欲にまみれた楽しい冒険者生活

小狸日

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次は町となる1つ前の村にクロイツ公爵が待っていた。
公爵は普段着だが、何人もの護衛を付けた馬車が村の広場に止まっている。

「久しいな、拓殿。」
「どうしてこちらに?商人見習として動いている訳では無いですよね。」
「こちらの方へ用が有ったので、拓殿を驚かせようと待っていた。」

笑いながら話すクロイツ公爵。確かに拓もこれには驚いていた。
この辺はクロイツ公爵の派閥の貴族が治めていているらしい。

「しかし、拓殿の作った休憩所は素晴らしいな。
 盗賊退治も行ってくれたそうで、お陰で安全に行動する事が出来た。」

今回作った休憩所を使って移動していた。
食事をしながらクロイツ公爵は王都での動きを話してくれた。

「無事に村人の開拓地への移動が行われたぞ。特に問題も無かった」
「本当ですか。良かった。」

良かったと言いながらも、拓は浮かない顔をしている。

「何か心配事でもあるのか?」
「想像以上に早く開拓が終わってしまったので、手伝ってくれたスラム街の技術者をどうしようかと。」
「拓殿はどうするつもりだったのだ?」
「今回の成果を持って、貴族の方々に雇用を打診しようと思っていました。」
「年始のパーティで話しかけようとしていたか。」
「はい。私が接点を持っているのは、そこしかないので。」

クロイツ公爵はそれ以上は聞かず、別の話題に変えていた。
夕食後、クロイツ公爵はエチゴと2人になると今回合流した目的を話す。

「エチゴ殿は知っていると思うが、ここの領主は少々強引で癖が有ってな。
 町に泊っている間は、同行をさせて貰えないだろうか。」
「逆に助かりますが、何故でしょうか。」
「以前、拓殿が男爵達と王都で店巡りをしていた時、無理に誘おうとして氷魔法を掛けたらしい。
 また強引な事をして、拓殿に敵対心を持たれたくない。
 それに、拓殿と繋がりが有るとアピールできるかなら。」
「しかし、拓さんはその様な貴族との関りは・・・」
「分かっている。他の貴族への牽制だ。それにブルネリ公爵だけというのは気に入らなくてな。」

最後の言葉を笑いながら話すが、貴族派閥の中でも拓の立ち位置は微妙だった。
エチゴもここの領主の事は良く知っていて、どう対応するか頭を悩ませていた所だった。
拓が氷魔法を使ったのは知っている。
サリナ姫が居なければ、凍傷になっていた可能性が有ったと。


この町では、拓がダンジョンを見てみたいと言うので、10日程滞在することになっている。

「この町に守護龍の伝承があるダンジョンが在るのか。
 さっさと貴族を回って、ダンジョンに挑みましょう。」

今回は、OZだけでなくクリームやエチゴ、アルも同行する。
拓に何か有っては問題になる・・・と言っているが、本当はどうなのだろう。

町に着くと早速領主の下へと案内されたが、クロイツ公爵が同席するのは想定外だったみたいだ。

「クロイツ公爵が同行されているとは知りませんでした。」
「パーティで貴族が王都へと移動を始めるからな。
 その前に、拓殿の作った休憩所の確認をしていた。
 良い機会なので帰りも同行し、エチゴ商隊の仕事を見学させてもらうつもりだ。」

拓を強引に自分の元に引き込もうとした領主の計画は潰れ、
食事会に自慢の娘を用意したのだが、公爵が居るため拓にアプローチ出来ずに終わってしまった。
ちなみに、拓は領主の顔も覚えていなかった。

次の日の町に居る貴族を回る際にもクロイツ公爵が同行し、拓のバックに付いている事を強調していた。
全ての予定を終わらせると夕方になっていた。

「そう言えば、拓殿はワイバーン、ロックバード、プテラの肉を盗賊討伐の後に兵士達に振舞ったそうだな。」

食事をどうするかという話になると、クロイツ公爵がふと思い出したかのように話す。

「そう言えば、食材を調理してくれる店が在るらしいぞ。料理人の腕もなかなかの物だそうだ。」
「・・・」

まさか、ここで肉の催促がされるとは思わなかったが、OZやクリームのメンバーも喜んでいるので
拓が提供する肉をクロイツ公爵が買い取ることになった。

「クロイツ公爵、お待ちしておりました。」

店の人全員に出迎えられる。既に予約までされている。
拓がアイテムボックスから肉を取り出し料理長に渡すと、

「聞いていた通り良い肉です。早速調理に掛からせてもらいます。」

やはり、ワイバーン、ロックバード、プテラの肉を料理する事は決まっていたみたいだ。

「しかし、ここまでの量は必要ないかと。」
「クロイツ公爵の護衛の方々の分も入っているのですが、そういう予定では無かったのですか?」

料理長が「えっ?」という顔をし、クロイツ公爵も一瞬言葉に詰まったが

「拓殿のご厚意に感謝する。料理長、10人分の食事の追加を頼む。
 2人分は持ち帰り用として準備をしてくれ。」

クロイツ公爵は荷物の見張りに2人残し、残りの兵を全員を店に呼んでいた。
料理はとても美味しく、流石はプロの料理人。
クロイツ公爵から十分な肉代を受け取っていたが、拓は兵士達全員に握手をされ礼を言われていた。
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