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269気分転換

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演劇が終わり、立派な門構えの店に移動した。
素晴らしい料理が出てきて、拓が舌鼓を打っていると

「普段の拓殿の顔に戻ったみたいね。」

その様子を見ていたバタフライ公爵夫人が拓に話しかけてきた。

「えっ、私はそんなに変な顔をしていましたか?」
「そうね。一人で何か重荷を背負っているような感じね。ゴウに何か言われたのかしら?」

拓は暫く考えると

「自分のとは違う技術に対する見方を示されて考えていました。
 ただ答えなんて無いのですが・・・
 そう言えば、私がゴウに連れていかれた村への支援はどうなりますか。」
「魔獣に襲われた村なら、食料の供給が行われるから安心して。」
「襲った魔獣については?」
「自分達で処理できないのなら、領地を収めている貴族が対応するわ。
 ゴウはそれを毒を使って対応しようとしているのでしょ。一概に悪と決めつけられないわね。」

悪とは言い切れない。拓にとってはそれが問題になっている。
逆に出来るのに何もしない拓の方が悪とも言える。

「ある人にとって善でも、他の人には悪。見方で変わりますからね。」
「・・・拓殿は毒を作る手伝いを考えているのかしら?」

拓の言葉にバタフライ公爵夫人が少し考えて質問をする。

「いえ、それは無いです。善悪でなく自分の技術者としての考えに反しますので。
 正直、技術者としての考えも、自己満足でしかないのですが。」

拓が自信なさげに応えると

「拓さんの自己満足で何が悪い。
 それに対し文句を言う奴が居るなら、そいつが自分で技術を身に付ければいい。
 誰だろうと文句を言う資格なんかない。」

ガラが怒ったように話す。しかし「と思います。」と尻つぼみになり下を向いてしまった。
しかし拓にとっては、ガラの言葉が救いになった。

「はっはっは、やはりガラが拓の側に居てくれて良かった。
 本当に昔から我が強い癖に変な事で悩むな。
 何が正しいかなんて見方次第で変わるなんて良くある事だ。
 安心しろ、どう考えても間違えた方向に進むのなら周りが止めてくれる。
 まぁ、ガラが居るなら大丈夫だろう。」

フォスターがそう言ってまとめて終わると誰もが思ったのだが、話は続いた。

「拓の場合はドジ過ぎて、自分の進む道を間違えそうだがな。
 勘違いで、西に進むつもりで、東へ歩き出したり、
 人の名前すら憶えていなかったりと、心配し始めたらキリが無い程だ。」

どうやら、地図の見方を知らずブルネリ公爵領に向かった事や、自分の名前を忘れていた事を言っている様だ。
拓は、これ以上自分の恥を晒されないように

「爺ちゃんの言う通り、人に恵まれているよね。頑張ってみようかな。」

そう言って、話を終わらせようとするが

「変な事をしないようにな。」

フォスターの一言で全員に笑われていた。
その後は、バタフライ公爵夫人が演劇の話に切り替えてくれ食事を楽しんだ。

「今日はありがとうございました。」

食事を終え家まで送ってもらい、拓はバタフライ公爵夫人に礼を言う。
お陰で気分転換が出来た。
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