上 下
274 / 530

275治療2

しおりを挟む
数日後、朝早くに腕を損傷した兵士は拓達に連れられてスラム街にやって来た。
勇者やオリバー隊長、数人の医師も同行している。

やって来たメンバーをゴルゴが迎え、サブが直ぐに白衣に仮面を被ったホワイトジャックを連れてくる。

「ここに顔を出して良かった。しかし、拓が手助けを求めるとは珍しいな。」
「お手数を掛けます。私では対応しきれない怪我でしたので。」
「別に良い。弟子にと誘った拓の言葉を無下に出来る訳が無かろう。」

ホワイトジャックが拓に話しかけると、早速治療を行う事にした。
建物の中に用意した台に兵士を縛り付け、口にタオルを咥えさせる。
ガラとレオ以外は、建物の外に居て窓から中を覗いていた。

拓が兵士に向けた手にホワイトジャックの手が重ねられると、拓から大量の魔力が放出される。
更に、強力な魔力が放出し治療が始まった。
外からは良く見えないが、部屋の中で恐ろしいほどの魔力が込められているのを全員が感じていた。

治療を受けている兵士の呻き声だけが聞こえていたが、兵士の声が止まり、拓が台に両手を付いた。
兵士は余りの痛さに気を失い、拓は魔力と精神力の限界だった。

「医師の方に、兵士の怪我の具合を見てもらいたのだが、宜しいか?」

ホワイトジャックに言われ、直ぐに医師が建物に入り怪我の様子を確認すると

「治っている。問題なく治っているぞ。」

信じられない物を見る様に兵士の腕を何度も確認していた。
この国のトップとも言える治癒魔導士 ドグ医局長でも治療できなかった怪我が完全に治っている。

「私も拓も限界だ。もう一人は日を改めさせてくれ。後の事は任せて良いだろうか。」
「分かりました。しかし貴方は一体・・・」

医師の質問はガラによって遮られた。

「申し訳ないですが、一切の詮索をしないという条件で力を貸してもらっています。
 ホワイトジャック、拓、お疲れさまでした。」

ゴルゴとサブに2人はスラム街の奥へと連れていかれ、誰も後を付けられない様にOZ、クリームが壁となっていた。


拓は用意されたベットに横にされた。

「大変だったな。ゆっくり休め。」

ホワイトジャックはそう言うと、白衣と仮面を外してテーブルの上に置いて部屋を出て行く。
ゴルゴは拓の事をサブに任せて、ホワイトジャックを追う。

「ニコラス、大丈夫か?」
「あの魔力の渦の中心に居たからな。正直キツイ。」
「手を貸そう。」
「拓には言わないでくれよ。あいつ、変に気を使うからな。」

ホワイトジャックを演じていたニコラスは部屋の外に出ると壁に手を付いて体を支えた。
拓が放出した強力な魔力に当たり続け、かなり体力を消耗している。
ゴルゴはニコラスの体を支え、別の部屋で休んでもらう事にした。


サブは拓の服を脱がすと、汗だくになった拓の体を拭き始めた。

「本当にすげぇよな。あんな治療を1人で行ったんだろ。」
「言葉だけでなく、身体を使って褒めてくれても良いよ。」
「こんな時まで変な事を言いやがって。悪いが、俺は兄貴一筋だからな。」

そんな事を言いながらも丁寧に拓の全身を拭いてくれた。ただ、パンツの中はダイフクが綺麗にしたが・・・
拓が服を着替えて横になっていると、皆が戻って来た。

「今日は、色々と手伝って頂いてありがとうございました。」

拓が上半身を起こし皆に礼を言うと、

「横になっていろ。気にするな、いつも俺達の方が世話になっている。」
「俺達もだ。それにニコラスは楽しんでいるしな。
 少し疲れたと言って休んでいるが、次も任せておけと言ってたぞ。」

ゴルゴとジークはそう言って笑っていた。


休める様にと全員が部屋から出て行こうとすると、拓が勇者3人を引き留める。

「頼みたい事が有るんだ。この魔道具に魔力を充填してくれないか。」

拓が取り出したのは2本の治癒のロッド。2本とも魔力が空になっていた。

「もしかして、治癒魔法を使いながら魔道具を2つも使っていたの?」
「1本だけで何とななると思ったら操作が難しくてね。2本使わないと治せなかった。」
「拓さん、無茶し過ぎ。これで駄目だったらどうするつもりだったのよ。」
「3本目を使うだけだよ。それよりも魔力の補充を頼めないかな?」

浩司はロッドを受け取ると、由美と里香と一緒に魔力を流し始めた。
勇者1人と同等の魔力を保有できるロッド
2本のロッドに魔力を充填したときには、勇者3人も疲れていた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...