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2573者3様

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結局、舞踏会では何もなく、次の日に皆でフォスターの元に遊びに来たのだが

「一人だけ疲れているみたいだけど大丈夫?」

サーシャだけが元気がない。
拓が聞いてみたのだが、黙って満足そうなオーヘンを見るだけだった。
一方、シレーヌは嬉しそうだった。
普段表情がそれほど出ないヘンリーが優しい目でシレーヌを見ている。
そしてクリスティーヌはいつも通りだった。

「3者3様だね。とりあえずお疲れ様。」

拓はそう言いながら、皆に紅茶を用意して舞踏会の話を聞くと、
ヘンデリック侯爵の三男のヨハンも恋人を連れて参加していたとの事。
ヘンリーがシレーヌをエスコートしているのを見ると

「ヘンリー兄さん、そちらの女性を紹介してもらえないでしょうか。」

シレーヌの事を伺う。

「シレーヌさんの噂は伺っています。雷魔法を扱う優秀な上級魔導士だと。
 そんな方をヘンリー兄さんがエスコートしているなんて素晴らしい。」

上機嫌でシレーヌに話しかけていた。
エスコートされていた女性もシレーヌに好意的で魔法についての話で盛り上がっていた。
ヨハンにとっては上級魔導士と言うだけで、家柄は関係なかった。
ヘンリーが止めなければ何時までも魔法について話し続けていただろう。
シレーヌは魔法第一の考え方には抵抗が有ったが、ヘンリーの兄弟に歓迎されているのは素直にうれしかった。
その後、シレーヌはサーシャ達と会話を楽しみながらも、ヘンリーとの時間を満喫していた。


拓は紅茶を飲みながら舞踏会の話を聞いたいたのだが、クリスティーヌ関しては

「貴族の話って、自慢話ばかりで面白くないわ。話していると肩が凝るわ。」

と言うだけで新しい出会いも何もなかったみたいだ。
サーシャについては聞くまでもなく、前回以上に悪化したシスコンの兄の保護下の舞踏会だった。
拓とユンクは話を聞いていて、サーシャとクリスティーヌは舞踏会に行く意味が無いのではないかと思っていたが、貴族としては必要な事なのだろう。

一通り舞踏会での話をした後は、サーシャ、クリスティーヌ、シレーヌの3人が帰る前に買い物をしたいと言い出すので

「皆に新しいアクセサリーを作ってみようと思うけどどう?拓、新しいデザインって考えられるかしら。」

シルビアの提案に拓も乗り、水晶の中に小さな宝石を封じたデザインを提案しその場で幾つかの形を描いてみる。
その中で皆が選んだのはしずく型のデザイン。

「宝石の色は自分たちで選んでもらうとして、ヘンリーさんも一緒に行きますよね。
 シルビアさん、アンリちゃんの分も一緒に作ってもらっても良いかな?」

拓の依頼にデザイン料代わりにとシルビアは同意してくれたのだが、

「拓、あんな幼い子供に対して邪な感情を抱いているんじゃないだろうな。」
 
オーヘンが余計な突っ込みをしてくる。
ヘンリーとシレーヌの件が有ってから、訳の分からない疑いをする様になって困る。

ひと悶着したが全員で買い物に出発。女性陣4人の後ろを男性陣が付き従う状態。

「俺達って完全に荷物持ちの立ち位置だよな。」
「買い物なんてそんな物だよ。俺はガレド商会で魔道具を買えれば十分だけどね。」

拓はユンクと話しながら探索魔法で周囲を確認していると、2人の男が付いてきていた。
更に確認していると、途中で入れ替わって追跡している。

「ちょっと寄り道するから、後でガレド商会で合流させて。」

拓はそう言って皆から離れようとすると、ガラも男達に気付き一緒に付いて来た。
拓とガラが別の道に入るが、男達はそのままサーシャ達の後を付けている。
拓とガラは闇魔法で姿を隠すと、翼の腕輪を使って屋根の上から男達の様子を見ていた。

暫くすると男達は他の2人組の男達と入れ替わり、何処かに移動を始めた。

「さて、彼等の家に案内してもらおうか。」

姿を隠したまま屋根の上を飛び跳ねながら後を付けてみると
男達は町の中を色々と回り、行きついた場所は町の外れにある古い屋敷。
他にも2人組が戻ってきているので、付けている対象は1人ではないみたいだ。
拓とガラはそのまま建物に近付き窓から中を覗こうとすると

「ビ~~~」

突然に音が鳴り響き屋敷から人が出て来て窓を囲んだが、そこには足跡だけが有り誰も居なかった
その様子を少し離れた木の上から眺める拓とガラ。

「神官の姿が有るという事は、ギリス教絡みなのか。」

様子を見ていると、屋敷の中から白髪の少女が現れた。
少女は拓が感じられるほどの強い魔力を放出すると、拓達が潜んでいる木の上に向かって攻撃を仕掛けて来た。

「逃げるぞ。」

ガラが拓を抱きかかえ攻撃を避けると、そのまま走り始めた。
白い髪の少女の周りにいた人達も、拓達が隠れていたのを知り追いかけようとしたが

「放っておきなさい。もう追い付くのは無理です。
 それに闇魔法で姿を隠していたので、人物の特定も難しいでしょう。
 それよりも、器の確定を急ぎなさい。」

白い髪の少女はしわがれた声で指示を出していた。
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