欲にまみれた楽しい冒険者生活

504ボスキャラ

今日はサリナ姫達が来るので、朝からテントの中を大掃除。
天気も良く、洗ったシーツが風になびく中、ピストン商人の馬車がやって来た。
馬車の運転席に座っているピストン商人は疲れ顔。

「ピストンさん、本当にお疲れ様です。終わったら美味しい肉でも差し入れさせて貰いますから。」
「いえ、そんな気遣いは不要です。これも仕事ですから。」

乾いた笑いをするピストン商人。
護衛にはシンシア将軍、オリバー隊長が冒険者の服装をして付いていた。
ゴルゴとセルガにピストン商人を紹介するが、こちらの２人も疲れている顔をしていた。

そして馬車から自称商人見習いのメンバーが楽しそうに話しながら下りて来たのだが、後ろから降りてくる大人が２人。

「何故、ブルネリ公爵とクロイツ公爵が一緒なんですか。」

何時もの変装をした公爵が２人。
拓が小声でサリナ姫に聞くが、申し訳なさそうな顔をする。

「是非にと言われてしまって。あと、大物が控えているのよ。」

その言葉に合わせるように、最後のボスキャラが現れた。
拓が探索魔法で周囲を確認すると、何人もの兵士が隠れて護衛を行っている。

「こんなので気分転換になるの？」
「一応、公爵が相手をしてくれるから。拓が帰ってから３人とも嬉しそうに準備していたのよ。」

変装をしているが、その姿はどう見ても国王。
拓がサリナ姫と話していると、ボスキャラ国王が話しかけて来た。

「拓殿、商人見習いマークだ。宜しく頼む。こんなに良い雰囲気になったのだな。」

目を細め嬉しそうなボスキャラ国王・・・しかし、どう見ても商人見習いではない。
拓に対し、隠す気も無いのだろう。
拓との会話を聞いた一部のメンバーは誰だか気付いたが、公爵を含め全て元凶の拓に押し付ける事にした。
ただ、サブは逃げる事が出来ずにクロイツ公爵の玩具となっていた。

先ずは皆にスラム街を案内し、解体所や畑を見て国王や王子が色々と話を聞いていた。
最近は鍛冶屋等も出来ていて、Ｃランク冒険者位の武器や防具なら問題無く提供をしている。

「それにしても、子供まで解体作業を行っているのだな。」
「熟練の技術者が指導をしているから安心してくれ。ここで技術を身に付ければ将来助かるしな。
　ＯＺのお陰で、ガキどもも十分に訓練が出来て助かっている。
　あんた等、今夜はバーベキューなんだろ。直ぐに焼ける様に解体しておくから楽しんでくれ。」

相手が国王と知らない職人が笑いながら説明する。
畑では育っている野菜に興味を持ち、育て方や出来具合を確認し、鍛冶屋では武器の出来具合を確認していた。
色々と話を伺っていたため小さいエリアだが回り終わるまで結構な時間が掛かり、戻るとテントと直ぐに食事の準備をする。

「毎回ですが、バーベキューをします。魚介類も有りますので楽しんで下さい。」

皆でバーベキューをしていると、周囲から視線を感じる。

「拓殿、食材に余裕は有るだろうか？良ければ、食事を介して交流をしてみたいのだが。」
「良いですよ。せっかくなので皆で食べる事にしましょうか。」

ガラが「国王陛下がスラム街の人達と話したいと言うかもしれない。」と拓に助言してくれたので、追加で魔獣の解体を依頼しておいた。
ゴルゴとサブに皆に一緒にバーベキューをしないかと話しかけてもらう。
食器は自分達で持って来てもらう事にすると、家から何かしら食べ物を持って来てくれる。
拓も肉の他に大鍋で作っておいたシチューや子供達に菓子なども取り出すと、クリームや金狼に手伝ってもらい皆に配る。
国王や王子達も肉を焼いて配りながら、積極的に話をしている。
自国民の生の声・・・普段の立場では決して聞く事が出来ない言葉。
厳しい言葉も有るが、サリナ姫やＯＺの働きも有り基本的に好意的な話が多かった。
話題にはホワイトジャック、ハック、ルーカスの名前も良く出て来ている。

持ち寄ってくれた料理はＯＺに対し是非にと勧めてくる。
３人とも少しづつ食べていたが、全てを食べる前に腹一杯になってしまった。


「拓、何をしているんだ？」

拓が焼き肉で丼を作り始めたのでガラが聞いてくる。

「護衛の人達が隠れて警備をしているから、御裾分けでもしようかと。
　正直、こんな風になるとは思っていなかったから。ちょっと席を外すけど、宜しく。」

拓は丼をアイテムボックスに収納すると、姿を消して警備を行っている兵士達に配って回る。
兵士達は喜びよりも、拓に完全に隠れている事を察知され、逆に拓が近づいて来たことに気付けずにショックを受けていた。
バラン将軍に徹底的に扱かれているというのに、拓は少し離れている者まで全員を把握していた。