながら畑には向きません。
 そのおかげで孤児院を建てる事が出来たんですが。」

調べてみると、岩と言うより岩盤だ。ここを畑にするのは大変だろう。

院長と猫耳の子にお別れを言って家に帰ると、グリムに教わりながら風邪薬を精製する事に。
磨り潰して粉にしたチコの実とトドリの実を、部屋の窓の近くに皿に広げて3日間天日干しを行う。
3日後、白かった粉が赤と緑になったのを確認し、緑のトドリの実の粉だけをお湯で煮込むと粘りのある液体になる。
それをチコの実の粉と一緒に練り形を整えると、何とも言えない紫色の丸薬が出来上がった。
ウルトラアイで見ると、綺麗なオーラが見えるので成功したと思う。
取りあえず作ってみたが、この家の住人は健康過ぎて薬の必要は全くない。
エチゴ屋に素材を売るついでに、風邪薬の話をすると

「その薬を今お持ちなら調べさせて頂けますか。」

エチゴさんは薬を手に取り暫く眺めていた。目に魔力が集まるのを感じる。

「薬として中レベルという所でしょうか。宜しければ、こちらで預かって効果を確認させて頂いても?」

『どうやら彼は鑑定眼を使える様じゃな。良し悪しが分かっても、細かい事は確認が必要なのじゃろう。』

効果の確認が出来たら報告してもらえる様お願いし、エチゴさんに薬を渡した。
今後、この薬をどうするのか聞かれ、自分達用に作っただけだと答えると
効果が確認出来たら薬そのものか、製造技術を売る等を考えてはどうかと勧められた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】あなたは知らなくていいのです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:69,558pt お気に入り:3,821

異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:10,580pt お気に入り:2,404

死に戻りの騎士はΩとなって殿下を守る

BL / 連載中 24h.ポイント:99pt お気に入り:12

最強の商人令嬢 ~「落ちこぼれ」た妹でした~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:54

よつばの呟き

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

言葉の倉庫

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

異世界薬剤師 ~緑の髪の子~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:177

婚約破棄の現場に居合わせた王女

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:9

処理中です...