異世界薬剤師 ～緑の髪の子～

230通信網見学

初めの内は、拓とリッチーも一緒に薬草を探していたが、
ガラやトウ、バン、ジャンは新しい薬草で初めは戸惑っていたが、直ぐに問題なく採取出来るようになった。
数日で予定より多くの薬草が集まったので

「明日から、俺とリッチーさんは薬草作りをさせてもらうね。」
「後は任せてくれ。でも、頑張りすぎないで休憩を入れてくれよ。」

今後の予定を話す拓に、ガラが注意を促すと

「確かに拓は根詰める所が有るからな。」
「もっと、肩の力を抜いたほうが、女の子にモテるぞ。」
「バンの場合は力を抜き過ぎだけど、少し真似てもいいかな。」

トウ、バン、ジャンにも言われてしまった。
拓としては普段通りだったので、少し意外な気がしてしまった。
拓としては、毎日休まず体を鍛え、薬草や薬の勉強をするガラの方が頑張り過ぎていると思うのだが・・・

その日の夕食後、拓とリッチーが明日からの話をしていたのだが、そのまま薬を作り始めてしまった。
２人とも熱中してしまい、

「明日もあるから、今夜は終わりにしたらどうだ。」

ガラに止められるまで作り続けていた。



拓達が薬草採取をしている間に、ガレド商会の会長ヨーゼフと子供のニックがペンデルトン領へやって来た。
目的はシルビアの作り上げた通信網を実際に見るために。

ヨーゼフにとって初めて訪ねる土地だが、活気を感じる町だった。
門で受付を済ませ、先ずはヘンデリック侯爵の屋敷を訪ねたのだが
既に自分達が到着したことを分かっていたのか、直ぐに案内をされた。

「ヘンデリック侯爵、ガレド商会のヨーゼフと申します。
　こちらは息子のニックです。
　シルビア魔導士が作られた通信網を見せてもらいに来ました。
　よろしくお願い致します。」

ヨーゼフがヘンデリック侯爵に挨拶をすると、

「直ぐにシルビア殿も来るので、細かい話は来てからにしよう。」

そう言って、２人にソファーに座るように勧める。
暫く、王都やペンデルトン領の話をしていると

「遅くなり申し訳ありません。ヨーゼフさん、態々来て頂きありがとうございます。」

シルビアがやって来て、挨拶をする。

「それにしても、私共が来た事を分かっていたかの様に対応して頂きましたが
　もしかして、通信網を使って情報を伝達していたのですか。」

シルビアが何処にいたのか分からないが、大した時間は経っていない。
ヨーゼフは自分達を待たせる事もなく対応してくれたのも事前に情報が通っていたからだと推測すると

「その通りだ。近くヨーゼフ殿がやって来ると門番に伝えておいたので
　門番が受付を行ったとき、屋敷とシルビア殿の所に連絡が伝えられている。」

ヘンデリック侯爵の答えに、ヨーゼフは通信網の利便性を感じた。
その後、ペンデルトン領での通信網について詳しく話を伺い、その利便性は自分が考えていた以上の物だと思い知ることになった。
ヘンデリック侯爵がついでにと、ラジオ放送を聞かせると、

「素晴らしい。こんな魔道具が存在するなんて。
　いや、それ以上に使い方だ。王都よりずっと先を行っている。」

もはや、ヨーゼフは初めて知る技術に興奮を隠す気もなかった。
シルビアから技術的な話を聞いた後、さっそく通信網の交換局とラジオ局へと向かった。
交換局では、どれだけの情報がリアルタイムで離れた場所を繋げているのかに驚き
ラジオ局では番組作りを見学して楽しんでいた。