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「何で、こんな大人数で町に繰り出したんだろうね。」

拓が呟くように、集団行動になっている。
元々が、拓、ガラ、シルビア、ドクスの4人の予定だったが
サーシャの他にトウ、バン、ジャン、更にはオーヘンまでが一緒に居る。

「で、拓は何処か行きたい所は有るのか。」

オーヘンに聞かれて

「先ずは市場に行ってから、色々と買い食い。
 その後は、普段行かない様な店を覗いてみたいですね。
 後、ケートボールの会場も興味があります。」

オーヘンは任せろと言って、今日は町の案内をしてくれる。
ただ、ゲートボールの会場は混んでいるので外された。
サーシャが居るのもそうだが、元宮廷魔導士2位と3位が一緒なので危険な場所は避けたいのだろう。

市場に着くと、拓は珍しい食料を色々と買い集め、屋台で買い食いを始めたのだが

「何で、拓とガラさんは分け合って食べてるの。」

拓とガラを見ていて、サーシャは不思議に思った。
拓が1口食べると、残りはガラが食べている。拓の収入なら2人分を買っても問題ないはずなのに・・・

「ガラに食べて貰って、色々と味見しようと思って
 食べれる量には限界があるからね。」

サーシャは成程と思い、オーヘンとならと考えていると

「サーシャは止めた方が良いよ。領主の娘なんだから、気を使った方が良い。
 その代わり、美味しいのを教えてあげるよ。」

拓に止められてしまった。
拓の言葉に一番反応したのは、オーヘン。
このメンバーならサーシャが食べ分ける相手は自分になると内心喜んでいたのにと。
その様子を見ていたトウ、バン、ジャンはどうしようもないシスコンぶりに呆れていた。

結局、拓は右から左へと全ての屋台を制覇し腹一杯になっていた。
サーシャは、拓が食べた中でお勧めだけを食べて腹一杯になっていた。
ドクスとシルビアは気に入ったのが有ると、結構な量を買い空間魔法で収納していた。
本当は店で食事をするつもりだったが、皆腹が膨れたので予定を変更して広場で一休み。

「そうだ、シルビアさん。こういうの作れないかな。」

拓が絵にかいたのはフリスビー
柔らかい素材で作ってもらい、サーシャとガラの3人で遊び始めた。

「拓は面白い物を考えるな。シルビアはあんなの知ってたか。」
「いえ、初めて見る遊びよ。単純だけど面白いわね。」
「幾つか作って、売ってみたらどうだ。」
「嫌よ、めんどくさい。」
「拓は無自覚だが、目立っているんだよ。視線を他に向けさせた方が良くないか。」

周囲を見ると、拓達の遊ぶフリスビーを興味深そうに見ている人達が結構いる。

「拓って、しっかりしている様で、抜けているわよね。」

仕方ないと言いながら、シルビアが30個程フリスビーを作ると、オーヘンに売ってもらうことにした。
店を出すには領主の許可が必要になるので、領主の息子自ら対応したという建前だ。

直ぐに30個全て売れ、広場ではフリスビーをする人達だらけになっていた。

「シルビア魔導士、これを我が領地で販売させて貰えないだろうか。」

オーヘンが聞いたが

「これは、私が考えた物ではないので、許可は拓に貰ってもらえませんか。」

シルビアに言われるまで、見ていたに関わらずすっかり忘れていた。
後で拓に確認し、販売契約を取り付けた。
ただ、アーネスも取り扱えるように、ペンデルトン領での販売権だけとしていた。

暫くフリスビーで遊んだ後は、店巡りで連れていかれたのは喫茶店。
確かに、拓は自分でケーキを作り適当にお茶をしているので、喫茶店は普段行かない場所だった。
オーヘンのお勧めで、雰囲気の良い店を選んで連れて行ってくれた。
オーヘンは、どの店でも顔見知りが居て、しかもモテる。
ただ、モテるとサーシャに向かって自慢げな顔を見せるのが鬱陶しい。

「お嬢ちゃんも、大変だな。お嬢ちゃんに恋人が出来たら、全てにケチをつけるタイプだぞ。」
「そうね。切れ者で実力が有る分、手に負えなさそうよ。」

本人に聞こえない程の小さな声でドクスとシルビアが話していた。
拓は笑っていたが、他のメンバーは溜息しか出てこない。

4件ほど梯子をした後、拓の要望で食器を扱っている店へ。
喫茶店に触発されてティーカップやケーキ皿、更に小物も色々と購入して町探索は終わった。



「しかし、拓って子供っぽいところが無いわね。
 屋台で食べるのも料理を調べる感じだし、喫茶店だって情報収集になっているし」
「良いんじゃないか。あの後、食器や小物を選んでいる時は、素直に楽しそうだったぞ。」
「確かにそうなんだけど。やっぱり子供っぽくないわ。」

ドクスは笑い、シルビアは溜息を吐いていた。
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