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リビングに拓、ガラ、ドクス、シルビア、リッチーが揃っていた。
テーブルの上には、冒険者を襲った男が被っていたマスクが置いてある。

「ガラ、大丈夫だったか。傀儡掌まで使うとは想定外だった。」
「問題ない。ダイフクが守ってくれたからな。」
「あの時、どうやって傀儡掌から守ることが出来たんだ?」

拓が不思議そうに聞くと

「攻撃を仕掛ける前に、ダイフクが服の中に入って来たんだ。
 傀儡掌の糸は俺でなくダイフクが受けてくれた。」

拓はダイフクを持ち上げ

「お前は、あいつが傀儡賞を使えるって分かっていたのか?」

話しかけるが、ダイフクは体を震わせるだけで、当然のことながら答えることは無かった。
傀儡掌の糸はガラでなくスライムであるダイフクに撃ち込まれた。
人間とスライムの神経系の作りが異なるため、影響は無かったみたいだった。

ガラとダイフクが問題無い事を確認した拓はドクス、シルビア、リッチーに今夜起きた事を説明した。
リッチーが聞き出した話では、柄の悪い冒険者と彼等をまとめている女と思われる人物は定期的に会っていた。
ただし、決まった場所や時間ではなく、女の方から突然接触してくる。
全員が集まっている時だけでなく、個人に接触することも有るらしく
特に特定の冒険者に対して接触している訳でもなかった。
そこで、拓とガラは何日間も同じ冒険者を姿を消して監視を続けていた。
そして、今夜 やっとまとめている人物が現われたのだが・・・

「もう少しで捕らえられると思ったのに、あの状態で逃げられるとは思わなかった。」

ガラが残念そうに言いながら、フードの人物が消えた時の状況を思い出していた。
あの消え方は拓が使っている闇魔法での姿の隠し方とは違った。

拓は上手く表現は出来なかったが、フードの人物は姿を隠したのではなく存在が消えたのだ。
記憶の腕輪で転移等の魔道具について調べなおしてみたが、やはりその様な情報は無かった。
拓がこの事を話すと

「存在が消えるとは、どういう事なんだ?」

やはり拓の感覚は伝わらず、ドクスに聞かれる。

「一瞬で別の場所に移動するって感じかな。」

ガラが剣を振った時、その場にフードの人物は居た。
魔道具に魔力を注いでるようだったが、体を動かそうとする素振りは無かった。
それでも、ガラの剣は空を切っていた。
そして、漂っていた赤い煙が空間に吸収されるような感じに動いた。

「私もそんな魔道具や魔法について聞いたことが無いわ。
 有ったとしたら、遺跡から発掘された特別な魔道具でしょうね。」

シルビアがそう言い、リッチーも聞いたことが無いという。
拓が認識阻害のフードについても聞いてみたが

「それはたいした魔道具ではないわ。私も持っているし。」

シルビアがゲートを開いて取り出すと、ドクスも持っていると言う。
それぞれデザインは異なるが、確かに被ると相手からは顔が分からない。
闇魔法が使えない2人は重宝しているらしい。

「それよりも、そのフードを被った人物だが、
 傀儡掌を使い、姿を消す魔道具を持っているとなると・・・
 メッサリナという可能性は無いか?」

アーネスに2度も叩き潰された女盗賊メッサリナ。
ドクスが指摘するように、皆がその可能性は高いと考えていた。
ダイフクがガラの服に潜り込んで傀儡掌を防いだのは、相手がメッサリナと認識したからかも知れない。

その場合、彼女が自らこんな事をするとは考えられず、背後には貴族がいる可能性が高い。
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