欲にまみれた楽しい冒険者生活

小狸日

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298夜空

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午前中に治療の時間を設けたので、城に滞在している間に出来る事は少ない。
今日は、午後に書物庫でポトリ教授と遺跡や伝説に付いて話をしていた。
次の休憩所作りでは、伝承が多く残っている地域を移動する。
その伝説と、その中心にある遺跡について中心に話を聞く。

ポトリ教授は遺跡周辺の過去からの動きを調べ、伝説がどう広がったかを推測していた。
伝承は2ヵ所から広がっている可能性があり、調べていくうちに

「伝承は2つ有ったと考えられます。
 それが、人の移動が行われるようになり、1つにまとまった可能性が有ります。」

伝説の内容を細かく確認すると、別々の伝説が人の移動と共に混じり合っている様に見えた。
更に伝説の発祥地と思われる2ヵ所にはダンジョンへの入口が存在する。
残念ながら1つは潰れている。

「1つの遺跡を2ヵ所に分かれて管理していたという事ですかね。」
「そうかも知れません。ただ、この遺跡には珍しいダミーコアが設置された部屋が有ります。
 もしかすると、それが関係している可能性もあります。」
「ダミーコアですか?」

拓が知っているダミーコアは、コアを破壊した後に見た目だけでもと人が設置したものだったが
ここでいうダミーコアは、ダンジョン自体が作った複製体。
結界も張られ、発見当時は2つのダンジョンが融合したのではないかと話題になったが
その後の研究で、1つはダミーだと判明されていた。

「今回まわる予定の街道ですが、片側は魔獣だけでなく盗賊も多いと聞いていますのでご注意ください。」

その周辺は地形が入り組み洞窟も多く有り、根城にする盗賊が居るらしい。

話が終わった時には、かなり遅い時間になっていて、拓はポトリ教授に礼を言うと国王との食事へ。
国王が兵士の治療に対し礼を言う場と言っていたが、何時も通りの食事だった。
食事が終わると、拓が魔道具の接続についての回答資料が渡された。
拓がその場で読ませてもらうと

「そういう事か。制御の為のフィードバックの配線が問題だったのか。
 成程、魔力にも位相みたいな考えが存在しているんだ。」
「拓さん、位相って何です?」
「電気の世界で状態を確認する為の情報をフィードバックさせるんだけど
 信号がずれるとまともに動かなかったり、暴走してしまうんだ。
 それを位相という物で表して信号の調整をするって感じかな。」

浩司は拓の説明を聞いて何となく理解したみたいだ。

「拓殿は元の世界では技術者だったのか?」
「少しだけ技術の勉強をしていました。ただ、技術者の卵といった所でしょうか。」

拓は国王に礼を言うと、食事を終わりになった。
それぞれの部屋に戻ろうとした時

「拓さん、来週時間が取れそうなんですが、町の案内をしてもらえませんか?」

浩司が言うと、由美と里香も期待を込めて拓を見る。

「そうなんだ。調整するよ。ついでに少し話しておこうか。」

オリバー隊長には後で寄宿舎に戻ると伝え拓は由美、里香と一緒に浩司の部屋で話すことにした。

部屋に入ると、そのままベランダに出てアイテムボックスから棒を取り出した。

「昼間の遊覧飛行も良いけど、夜も結構楽しいよ。」

勇者の3人が棒を掴むと、体が浮かぶ。

「それじゃ、行くよ。絶対に棒を手から離さないでね。」

拓は姿を隠すと空に飛びあがる。

「やっぱり凄いな。」
「これこそ魔法よ、ファンタジーよ。」
「拓さん、神。」

拓はそのまま王都の上を飛んで戻って来た。
勇者3人の興奮が収まらないが、次は昼間の遊覧飛行の約束をして拓が第3騎士団の方へと向おうとすると声を掛けられる。

「拓殿、同行させてもらっても良いですか?」
「オリバーさん。もしかして待っていてくれたのですか?」
「いえ、雑用を行っていたら丁度拓殿の姿が見えたので。」

拓はオリバー隊長に礼を言って、歩き始めたが夜遅いにも関わらず声を掛けてくる令嬢が多い。
拓はオリバー隊長の腕を掴むと柱の陰に隠れて魔法で姿を隠す。

「拓殿、城内で魔法は。」
「弱い魔法で、一応魔力が発散しない様にしています。
 とりあえず、このまま庭まで駆け抜けましょう。」

拓の魔法は弱く城のシステムに感知されなかったが、令嬢達には半透明の黒い影として見えていた。
次の日、城中に亡霊の噂が広がっていた。
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