異世界薬剤師 ～緑の髪の子～

198跡地

次の日、ガラは海の潜って銛での魚捕りを試し、拓はダイフクと一緒に岩場で岩海苔や貝の採取を行っていた。
どれも薬の素材としても使える物だ。
但し、海の深いところには強力な魔獣が居るので、あくまでも浅瀬での行動となる。

「ガラ、どうだった。魚は捕れた？」

拓が聞くと、ガラは魚の入った網を見せてくれた。

「凄いな。ここに居る間は魚介三昧かな。」

拓が何とか魚を３枚に下ろすと、さっそくバーベキューを始めた。
伊勢海老のようなのもあり、記憶の腕輪で確認すると問題なく食べれるので豪快に焼くことにした。
せっかくだから酒を飲みたいので、入口を開けて海が見えるようにしたテント型の小屋の中で・・・
周囲に魔獣が居ない事を確認したが、やはり外で酔うのは危険だ。

しかし、ガラは１杯飲んだだけでそれ以上は飲むことは無かった。
それを見た拓も、酒を止めて食べる事に専念することにした。
ガラが拓が飲むのを止めたのを見て気にしているので

「どうせ酒を飲むのなら、皆で一緒の方が良いよ。
　それに家の中で飲むのなら、帰って庭でバーベキューをした方が美味しそうだし。
　ただ、大食いが増えるから、もっと魚が必要になるけどね。」

拓がそう言うと、

「任せろ。皆の分を捕まえてみせる。」

ガラは嬉しそうに答えていた。


午後はデッキチェアに横になり記憶の腕輪にあるフォスターやドクスの資料を読み髪の色を変える方法について検討していた。

「あれだけ働いたら、この位の優雅な生活は必要だね。」

ガラからは勉強している様にしか見えないが、拓にとってはゆっくりを過ごせているらしい。
その間、ガラは砂浜を走り、体を鍛え、剣を振るっていた。

「午前中、ずっと潜って魚を捕っているのに、そんなに体を鍛えて疲れないの。」
「潜る時と使う筋肉が違っている。鍛えておかないと、いざという時に困るからな。」

拓から見れば十分に鍛え上げられている様に見えるが、ガラは何処まで強くなろうとしているのだろう？
拓は１人で何時までもノンビリしているのも気が引け、運動不足にならない様に一緒に体を鍛える事にしたのだが、

「拓さん、もう疲れたのか。流石に体力が足らなくないか。」
「いや、ガラの体力が異常なんだよ。筋肉からして違い過ぎるだろう。」

砂浜を３０分も走ると、拓は座り込んでしまった。
そもそも、逞しいガラの体と普通の体格の拓を比べる事自体間違えている。
かと言って余りにも体力が無いのも問題なので、拓も体力作りに付き合ったのだが・・・
次の日は全身筋肉痛でガラにマッサージを受けて一日横になっていた。
他にもガラの要望で、翼の腕輪を使いながらガラが拓を背負って足場に関係なく素早く動ける訓練をしたり、拓の銃との連携の確認をしていた。


暫く、海岸での生活を満喫し、拓は鋭気を養うことが出来た。

「町に戻る前に、昔の開拓地跡を覗いてみないか。」

拓の希望で寄った開拓地跡は、家は崩れ土台の石組みは草木に覆われていた。
元は川だった場所も、草木が生えていて水は流れていない。

「真水が無いとなると、この場所の開拓は無理そうだね。」

この場所を開拓しようとしなければ、普通の子として過ごせていたのに・・・
拓は、サーシャの運の悪さを思わずにはいられなかった。