異世界薬剤師 ～緑の髪の子～

149アゼルド侯爵領

アゼルド侯爵領への移動に馬車を２台用意した。
１台目にはヘンデリック侯爵、ナターシャ、サーシャ、ヘルガ、ユンク、トウ
２台目には拓、ガラ、ドクス、シルビア、バン、ジャン
１台目には何時もの運転手が付くか、２台目は交代で運転を行う。
ユンクがドクスやシルビアと一緒になると２人が大変だと言う事で、サーシャの話し相手として１代目に乗せたのはヘンデリック侯爵の配慮だった。

アゼルド侯爵領までは３日、殆どが森の中の移動だった。
今回は拓のテント型の小屋は使わず、皆でテントを張っての野営。
食事は、出来立ての料理をドクスとシルビアが空間魔法で収納しているが、基本は拓に教わりながらサーシャとユンクが作っていた。
次回キャンプをする時の為の勉強みたいなものだった。

アゼルド侯爵領に入ると、目の前に湖が広がっていた。
町は湖畔沿いに有り、後ろには山が広がっているのが見える。

「綺麗な町だな。あの古城に泊まれるのかな。」

拓が隣に居るガラに話しかける。
湖畔からの景色が素晴らしいと聞いて、馬車の運転を拓とガラがさせてもらっていた。

「そうかもな。拓さん好きそうだよな。」

傍目から見ても、拓が期待しているのが分かる。
馬車は拓の期待を裏切らず、そのまま古城へと移動した。

馬車が付くとアゼルド侯爵一家が出迎えてくれた。

「サーシャやっと来たわね。ユンクも拓も久しぶり。
　これで４人で冒険が出来るわ。
　実は、もう計画を立てているのよ。」

いきなりクリスティーヌがサーシャに駆け寄って話を始めたので、早速アルバート侯爵から注意を受けていた。

「改めて、良く我が領地に来てくれた。
　ドクス魔導士、シルビア魔導士も良く来てくれた。」

その後、アルバート侯爵から長男のアステルを紹介された。
拓、ユンク、ガラが頭を下げてお辞儀をすると

「そんなに気を使わないでくれ。
　この領地では、気楽に話しかけてくれると嬉しい。」

アステルはそう言うと、３人に手を差し出し握手を交わすと

「君が拓か。クリスティーヌやオーヘンから話は良く聞いているよ。」

拓としてはクリスティーヌは妹なので分かるが、何故オーヘンから自分の事を聞いているのか不思議に思っていると

「僕とオーヘンは同級生でね。良く連絡を取り合っているんだ。
　初めに拓の話が出てきたのは、サーシャさんに、変な男が近づいてきたって事だったかな。
　その後も、サーシャさん絡みの話が続いて
　最後の手紙は、ゲートボールで負けて良い所を見せられなかったという内容だったよ。」
「・・・」

良い所を見せられなかった相手は、当然サーシャの事だろう。
アステルの話に拓は返す言葉も無く、オーヘンのシスコンぶりに呆れ
サーシャも、実の兄に対し溜息を吐いていた。
とりあえず、部屋に荷物を置いてから話をする事になったのだが

「この人数分のお菓子なんてないのかしら。」

クリスティーヌがこっそりと拓に聞いてきたのだが、母親のミラー婦人にはしっかりと聞かれていた。

「手作りの菓子が有るので、良ければ食べますか。
　ドクスさん、後で適当な菓子を出してもらっても良いですか。」

拓の空間魔法が保存状態を維持出来ることは全員には教えていない為、ドクスとシルビアに色々と預かってもらっている。

「別に良いが、どれを出せば良い。」
「ちょっと待って。ドクスの方は、拓が和菓子と言っていた種類ばかりよね。
　アゼルド領と言えば紅茶が有名なのよ。私が収納しているケーキにしましょう。」

シルビアは事前に情報を収集していた様だった。
部屋に行く前に、執事にケーキを渡していた。