欲にまみれた楽しい冒険者生活

371酔っ払い

「拓様、ガラ様、レオ様、行ってらっしゃいませ。」

ＯＺの３人は貴族が使用する豪華な宿に泊まり、宿の人に見送られ馬車に乗り込んだ。
馬車は城に着くとサリバン先生を拾って演劇場へと向かう。

「本日は、お招きありがとうございます。」
「こちらこそ、お忙しい中付き合って頂きありがとうございます。
　本日は、楽しんで頂ければと思います。」

劇場は豪華で、思わず見入ってしまう装飾だった。
貴族達の為に個室なども用意されているが、流石にエチゴでもその様な席を取ることは出来ず一般席になるが
中央の丁度見やすい席を用意してくれた。

「凄い人ですね。」
「長い間、開催されていませんでしたらか、皆さん見たくて仕方なかったのでしょう。」

話を聞いて、拓は良くこの席を取ることが出来たと思う。
拓には言ってないが、商人の伝手で高い金額でチケットを買い取っていた。

この世界の演劇は元の世界のミュージカルの様な物だった。
内容は勇者と姫の恋いの物語。
魔法まで有り、元の世界とは比べ物にならない迫力が有った。

「初めて見ましたが、面白いですね。」
「素晴らしかったですわ。」

劇を見た後は、劇場の併設されているレストランで食事。
とても美味しく、後はをサリバン先生を送れば全て終わると思っていたのだが・・・

「何だ、お前が拓か？只の冒険者の癖に貴族を振ってばかりいるんだろ。」

酒を飲み過ぎて赤くなった顔の青年が拓に絡んで来た。
拓はサリバン先生を馬車に乗せると、レオがドアの前に立ち、拓とガラは馬車から少し離れる様に動く。

「何でお前がモテて、侯爵の俺様がモテないんだ。」

どうやら貴族らしいが、拓にとってどうでも良い事を叫ぶ。
直ぐに警備兵に押さえつけられたのだが、抑えつけられながらも白い手袋を投げつけてくる。
この世界でも手袋を投げつける行為は決闘を意味し、拾えば決闘を受け付けることになる。
回りが騒めく中、拓は無視する事に。すると

「拾う度胸も無いのかよ。ズゲベ侯爵の一族に手を出すなんて、お前もそうなんじゃないのか。」

拓は手袋を踏みつけ摘まみ上げた。
その手袋を青年の顔に投げつけると、その上から足で蹴りつける。

「決闘成立です。今行いますか。」

周囲が騒めく中、話を聞いたであろう青年の父親が慌ててやって来た。
父親は拓を見て真っ青になっているが、周囲には貴族も多く居て今更決闘を無い事には出来ない。

「拓様、決闘の正式な手続きに基づき、代役を立てさせて頂きたい。」

拓には決闘の手続きなんて分からず困っていると、周囲に居た貴族が前に出て来て決闘について説明してくれた。
決闘を行う者は代役を立てることができ、代役同士の決闘となるのが一般的だと。
代役を立てる時には、３日以内に代役を相手に通知をする義務が生じる。
ここで代役を通知しない場合は、自分自身が決闘に出る事が決まる。

「免責札を持つ者に絡み、決闘を挑んだのです。負けたらどうなるか理解されているでしょうか。」

貴族が父親に尋ねると、真っ青な顔のまま頷いている。
拓が確認すると、良くて一族共に貴族地位のはく奪、悪くて死刑。勝ったとしても降格は確実だった。

小声で教えてもらったが、この貴族はバラキエ公爵の派閥だった。
こんなバカの為に計画が台無しにされ拓は本当に頭が痛かった。