上 下
8 / 744

008魔獣との戦い

しおりを挟む
魔力は高く、攻撃、防御は十分な状態だったが、扱いが不慣れなため練習を重ね
ついに、グリムに十分魔獣と戦える状態になったとお墨付きをもらった。
そして、この世界に来てから半年、初めて家の周辺に張った結界の外に出る事にした。

グリムが用意していた素材を使って作り上げた装備を身に付ける。
浩司は普段使っている剣を持ち、俺も形ばかりに剣を持ちグリムを背中に背負った。

グリムが使っていた杖も有ったが、他人が使えない様にする所有者縛りの闇魔法が掛けられている。
盗まれない様に色々と試したらしく、その結果この300年の間に何故か黒い不気味なオーラを纏う様になっていた。
グリムにも理解でない現象らしく使うのは禁止、禁止されなくても怖くて触りたくない。

装備を揃えたものの、ガチガチに緊張している俺を見て

「拓ちゃん緊張してるみたいだな。俺が確実に倒すから大丈夫」

と浩司が笑いながら声をかけてくれたが、浩司も緊張しているのが分る。

『儂の知識も役に立つぞ。それに、拓の魔力を使えば周囲の気配を感じることも出来る。』
「そんな事が出来るのか。」
『ある程度は出来るぞ。任せろ。』

本当に心強い。しかし、俺がこんな状態でどうする。

「おし」

と大声を張り上げ全身に気合を入れる。

「俺が魔獣の攻撃をシールドで防ぐから浩司は魔獣を倒すことに集中して。
 厳しいと思ったら、直ぐに結界の中に戻ろう。臆病くらいで丁度良い。」

そう言って、ぎこちないながらも笑って見せた。

「「出発だ」」

浩司が風魔法で探索を開始する。周囲を調べてみたが小動物の気配しか見つからない。
更に範囲を広げていくと大型犬サイズの群れを発見。
集団と戦うのは止め、その場所から離れて開けた所を歩いていると、いきなり先ほどの群れが動き始めた。
それも俺達がいる方へ。その後ろに倍の大きさの魔獣の気配。

「拓ちゃん、さっき見つけた魔獣の群れが巨大な魔獣に追いかけられてるみたいだ。急いで、結界に戻るぞ。」

しかし、想像以上に動きが早い。
グリムが俺達との距離を教えてくれるが、体力を強化する光魔法を掛けても俺の足では結界の前に捕まってしまう。
隠れるにしても、丁度良い場所が無い。

「浩司は先に、俺は後から追いかける。」
「駄目だ。俺が時間を稼ぐから、その隙に結界まで走れ。」

そう言って、魔獣がやってくる方向に向かって剣を構えた。

「なら俺も戦う。俺が体勢を崩して隙を作る。」

そう言いって、浩司と自分に光属性による体力、筋力強化の魔法をかける。
直ぐに緑色の犬に似た魔獣の群れが俺達の方へと逃げてくる。
そして、その後方には体長5mはありそうな赤いトラの魔獣。

『まさかレッドタイガーとは、気を付けるんじゃ。皮は固く刃物を通さず、強靭な力に火魔法を使うぞ。』

グリムの言葉を浩司に伝えて、先ずは先手を行かせてもらう。
土魔法でレッドタイガーの足元に穴を掘り、その土で目の前に壁を作る。
目論み通り、穴に躓き土の壁に激突して巨体が倒れた。
体勢を整える時間を与えるか。
光の矢でレッドタイガーの目を攻撃をし、闇魔法で黒い触手を作りだし巨体を抑えこむ。

「ナイスだ、拓ちゃん」

浩司がレッドタイガーに向かって行こうとすると、いきなり俺達をめがけて複数の炎の玉が飛んできた。

「任せろ」

炎の球に浩司が水の球をぶつけて相殺していく。
炎の玉が途切れた瞬間に鋭い氷の刃を放つが、それはレッドタイガーが作った炎の障壁に阻まれてしまった。

俺も手伝いたかったが、闇魔法で押さえつけるだけ手一杯だった。
魔道具等を使用しない限り、複数の魔法を同時に放つ事は出来ない。この闇魔法を使っている間は浩司に任せるだけだ。

「炎の壁かよ。じゃあ、これでどうだ」

浩司の魔力が膨れ上がり、そして強力な雷が迸った。
直撃後レッドタイガーが雄叫びと共に痙攣し、そのまま動きを止めた。
闇魔法で押さえつけたまま様子を伺っていたが、どうやら仕留めたみたいだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。

隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。 婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。 しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

追放シーフの成り上がり

白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。 前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。 これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。 ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。 ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに…… 「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。 ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。 新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。 理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。 そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。 ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。 それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。 自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。 そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」? 戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...