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263罠

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「緑の髪の人物は、どうやら罠の様ですね。」
「しかし、市民に不安が起きているのに放置する訳にはいきません。
 我々は布教と合わせて呪いの子の話を広めてきました。
 ここで放置してしまえば、ギリス教への反感が更に大きくなることでしょう。」
「その位の事は分かっています。」

思わず大きな声になってしまう白髪の聖女。
ギリス教は最大宗教のため信者も多いが、敵対する貴族、宗教団体も多い。
裏で調べているが、何処もこの様な攻撃を仕掛けている情報が得られない。一体、誰が・・・

「聖女様、こちらが緑の髪の人物が見られた場所と、神官が姿を消したと思われる場所になります。」

広げられた地図に、赤と青の点と日付が書かれている。
赤は緑の髪の人物を見た場所と時間
青は神官が姿をけしたと思われる場所と時間
その順番に規則性は見つけられなかったが、その配置を見るとある程度の円を描いている。

「この中心が怪しいと考えているのですね。」
「はい。神官達を動かす許可をお願い致します。この王都から逃げ出せないように完全な包囲網を作り一網打尽にしたいと思います。」
「分かりました。許可します。
 しかし、私は御神体の状態を確認しに神殿に向かわなければ行きません。任せて大丈夫ですか。」
「はい、必ず我々に攻撃をしている者どもに髪の鉄槌を与えてみせます。」

聖女に頭を下げ神官は部屋を出ていくと、直ぐに包囲網についての通達を行った。



「拓さん、本気でやるのか。」
「当然、全ては俺の計画通りだ。正直、上手く行かなかったら諦めるところだったけどね。」

ガラは本気で心配だった。
ギリス教を相手に、ここまでの事をするとは思いもしなかった。
この後は、1人だけの方が上手く逃げられるとと言ってガラは待機となっている。

「やはり俺も一緒に行く。俺が一緒の方が機動力は高いし、見張りも出来る。」

拓はガラに認識障害のフードを渡し、闇魔法で姿を隠すとギリス教の神殿に向かった。
殆どの神官は緑の髪の人物を捕まえるための包囲網を作るため、神殿には殆ど人は居なかった。
拓は神殿の中に入ると、目的の部屋を見つけた。



神官達は包囲網を築き目的の建物の中に入った。
1階、2階を見たが何も発見されず、詳しく調べているとカーペットの下に地下室への扉を発見。
目配せをして扉を開けると、部屋中からビープ音が鳴り響く。
部屋を探すとブザーと呼ばれる魔道具が仕掛けられ、扉が開くと発動するようにセットされていた。
数名に魔道具を取り除く様に指示を出し、そのまま地下室への階段を駆け降りようとすると

「なっ、うわぁぁぁ」

階段は崩れ落ち、降りようとした神官達は地下室へ落ちていった。
地下室には明かりがなく、入り口までの高さは5mは有るだろうか。

「誰か居るか。居るなら返事をしろ。」

神官の1人が暗闇に向かって声を掛けると「助けてくれ」と声が聞こえてくる。
その声の方へ向かおうとすると足に糸が引っ掛かり、地下室の中でビープ音が鳴り響いた。
地上以上の音に地下に落ちた神官達は暗闇の中、耳を抑えるしか出来なかった。

直ぐに地下室に縄が下ろされ、光魔法を使える神官が地下室を照らす。
ビープ音が鳴り響く中、注意しながらくぐもった音がした方へ進もうとすると足元が崩れ液体の中に落ちた。
直ぐに反対側の床につかまり抜け出すが、その液体を避けて進もうと両サイドに分かれたが、その床も崩れ同じ液体に落ちていた。
今度は床に注意しながら進むと顔の高さに張ってあった黒い糸に引っ掛かり天井から粉が落ちてきた。

「ちくしょう。この子供のいたずらは何なんだ。」

罠にかかった神官が怒鳴るが、その声はビープ音に消されてしまう。
進んだ先には黒い布が有る。
神官の1人がゆっくりと布を取り除くと鉄格子があり、中には姿を消した神官達が居た。
鍵を開け、神官達を救出し建物の外に出ると、響き渡るビープ音で多くのやじ馬が集まっていた。
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