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120魔獣戦

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「魔獣に囲まれた。それも大量に。」

周囲を警戒していた拓が叫んだ。
ロダン侯爵一行は、後は王都に帰るだけだと言うのに、その手前でブラックウルフの群れに遭遇した。
野営をした場所の側で、村まで逃げるにしても遠すぎる。

群れの数はざっと40体。
姿を消して攻撃してくる厄介な魔獣だ。攻撃を受ける前に発見できたのは運がいい

「試験を受けている冒険者は、レオ、拓を残してロダン侯爵を守れ。残りはブラックウルフを退治するぞ。」

モーゼスが指示を出し、魔獣と対峙する。

「拓、行けるか。」「当然、体力強化をした方が良いよな。」

レオが剣を構え、拓の周囲には水の玉が浮いている。

「先手必勝。レオ、行くぞ。」「おう、任せろ。」

拓の周囲に浮いた水の玉が鍼の様な形状になりブラックウルフの目を潰す。
怯んだ隙をついてレオが剣で切り裂いていく。
クリームに向かって攻撃を仕掛けてくるブラックウルフにも水球をぶつけ仕留める。
逃したブラックウルフはジェニファーとロビンが魔法で倒していた。
20体ほど倒すと、残りのブラックウルフは逃げだした。

「拓のサポートは随分と余裕が有ったんじゃない?」
「あそこまでの広範囲へのサポートが完璧だったわよ。」
「皆に鍛えられたし、いつも以上に集中したからかな。
 ただ、体力強化はもっと弱くても良かった。その辺は見極めが出来ていないね。」

拓はジェニファーとロビンに褒められ、嬉しそうに魔獣の解体作業に加わった。

ロダン侯爵、モーゼス、ジークフリートはただ驚いていた。
ブラックウルフが姿を消すと近くに来てやっと分かると言うのに、拓は事前に察知した。
そして乱戦に近い戦いだったにも拘らず、魔獣だけを的確に攻撃を行なっていた。

「これは、想像以上の魔導士だったな。
 モーゼス、ジークフリート、5人の冒険者には解体した魔獣の処分をしてもらおうか。」

自分達とは次元の違う戦いを見て、自信喪失しているDランク冒険者5人。
同じCランク試験を受けている拓があれだけ戦えているのが衝撃だったのだろう。

「お前達は、何をボウっとしているんだ。未だ護衛任務中だぞ。解体した魔獣の処分をしろ。」

モーゼスが指示を出すと、我に返り解体した魔獣を埋めていた。
作業が終わった所で、

「安心しろ。あんなのはAランク冒険者でも上のレベルでなければ出来ない戦いだ。
 お前達は運が良いぞ、あんな戦いを目の前で見れたんだからな。頑張れよ。」
「「「はい。」」」

冒険者達は元気に返事をすると、さっき見た戦いを思い出していた。
その後は、5人が中心になって試行錯誤をしながら戦いを行っていた。
拓もその会話の中に入っていたが、全く話が噛み合わない。

「それは、レオさんやクリームの人達だから出来る事ですよ。俺達にそんな力は無いです。」

拓と比べ、レオは適切なアドバイスを与えて彼等の技術を引き上げている。
これも勉強と拓は黙って話を聞いていたが、自分の時の訓練と比べて物凄く優しいと思ってしまったのは仕方のない事だろう。
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