欲にまみれた楽しい冒険者生活

小狸日

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3日後の夜、宮廷魔導士が到着したとの連絡があり拓達が領主の屋敷へ向かうと、
毎回一緒に壁や見張台を作っている宮廷魔導士達と護衛としてオリバー隊長以下5名。その中にはパウロ、ヨーゼフも居た

「お久しぶりです。私の提案に乗って頂きありがとうございます。」
「拓殿のお陰で、国としての警備体制を整える事が出来る。こちらこそ感謝する。」

拓が礼を述べると、オリバー隊長が頭を下げる。
領主の方でも木材等と小屋を建てる作業者、そして護衛の兵士を整えていた。
先ずは作る見張台について詳細を詰める事に。

領主が対応する見張小屋に付いては、現地で土砂を集め拓が壁を石で作り上げる。
屋根や窓や入り口、内装は作業者の方で対応するが、かなりの時間短縮となる。
拓は小屋の図面を確認するが、開拓地で作った子供達の秘密基地の方が手が込んでいる。
作り手としては面白く無いが、仕方がない。

「拓殿。塔を作るのに大量の魔力を消費するというのに大丈夫ですか?」

オリバー隊長が拓の体を心配する。

「私は腕輪に貯めている魔力を地面に流すだけなので問題ありません。
 今回は実験的に対応し、問題なさそうなら残りの見張小屋に対しても同様の提案をさせて頂きます。
 領主の方には作業代は頂きますけどね。」

拓はヘビモスの魔石を使った腕輪を見せると、オリバー隊長も納得していた。
作業代と言っても、領主が自分達で行う事に比べれば金も時間も大幅に節約する事が出来る。
オリバー隊長は、拓には手を煩わせてしまい申し訳なく感じていた。


次の日の早朝、領主に見送られながら一行は出発した。
但し、馬車は騎士団のスピードでなく、普通のスピードを維持しながらだが・・・
3日目の昼に、最初の目的地に辿り着いた。
魔導士が地面に図を描いた所で、早速石柱を作る。
拓はヘビモスの腕輪から魔力を取り出して土に流し込むと、魔導士達が全力で土魔法を発動させた。

盛り上がっていく土柱をルーカスとハックは茫然と見ていた。
土柱が出来上がると、魔導士達はその場に座り込んでしまう。

「お疲れ様でした。後は階段を作り上げれば見張台の完成ですね。
 私の方で壁を作ってしまいます。」

拓は魔導士に声を掛けると、続けて周囲に壁を作り始めた。
ここに来るための馬車を止めるスペース位を囲む予定だったが
階段のサイズを考えると、思ったより広くなってしまう。
スペースも有るので、休憩所と同等の広さを覆い、トイレスペースも用意しておく。
作業は夕食を挟んで深夜まで続いた。
ルーカスとハックは拓の作業が終わるまで見ていた。

「1人でここまでの作業を行って、大丈夫ですか?」

作業が終わった所で、ハックが拓の魔力の使い過ぎを心配する。

「大丈夫だよ。柱の方は自分の魔力を使っていないからね。
 明日は一日休みだから、ゆっくり腕輪に魔力を貯めれば問題無いかな。」

壁も腕輪の魔力を浸してから作っていたが、貯めた魔力は半分以上残っている。
移動時間も含めて、魔力を貯めれば大した負担にはならない。
どちらかと言うと、宮廷魔導士の方が厳しい状態だ。
次の日は、拓、宮廷魔導士、ハック、エチゴ、そして領主が寄こした技術者を残して、周囲の魔獣退治が行われた。
拓達はケーキと飲み物で寛ぎながら、開拓地で作った子供の隠れ家に付いて話をする事に。

「とても面白い建築物だと聞いて、どの様な物か知りたいと思っていました。」

貴族の子供も遊んで話題になる為、建築関係の技術者達の間でも噂になっているらしい。
拓が図面を描くと、技術者達も自分達のアイディアを色々と書き込んでいく。
視界を遮る様に柱を乱立させたり、地下に抜け道を作ったり、石組で強度を持たせて2階建ての建物にしたりと
拓でも対応出来る面白い絵が出来上がった。

「拓さんはこれを作るつもりですか?」
「村長に許可が貰えるのなら。こんなのを作るのは楽しいからね。」

ハックに聞かれて、拓は嬉しそうに答えて図面を見ていた。
ただ、今でさえ子供の秘密基地としては立派過ぎるのが、更にとてつもない物へとなってしまいそうだった。

夕方、魔獣退治に出ていたメンバーが戻って来たが、何故かルーカスがボロボロになっている。

「何が有った?ルーカス、大丈夫か?」

拓が心配して駆け寄って体を調べるが、汚れが酷いだけで何処も怪我はしていない。

「せっかくなので、特訓にとルーカス殿を中心にして魔獣退治を行っていました。
 剣を交えた時も思ったが、騎士団にスカウトしたい腕前ですよ。」

オリバー隊長が説明してくれる。
拓は笑顔で地獄の特訓をさせるオリバー隊長を思い出し、『ご愁傷様』と思わずに居られなかった。


夜、ハックがルーカスの疲れを取ろうと治癒魔法を掛ける。

「この旅に同行できてよかった。王都に居たんじゃ、こんな体験出来なかったよ。」
「初めての事ばかりだよね。話に聞いていた事も、実際はこんなに凄いなんて思わなかった。」
「そうだよな。特に拓さんのやっている事。簡単に話してくれていたけど、凄かったよな。」
「凄いと言うか、次元が違うよね。」

2人はこの旅での得た事を遅くまで話し合っていた。
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