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356ダンス
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拓の週3回のダンスのレッスンは続いていた。
「まぁ、素晴らしいわ。こんなに一気に上達されるなんて。」
サリバン先生に褒められるほどの拓の上達。
当然拓は魔力で体の強化を行いながら、ダンスを行っている。
「拓殿の魔法操作技術は、王国の宮廷魔導士を上回るそうです。本当に凄い魔導士ですね。」
オリバー隊長がガラとレオに感心しながら話しかける。
ガラとレオも、これだけの魔法技術を見たことが無いが、何故ここまでの魔法が使えてダンスが踊れないのかが不思議だった。
未だ魔法に意識を集中している為にぎこちないが、拓なら問題ないだろう。
今日の指導が終わり拓達が部屋を出て行くと、サリバン先生は椅子に腰かけ大きなため息を吐いていた。
「先生、お水をどうぞ。」
「ありがとう。正直、今回の指導で私の教師としての人生は終わりだと思っていました。」
「本当に、お疲れ様です。ですが今日の状態なら大丈夫ではないでしょうか。」
「えぇ、やっと光明が見えました。」
拓のダンスの相手をしていた女性はサリバン先生がどれだけ悩み続けていたのかを知っていたので、拓がまともに踊れるようになってどれだけ嬉しかったか・・・
「先生、やりましたね。」
思わず、サリバン先生の手を握りしめ、涙を流しそうになってしまった。
拓は拓で努力はしていた・・・が、結果が付いてこなかった。
魔法での突破口を見つけてからは、時間が有ればダンスだけでなく魔法の特訓を始めた。
お陰でぎこちなさが無くなり、まともに踊れるようになった時にはサリバン先生が拓の相手をしていた女性と抱き合って喜んでいた。
サリバン先生は完璧な貴婦人の様な所作をしていたので、拓はこの姿を驚いていたが、
後でガラ、レオ、そしてオリバー隊長までもが固い握手をして喜んでいた。
「サリバン先生、拓をここまで指導して頂きありがとうございました。
正直、途中で匙を投げてしまったらどうしようかと心配していました。」
ガラが親目線で礼を述べると
「とんでもありません。教師生活でここまで達成感のある指導は有りませんでした。
本当に、良くここまで踊れるようになって・・・」
サリバン先生が答えていたが、最後の方は少し涙目になっていた。
良くここまでと言っても、拓自身 普通に踊れるようになっただけだと自覚をしている。
ダンス大会で優勝したとかなら分かるが、そこまで苦労を掛けていたのだろうか・・・その自覚も有るが。
「早速、国王様に報告をさせて頂いた方が良いですわね。」
「では、私の方で一報を入れさせて頂きます。国王様も心配されていましたので、これで安心されるでしょう。」
オリバー隊長の言葉を聞いて、拓は一気に疲れが出てしまった。
その日の夜は、国王からの誘いでOZ、サリバン先生、王子、サリナ姫、勇者達で夕食を取ることになったのだが
「流石はサリバンだ。良くやり遂げてくれた。これで皆が安心して舞踏会の準備が出来る。」
国王の言葉に、拓は自分のダンスの状況が城中に知れ渡っていると理解した。
ダンスに強化魔法を使おうとした時点で、仕方がないとは思うが・・・
「しかし話を聞いた時は、魔法の訓練よりダンスの練習時間を増やした方が良いのではないかと思ったが、色々な対策方法が有るものだな。」
国王が拓の対応方法を感心すると、サリナ姫が不思議そうに聞いて来る。
「ダンスに反射神経が必要になるとは思えないのですが、どう使われているのですか?」
「例えば足運びで歩幅やタイミングが合わないと女性の足を踏むことになるじゃないですか。
そういう時に反射神経を生かして、女性の足を踏まない様にずらします。
強化していないと不自然な動きになってしまいますし、最悪、踏んでしまいますから。
反応が早くなったお陰で、スムーズに見える様に踊れます。
本当は探索魔法を使えば、足の動きなどを把握してもっと自然に動けるのですが警備に引っ掛かってしまうので。
魔法って凄いですね。自分が魔導士で本当に良かったですよ。」
「???」
足を踏まないための反射神経?探索魔法を使って相手の動きの把握?
拓の答えを聞いても、誰も理解できていない。
しかし、それでまともに踊れる様になった事を喜んでいるのを見て特に突っ込む者は居ない。
「拓殿が踊れる様になったのなら、後は同伴する女性をどうするかだな。」
国王の言葉に拓の顔から笑顔が消えた。
「まぁ、素晴らしいわ。こんなに一気に上達されるなんて。」
サリバン先生に褒められるほどの拓の上達。
当然拓は魔力で体の強化を行いながら、ダンスを行っている。
「拓殿の魔法操作技術は、王国の宮廷魔導士を上回るそうです。本当に凄い魔導士ですね。」
オリバー隊長がガラとレオに感心しながら話しかける。
ガラとレオも、これだけの魔法技術を見たことが無いが、何故ここまでの魔法が使えてダンスが踊れないのかが不思議だった。
未だ魔法に意識を集中している為にぎこちないが、拓なら問題ないだろう。
今日の指導が終わり拓達が部屋を出て行くと、サリバン先生は椅子に腰かけ大きなため息を吐いていた。
「先生、お水をどうぞ。」
「ありがとう。正直、今回の指導で私の教師としての人生は終わりだと思っていました。」
「本当に、お疲れ様です。ですが今日の状態なら大丈夫ではないでしょうか。」
「えぇ、やっと光明が見えました。」
拓のダンスの相手をしていた女性はサリバン先生がどれだけ悩み続けていたのかを知っていたので、拓がまともに踊れるようになってどれだけ嬉しかったか・・・
「先生、やりましたね。」
思わず、サリバン先生の手を握りしめ、涙を流しそうになってしまった。
拓は拓で努力はしていた・・・が、結果が付いてこなかった。
魔法での突破口を見つけてからは、時間が有ればダンスだけでなく魔法の特訓を始めた。
お陰でぎこちなさが無くなり、まともに踊れるようになった時にはサリバン先生が拓の相手をしていた女性と抱き合って喜んでいた。
サリバン先生は完璧な貴婦人の様な所作をしていたので、拓はこの姿を驚いていたが、
後でガラ、レオ、そしてオリバー隊長までもが固い握手をして喜んでいた。
「サリバン先生、拓をここまで指導して頂きありがとうございました。
正直、途中で匙を投げてしまったらどうしようかと心配していました。」
ガラが親目線で礼を述べると
「とんでもありません。教師生活でここまで達成感のある指導は有りませんでした。
本当に、良くここまで踊れるようになって・・・」
サリバン先生が答えていたが、最後の方は少し涙目になっていた。
良くここまでと言っても、拓自身 普通に踊れるようになっただけだと自覚をしている。
ダンス大会で優勝したとかなら分かるが、そこまで苦労を掛けていたのだろうか・・・その自覚も有るが。
「早速、国王様に報告をさせて頂いた方が良いですわね。」
「では、私の方で一報を入れさせて頂きます。国王様も心配されていましたので、これで安心されるでしょう。」
オリバー隊長の言葉を聞いて、拓は一気に疲れが出てしまった。
その日の夜は、国王からの誘いでOZ、サリバン先生、王子、サリナ姫、勇者達で夕食を取ることになったのだが
「流石はサリバンだ。良くやり遂げてくれた。これで皆が安心して舞踏会の準備が出来る。」
国王の言葉に、拓は自分のダンスの状況が城中に知れ渡っていると理解した。
ダンスに強化魔法を使おうとした時点で、仕方がないとは思うが・・・
「しかし話を聞いた時は、魔法の訓練よりダンスの練習時間を増やした方が良いのではないかと思ったが、色々な対策方法が有るものだな。」
国王が拓の対応方法を感心すると、サリナ姫が不思議そうに聞いて来る。
「ダンスに反射神経が必要になるとは思えないのですが、どう使われているのですか?」
「例えば足運びで歩幅やタイミングが合わないと女性の足を踏むことになるじゃないですか。
そういう時に反射神経を生かして、女性の足を踏まない様にずらします。
強化していないと不自然な動きになってしまいますし、最悪、踏んでしまいますから。
反応が早くなったお陰で、スムーズに見える様に踊れます。
本当は探索魔法を使えば、足の動きなどを把握してもっと自然に動けるのですが警備に引っ掛かってしまうので。
魔法って凄いですね。自分が魔導士で本当に良かったですよ。」
「???」
足を踏まないための反射神経?探索魔法を使って相手の動きの把握?
拓の答えを聞いても、誰も理解できていない。
しかし、それでまともに踊れる様になった事を喜んでいるのを見て特に突っ込む者は居ない。
「拓殿が踊れる様になったのなら、後は同伴する女性をどうするかだな。」
国王の言葉に拓の顔から笑顔が消えた。
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