欲にまみれた楽しい冒険者生活

217伝承

ラムーの遺跡については、拓が知っている一般的な知識しか記載されてなく

「ラムーの遺跡が何なのか、作られた目的を研究した資料は無いですか？」

ヨギ魔導士も遺跡については詳しくなく、オリバー隊長が書物庫の管理人を呼んで確認してくれた。
管理人は相手が免責札を持っている拓だと知り、研究者達の論文を幾つか持って来てくれた。

「ラムーの遺跡についての研究はこの辺でしょうか。
　保管している場所は免責札を持つ拓様でも国王様の許可が無い限り立ち入る事は出来ませんのでご了承願います。」

ヨギ魔導士は許可を得ていて、自分が同席するから拓が入れる様にと交渉を始めたので

「機密情報も有るでしょうから止めましょう。こうして見せて頂けるだけで十分ですから。」

拓が止めていた。
正直、拓はアイテムボックスを使えるので、何かあって疑われると面倒という考えも有った。

拓は資料を読み始めたが、遺跡の構造や活動期の変化について、発掘した魔道具等についての研究が主で
古代の人が何故遺跡を作り上げたのか、瘴気の吹き溜まりが存在する理由などについての研究は見つからない。
管理人は拓にその辺の研究を行った論文が無いかと尋ねられると

「その辺については、憶測が有るだけで研究は進んでいません。
　地方の伝承をまとめた本が良いかもしれませんね。
　待てよ、遺跡と龍脈についての関係を唱えていた学者がいたはずです。少しお待ちください。」

管理人は伝承をまとめた本と何年も前のオニキス教授という方の論文を持って来た。
伝承にもよく出て来るのは龍と黒い影。
論文では、龍は力の象徴でなく龍脈と呼ばれる力の流れが存在し、古代人はその力を操ることで文明を発達させたと。
そして、その龍脈を操るための巨大な遺跡が存在すると・・・

「この巨大な遺跡の話は真実味は有るのでしょうか？」
「難しい所ですね。龍と言うのは力の象徴と言うのは一般的な考えですが
　こちらの論文は、実際に龍と言う力が存在すると言われています。
　考えは面白いと思いますが、懐疑的と言えるでしょう。」

管理人が妙に詳しいので聞いてみると、現役の考古学の教授らしい。
ただ、学問だけでは食べれないので書物庫の管理をしているとの事。

「この間までは生きていくのも大変でしたから仕方ありません。
　管理の仕事を得られただけでも良かった方です。
　申し遅れました。私はポトリと申します。」

拓はポトリ教授から伝承について教わった。
多くの伝承では黒い影が生まれ全てを破壊したとなっている。
オニキス教授の論文では瘴気の吹き溜まりを表していて魔獣によって滅んだと書かれている。
他の学者も瘴気の吹き溜まりを表していると言ったり、滅びそのものを指し示している等とまちまちらしい。
但し、龍脈やそれを制御する巨大な遺跡の存在については否定されていた。

「ですが、未だ発見されていない遺跡も在りますよね。
　未だコアすら発見されていない遺跡だってある。完全に否定する事では無いのでは？」
「確かに真実は分かりません。我々には分からない事ばかりです。
　何十年も発見されている生きている遺跡・ダンジョンですら、この間　新しい道が発見されたばかりですから。」

アンディ・ジョーンズによって見付けられたコアへ続く通路の事だった。
伝承について詳しく伺おうとすると、

「拓殿、そろそろ時間です。」

いつの間にかサリナ姫と会う時間になり、ポトリ教授に礼を言って書物庫を後にした。