上 下
267 / 304

267特殊な村?

しおりを挟む
バタフライ公爵夫人は1人部屋で拓の話を思い出していた。
もう帰れない故郷・・・残った同郷の者は2人もしくは3人だけ。
拓殿の年齢とゴウが表れたのが5年前だとすると、おそらく5,6年前に全滅したはず。

「どんなに調べても そんな町も村も存在しない。
 ゴウや拓殿の技術が有るなら王都でも知られていても良いはず。
 それなのに、どうして何も情報が無いのよ。」

バタフライ公爵夫人は机に顔を伏せた。
この国だけでなく、他の国も調べてみたが該当する情報は得られない。
最近、分からない事ばかりだ。

状況的に、拓殿に尋ねるのは躊躇われる。
今回の件が無ければ拓殿は自分の事を話すことは無かっただろう。
そして、ゴウが拓殿の技術をあきらめたと言う事は、それだけ拓殿の意思が固いという事だ。

「国が秘密裏に技術者を集めて作り上げた特殊な村・・・問題が発生して滅ぼされたとか・・・」

自分で自分の考えを否定する。余りにも非現実的な考えだ。
流石に拓殿が自分に全てを話すとは考えられない。
それに、気になるのは戻って来た時の拓の様子だった。

「普段通りに話していたけど、何か悩んでいるみたいだったわ。
 本人が隠しているのに、私が無理に聞きだそうとしても無駄よね。」

結局、出来る事と言えばゴウの奴隷を使った毒作りを阻止するだけだった。



バタフライ公爵夫人が帰った後、拓はアーネスから散々叱られた。
ただ、ヘンデリック侯爵が同席していたので、それでも抑えていたみたいだが・・・

「しかし拓殿が無事でよかった。
 今日は疲れただろうから、これからの予定は明日話すことにしよう。」

ヘンデリック侯爵はそう言って、アーネスの家に戻った。
フォスターとガラだけになった所で、拓はゴウの特殊魔法について話した。

「なる程、前の世界での拓の姿が見えていたのか。
 サーシャさんの髪の事まで分かるとは・・・しかしゴウの言葉を信用していいのか?」

拓もフォスターが心配している事は理解しているが

「ゴウがそう言ったからには、サーシャの事は他言しない。
 まぁ、俺の技術について諦めたとは言い難いけどね。
 しかし、他にもサーシャの事を調べている人物が居るのが気になるかな。」
「ゴウに対しては、拓がそう断言できるのなら問題無いだろう。
 他の人物については下手に動かず様子を見た方が良いだろう。」

拓はゴウに『冷酷』と言われたこと、ゴウがこの世界に来てまとめたレポートについては話さなかった。

拓は風呂に入りながら、記憶の腕輪に読み込んでいおいたゴウのレポートを改めて読んでいた。
ゴウの特殊魔法・神眼がどれだけの力が有るのかは分からないが、やはり天才だと改めて思い知らされる。
しかし、何故ゴウはこのレポートを自分に渡したのか理解できなかった。

「魔獣の骨を使った肥料の研究までしていたとは。
 化成肥料、いや有機化成肥料って感じか。この位なら製造機械を作っても問題無いか。」

拓は魔道具を使った肥料の製造機械の設計を始めた。
知識の腕輪で目の前に大きなシートを設定し、図面を描く。
何年も技術から遠ざかっていたので、錆びた知識を総動員して熱中した。
自分の考えを否定する気は無いが、『冷酷』という言葉が頭から離れなかった。

何時までも風呂から出てこない拓を心配したガラが見たのは、のぼせた拓の姿だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...