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219裏事情

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「これが拓殿が退治した魔獣の肉か。なかなかの味だ。」

今夜の国王との夕食に、さっそく拓が渡した肉が出て来た。
土産効果かは分からないが、国王も上機嫌で料理を食べている。
拓の旅の話から開拓の話になった時

「何故、お父様はバラキエ公爵の横暴を放置したのですか。
 他人の成果の横取りを黙って見ているなんて。」

サリナ姫が国王たる父親に感情を出して問いかける。
食事は国王、サリナ姫、拓の3人しか居ないが、周囲には執事とメイドが並んでいる。

「サリナ、怒りの感情を表に出すのは止める様にと教育を受けなかったか?」
「受けました。」
「お前は気を抜くと直ぐに感情を出してしまう。気を付けなさい。
 拓殿は今回の件について何か私に言いたいことは有るか。」

拓は急に話を振られると、少し考えてから答えた。

「ある人に、貴族と言うのは個より全体の利益を求めるので気を付ける様に言われました。
 今回の件は、事前に計画的に考えていたのではないかと思っています。」

サリナ姫は何を言っているのという顔をしていたが、国王は少し嬉しそうに話の続きを促す。

「今回、余りにもバラキエ公爵の動きが私に筒抜けで、ブルネリ公爵が事前に全て把握しています。」
「技術者を集めたのは拓殿の力だと思うが?」
「それも、事前にブルネリ公爵から情報を貰っていたから対応できたことです。
 私に集める力が無ければ、ブルネリ公爵が動いていたと思います。」
「そんな事をして、何の利益が出るというのだ。」
「私が開拓を問題なく進めれば、バラキエ公爵の性格上、新しい開拓を行うと考えていたのでは?
 結局、開拓地が2つ作られることになりました。1つは国ではなく貴族の資産を使う事で。
 失敗したとしても国としては1つの開拓地は確保できる。」

拓の話を聞いて、サリナ姫も今回の件をもう一度考え始めた。

「でも、拓。バラキエ公爵は技術者の引き抜きまでしたのよ。
 拓の名前を使って、他の町から技術者を集めなければ確実に失敗していたわ。」
「そもそも、それが変なんだよ。
 免責札を持っていると言っても、冒険者として活動しているだけの俺に貴族が技術者を派遣する訳無いだろ。
 ブルネリ公爵が裏で動いていたから技術者を寄こしてくれたんだよ。
 それに宮廷魔導士にしても、わざわざ休みを取ってまで開拓地に来るわけ無いじゃないか。」
「まぁ、そうよね。でも商人や神殿の方々まで来てくれたじゃない。」
「商人はエチゴさんが呼び掛けてくれたからね。
 神官の2人は村人の為になると思って来てくれたんだよ。
 俺が動いたから来てくれたなんて考えたら失礼だよ。」

サリナ姫も確かに拓の言う通りだと思う。

「貴族って怖い生き物だよね。正直、俺は付き合って居られないよ。」
「拓はそれで良いの?」
「これ以上の邪魔は入らなければ問題ない。
 ただ、これから生活をする人達の邪魔をする貴族は切り捨てたいね。」
「拓が良いなら、私は良いけど。お父様、これ以上の邪魔は入らないですよね。」

サリナ姫に言われ、国王は顔を引き締めると

「それは国王として誓おう。民を苦しめる様な真似はさせないと。」

ハッキリと宣言する。
この時になって拓は国王の前で普段通りの言葉使いで話してしまい謝罪した。

「この食事の場は形式的な場ではない。普通に話してもらって構わない。」

サリナ姫が何かを言おうとしたが

「サリナ、お前は拓殿をもてなす立場だ。常に礼節を忘れてはいけない。さて、デザートにしようか。」

先に国王から言われてしまい、黙ってしまう。
最後に拓が土産で渡したケーキが出てきて、国王も嬉しそうに食べていた。


夕食が終わり、土産の礼だと言われ拓には色々な薬が渡された。
あの様なケーキに対し破格過ぎる礼だと思うが、拓は国王に促され受け取らせてもらう。

国王は1人になると先ほどの拓の話を思い出していた。
拓はほぼ、正確に状況を把握していた。
しかし、バラキエ公爵が技術者を引き抜くことは国王も想定外の事だった。
拓がエチゴと村を回り、治療、物資の供給、魔獣退治を行っていた為、貴族達が拓の為にと技術者を派遣してくれていた。
宮廷魔導士や神官にしても拓が居るから自主的に開拓地に向かっていた。

「拓殿は自分の影響力を軽く考えている。サリナには盾としてもう少し頑張ってもらうしかないな。」

嬉しい誤算だが、本人にはもう少し自覚を促した方が良いだろう。
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