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172勝手に話が進む

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皆が見守る中で、治癒魔導士が治療を開始する。

「拓様、これが初級魔導士の治癒です。」

ある程度の治療は出来るが、現状維持が限界みたいだ。そして次に中級魔法

「あの、私の使っている魔法も中級魔法ですが、酷すぎませんか?」
「これが一般的な中級魔法での治療です。そして、これが上級魔導士の治療。」

拓の治療と大して変わらない。

「私が使う中級魔法と違いが無いように見えますが。」
「中級魔法でも拓様は高い技術と知識、豊富な魔力がありますから。まさか、本当に自覚が無かったとか?」

拓には高い技術と知識の意味が分からない。
知識、認識による魔法の差は理解しているが、元の世界で基礎教育と書物庫で読んだ本の知識、そして実際の怪我を見て身に付けた技術でしかない。
豊富な魔力を持っている分、大量の怪我人を治療してきたが、たかが知れている。
しかし、治癒魔導士だけでなく付き人達の驚いた様な視線を感じた拓は話を逸らそうと、

「私の為に対応して頂きありがとうございます。
 他の方については私の方で対応させて頂けないでしょうか。」

自分の為に治療対象となってくれた兵士に礼を言い、残りの怪我人を治療することにした。

「拓殿の治療を初めて見たが、噂に違わず良い腕だ。これが上級魔導士なら恐ろしい事になっていたのに残念じゃ。」

拓にはヨギ宮廷魔導士が恐ろしいと言うのに残念という感覚が分からなかったが、その後はヨギ魔導士による魔法談議が始まった。
講義を行いながら拓は言われた通りに魔法を使う様に指示される。
同じ量の魔力を使っても意識の持ちようで現れる魔法が全く異なる。

この辺は拓も十分に認識している事だったが、
拓は複数の魔法を使え操作技術は高いので付き人達にとっては新しい発見も多かった。
それに、宮廷魔導士トップの話を直接聞ける機会は滅多にない。

ただ拓にとっては上級魔法まで使わせようとするので気を抜けない。
もしかして試されているのだろうか?と疑ってしまう。
ヨギ宮廷魔導士の講義は盛り上がり、意見も活発に交わされた。
他の魔導士の意見だけでなく、魔導士と連携して戦った剣士の意見もあり、拓にとっても勉強になる。

「最後に、拓殿が行った第3騎士団での試合の話をしよう。」

ヨギ宮廷魔導士が話を始めると、付き人達の反応がおかしい。
拓としては、やはりバラン将軍の訓練は異常なんだと思った。
笑顔で次から次へと戦い続けさせる地獄の特訓。
まぁ、冒険者としてこの世界で生き抜くためには必要な訓練だとは思うが・・・

実際は噂で聞いていた騎士と魔導士の接近戦の話が、想像以上に凄かったからだった。
只の接近戦でなく、武技まで使い本気の攻撃が行われていたとは思いもしなかった。

「今度はOZとの試合を見てみたいものじゃ。後はロダン侯爵のパーティに出席じゃったな。」
「それは面白そうですな。しかしOZの相手を出来る者となると大変ですよ。」

いつの間にかロダン侯爵までやって来て、ヨギ宮廷魔導士に賛同している。
付き人として来ているモーゼス、ジークフリートに話を促すと

「レオ殿は私達と互角、ガラ殿はそれ以上だと聞いています。
 その2人にバラン将軍とオリバー隊長の動きに付いて行ける接近戦が出来る魔導士が加わるとなると正直どう対応して良いのか分かりません。」

「「「お~」」」盛り上がる付き人達から参戦を申し出る者が出て来た。
と言うより、魔導士以外は全員が参戦する気でいる。
唖然とするOZメンバー。
当事者のOZメンバーを無視して、勝手に話が進んでいく。
今からでもロダン侯爵のパーティを不参加としたかったが、そんな事を言える雰囲気で無かった。しかし

「見世物ではないので、貴族の前でなんて絶対にしませんからね。」

拓が精一杯の抵抗をしていた。
ロダン侯爵のパーティは一週間後。ピスタ男爵の息子への治癒魔法を教えるのは延期とさせてもらった。
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