異世界薬剤師 ～緑の髪の子～

163移動方法

健康になった所で、拓とガラは再び森に薬草採取に向かったのだが
薬草を採取すると、テント型の小屋を出す場所にこだわり、空が良く見える場所まで移動した。

食事が終わった所で、拓が取り出したのは温泉の入った樽。
それを２つ並べて、それぞれに拓とガラが入った。
樽の中には台がセットしてあり、そこに座って湯に浸かる。
拓はそこに座り星空を仰ぎ見ながらガラに話しかける。

「この樽温泉はどう？何時もの岩風呂と違って面白くない。」
「確かにこれは面白い。
　温泉を岩風呂に入れ直すと思っていたが、これなら簡単に外でも温泉に浸かれるな。」

ガラも気持ち良さそうに目を閉じていた。
ダイフクも拓の入っている樽の中で浮かんでいる。

「ガラは、冒険者の時　この世界を色々と見たのか。」
「生まれ故郷と、王都周辺だけだ。後は拓さんと一緒に回った位しかない。」
「それなら、今度旅をしてみないか。
　２人なら翼の腕輪を使えば移動距離は稼げて、寝泊り食事はどうにでもなる。」
「もちろん同行する。拓さんは何処か行ってみたい所は有るのか。」
「山や海、それから船に乗ってみたい。」
「楽しそうだな。翼の腕輪を使うなら１日もあれば海に着くぞ。
　開拓に失敗した場所だから船は無理だけどな。」

拓が１日中翼の腕輪を起動させていられるので、余裕で大丈夫らしい。

「確かに、馬並みの移動は出来るか。」
「翼の腕輪の場合、道が無くても問題ないから
　場所によっては、馬より早く移動できるぞ。」

温泉に浸かりながら、この世界での旅の話で盛り上がった。
次の日、走り方を試してみた所、ガラが拓を背負う形で移動するのが一番楽だという事になり

「これなら、問題なさそうだね。
　冬に爺ちゃんの所へ帰る時に、この移動方法を使ってみようか。」

と計画を練っていたのだが、ペンデルトン領に戻るとアーネスから手紙が届いていた。
そこには、ゲートボールの確認でアーネス領に来るので、王都へは一緒に帰ろうという誘い。
そして、王都へ直接帰らず少し遠回りをして町を経由して帰るので
ポーションや薬が有れば手数料抜きで一緒に販売する事が書かれていた。
さらに、最後には料理と菓子のリクエストが・・・

「拓さんの食事を期待しているな。ついでにテント型の小屋もか。」
「やっぱり、そうなるよね。とりあえず、売る薬を決めるか。」

拓は、自分が収納している作り終わった薬や素材を書き出すと、

「風邪薬、傷薬、高品質ポーションも少し出そうかな。」

と売る商品を選び始めた。

「拓さん、味付きのポーションと不味いポーションをセットにして売るのはどうだ。」

ガラも提案したのだが、直ぐに却下された。
拓はロシアンルーレットに関わりたいとは思わない。
この世界に来てから、何かをすると自分に跳ね返ってくる気がしてならない。
味付きポーションは実験なので、普段の薬作りはポーションが中心だ。
後、売ってしまいたいのとしては髪の毛を光らせる薬だ。
改良を行っているが、光らす色７色から単色にし持続時間を伸ばせただけで、普通に色を付ける事も出来ずにいる。

「実験で量が出来てしまったけど、買ってくれる人いるかな。」
「どうだろうな。しかし、プレゼントなら喜ぶんじゃないか。」

確かに実験に付き合ってくれたサーシャやメイドは喜んでいたので、幾つかは可愛い瓶に詰め何色に光るか分かる様にリボンを掛けてプレゼント出来るようにしてある。
ただ、調合する材料を少しづつ変え作っていたので、３００種類以上の瓶が出来上がってしまった。
しかも、それぞれが２，３０回分の量が残っている。

「拓さんが色々と試していたと思っていたが、結構な量になっていたんだな。」
「少しずつ、配分を変えて試したからな。この辺は効果の差は殆ど無かったけどね。」
「この辺はって、どういう意味だ。」
「継続時間が伸びたのは別に有るんだよ。」

拓が行ったのは、材料の効果確認。
髪を光らせる成分は分かったが、これを外すと髪へ影響を与える事は出来ない。
次の段階として、この材料の代わりを探している所だが上手くいっていない。