異世界薬剤師 ～緑の髪の子～

258実況中継

今日は、通信の魔道具の説明が行われる。
会場には大勢の貴族が集っていた。
中には数日前から町に来ていた貴族も居る。
辺境地に、これだけの貴族が集ることは普通ではありえない事だ。
それだけ、ペンデルトン侯爵領での技術に興味が有るのだろう。
ロマニュ子爵やシレーヌも来ている。

「本日は、お集まり頂きありがとうございます。
　ペンデルトン侯爵領に来られて、既に情報網の効果を実感された方もいらっしゃるでしょう。
　泊まられたホテルでラジオの楽しさを知った方もいらっしゃるでしょう。
　本日は、これらの魔道具を開発されたシルビア魔導士と
　この魔道具を町にシステムとして採用したヘンデリック侯爵から
　お話を伺う場を設けさせて頂きました。
　では、シルビア魔導士　宜しくお願い致します。」

ガレド商会の会長ヨーゼフが司会進行を行い、シルビアが拍手に迎えられ貴族達の前に現れた。
そこで、簡単に魔道具の説明を行い、情報網の構築方法の説明を行った。
次に、ヘンデリック侯爵が実際にどの様に町で運用しているのか話をすると、集まった貴族達は熱心に聞いていた。

一通りの話が終わり、飲み物と軽食が出され団欒の場が設けられると
ヘンデリック侯爵、シルビア、ヨーゼフはあっという間に貴族達に囲まれていた。
特に質問で多かったのは

この様な情報網の構築は、どの様に考えられたのか？
ラジオはどの様に運用されているのか？
魔道具の販売時期、入手手段はどうなるのか？

この３つだった。
情報網の構築は拓の提案とは言えない為、適当に誤魔化していたが、ラジオの運用については大まかな話をしていた。
そして、ある程度落ち着いた所でアーネスが出てくると

「これからラジオでゲートボールの実況中継を行わせて頂きます。
　初の試みで、どの様になるかは分かりませんが、団欒の合間に耳を傾けて頂ければ幸いです。」

そう言うと、ラジオから暫く音楽が流れた後、ゲートボールの実況中継が始まった。
現在行われている大会で上位４チームが決まった所からの放送となっている。

実況中継については、どう話せば盛り上がるかをオーヘンが時間をかけて解説者を特訓していた。
実際に中継が始まると、司会者、解説者も熱が入り、貴族達からは歓声が上がる。
貴族達の中でもゲートボールは人気があり、ここに集まっている人達の殆どが経験者だった。
そして、多くの貴族が自分専用のゲートボールの杖を所持までしている。
その為、

「なかなかの腕じゃないか。」
「いやいや、自分だったら対応出来たぞ。」
「この戦法は使えるな。私も試してみることにしよう。」

と話も盛り上がり、説明会は大成功となっていた。
ラジオの実況中継が終わった所で、説明会は一旦終わりになり、夜に改めて食事会が開かれる。


貴族の方々が帰られると、次の食事会の準備が慌ただしく行われていた。
今回はロマニュ子爵の領地で取れた山サソリ料理がメインとなる。
ロマニュ子爵が連れてきた料理人が昨夜から慌ただしく厨房で働いていた。
ロマニュ子爵とシレーヌも挨拶をした後は、厨房に籠っている。

その辺は、アーネスが手を回し山サソリ料理の宣伝を兼ねている。

「アーネス小父さん、抜け目が無いね。」

準備を手伝いながら、拓が言う。

「当たり前だ。これでも商人だからな。
　それに、俺とヘンデリック侯爵との関係をアピールするのに丁度良いだろう。」

貴族にはドクスとシルビアがペンデルトン侯爵領にやって来たのは、アーネスが仲介役をしたとヨーゼフから伝えてもらっていた。
辺境地であれば、情報の重要性、娯楽などの効果が最大限に発揮できると考えての事だと。
アーネスがフォスターに信頼された商人で、ドクスとシルビアがフォスターを慕っている事は知られている事実なので、
これでサーシャがドクスとシルビアの弟子という噂の払拭させる予定だった。