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「塀の上なんて初めて上がったので、このままグルっと回れませんか?」
拓の提案にオーヘンは少し考え警備主任に話をすると、護衛が1人付くことで許可をもらえた。
先頭を拓、サーシャ、ユンクが歩き、他は3人を見守るように後ろを歩く。
初めは良かったが、町の外周は長い。
喜んでいるのは拓だけで、サーシャもユンクも直ぐに飽きていた。
「そうだ、あそこで景色を見ながらケーキでもどうかな?」
拓としては一周したく、気分転換に所々にある広くなった場所を指して休む事を進める。
「拓。良かったら1人で回ってきても良いぞ。」
オーヘンの言葉に拓が喜んだが、付き添ってくれている護衛を見た。
「自分の事は気にしないで良いです。訓練で良く塀の上を走らされていますので。」
「拓さん、俺も一緒に回りますよ。」
「仕方ないな。めったにない機会だから俺も付き合うか。」
結局、拓、ガラ、アーネスと護衛の4人だけで回ることにし、他のメンバーはお茶をして帰ることにした。
せっかくだからと、拓は広くなった場所でテーブルをセットすると、護衛の兵士も誘ってケーキとお茶を用意した。
「こんな所で優雅にお茶なんて考えたことも無かった。」
アーネスは町並みと森を眺めて満足そうに拓の用意したケーキを食べた。
この町は良い。
拓やドクス、シルビア、そしてアーネスが助力しなくてもヘンデリック侯爵の力だけでもこの雰囲気を維持できていただろう。
アーネスはこのまま変わらずにいて欲しい町だと思っていた。
「オーヘン様、サーシャ様、いらっしゃいませ。」
最近、寄るようになった店で、拓の話題で盛り上がった。
拓と知り合ってからのサーシャは屋敷の外に出掛けるようになった。
拓の持っていた本を読んで緑の髪を『導きの子』として前向きに捉えられるようになったのも大きい。
この店も、最近寄るようになった店の1つだ。
町の人とも挨拶をするくらい顔なじみになっていた。
「こんにちはオーヘン様、サーシャ様。」
「こんにちは、アークの皆さん。今日は冒険者としての仕事は休みですか?」
「えぇ、連続で依頼を受けたから、今日は休みにしたの。」
「必要なものを買い終わって、一休みにこの店に寄った所です。」
サーシャは拓の知り合いだったアークや銀狼の冒険者とも仲良く話すようになっていた。
ただ、オーヘンがサーシャに男が近づくのを気に入らないのが分かってからは、サーシャと話すのはジェニファーとロビンの役割になっていたが。
「もう、拓とガラさんって王都から帰って来ているのかしら?」
「昨日、帰ってきました。屋敷に戻ったら皆さんの事を拓に話しておきますね。」
「ありがとうございます。宜しくお願いします。」
アークは邪魔にならない様に少し離れた席に座ってケーキを頼んでいた。
今日、高品質のポーションが売りに出されていたので、拓とガラが戻って来たのかと思ったが、やはり想像通りだった。
他言する気はないが、銀狼のメンバーも気が付いているかもしれない。
他言する気はないが、またバーベキュー位は誘っても良いだろう。
拓の作る焼肉のタレやドレッシング位は購入させてもらいたい。
「後で、市場で野菜を買っておくか。」
「そうだね。そうだ、チーズも買う事にしよう。チーズフォンデュも美味しいからね。」
「夕方にギルド会館に行って銀狼にも声を掛けておくか。俺達だけで会ったら後で何を言われるか分からないからな。」
銀狼も大喜びするだろう。冬の間、拓とガラは未だ帰って来ないのかと指折り数えて待っていた・・・
新しく入った店員が、その様子を見ていた。
そして、オーヘン達が帰った後、テーブルを片付けていたのだが、サーシャの座っていた席に髪が落ちているのを見つけた。
拓の提案にオーヘンは少し考え警備主任に話をすると、護衛が1人付くことで許可をもらえた。
先頭を拓、サーシャ、ユンクが歩き、他は3人を見守るように後ろを歩く。
初めは良かったが、町の外周は長い。
喜んでいるのは拓だけで、サーシャもユンクも直ぐに飽きていた。
「そうだ、あそこで景色を見ながらケーキでもどうかな?」
拓としては一周したく、気分転換に所々にある広くなった場所を指して休む事を進める。
「拓。良かったら1人で回ってきても良いぞ。」
オーヘンの言葉に拓が喜んだが、付き添ってくれている護衛を見た。
「自分の事は気にしないで良いです。訓練で良く塀の上を走らされていますので。」
「拓さん、俺も一緒に回りますよ。」
「仕方ないな。めったにない機会だから俺も付き合うか。」
結局、拓、ガラ、アーネスと護衛の4人だけで回ることにし、他のメンバーはお茶をして帰ることにした。
せっかくだからと、拓は広くなった場所でテーブルをセットすると、護衛の兵士も誘ってケーキとお茶を用意した。
「こんな所で優雅にお茶なんて考えたことも無かった。」
アーネスは町並みと森を眺めて満足そうに拓の用意したケーキを食べた。
この町は良い。
拓やドクス、シルビア、そしてアーネスが助力しなくてもヘンデリック侯爵の力だけでもこの雰囲気を維持できていただろう。
アーネスはこのまま変わらずにいて欲しい町だと思っていた。
「オーヘン様、サーシャ様、いらっしゃいませ。」
最近、寄るようになった店で、拓の話題で盛り上がった。
拓と知り合ってからのサーシャは屋敷の外に出掛けるようになった。
拓の持っていた本を読んで緑の髪を『導きの子』として前向きに捉えられるようになったのも大きい。
この店も、最近寄るようになった店の1つだ。
町の人とも挨拶をするくらい顔なじみになっていた。
「こんにちはオーヘン様、サーシャ様。」
「こんにちは、アークの皆さん。今日は冒険者としての仕事は休みですか?」
「えぇ、連続で依頼を受けたから、今日は休みにしたの。」
「必要なものを買い終わって、一休みにこの店に寄った所です。」
サーシャは拓の知り合いだったアークや銀狼の冒険者とも仲良く話すようになっていた。
ただ、オーヘンがサーシャに男が近づくのを気に入らないのが分かってからは、サーシャと話すのはジェニファーとロビンの役割になっていたが。
「もう、拓とガラさんって王都から帰って来ているのかしら?」
「昨日、帰ってきました。屋敷に戻ったら皆さんの事を拓に話しておきますね。」
「ありがとうございます。宜しくお願いします。」
アークは邪魔にならない様に少し離れた席に座ってケーキを頼んでいた。
今日、高品質のポーションが売りに出されていたので、拓とガラが戻って来たのかと思ったが、やはり想像通りだった。
他言する気はないが、銀狼のメンバーも気が付いているかもしれない。
他言する気はないが、またバーベキュー位は誘っても良いだろう。
拓の作る焼肉のタレやドレッシング位は購入させてもらいたい。
「後で、市場で野菜を買っておくか。」
「そうだね。そうだ、チーズも買う事にしよう。チーズフォンデュも美味しいからね。」
「夕方にギルド会館に行って銀狼にも声を掛けておくか。俺達だけで会ったら後で何を言われるか分からないからな。」
銀狼も大喜びするだろう。冬の間、拓とガラは未だ帰って来ないのかと指折り数えて待っていた・・・
新しく入った店員が、その様子を見ていた。
そして、オーヘン達が帰った後、テーブルを片付けていたのだが、サーシャの座っていた席に髪が落ちているのを見つけた。
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