上 下
133 / 304

133原理

しおりを挟む
「拓、よろしくね。拓の家には客室が余っているのよね。暫くお世話になっても良いかしら。」
「余っていますが男ばかりですので、シルビアさんは別の方が良いですよ。」
「あら、紳士なのね。大丈夫よ、いきなり拓を襲ったりしないから。
 先ずは、こんなオッサンを追い出してしまいましょう。」
「拓、こんなオバサンの毒牙に掛かるなよ。フォスターさんもそれだけを心配していたしな。」

ドクスとシルビアが言い合いになりそうになった時

「3人とも座ったらどうだ。」

ヘンデリック侯爵が言葉を挿み場を落ち着かせた。

シルビアはヘンデリック侯爵の屋敷にお世話になることになった。
暫く、ヘンデリック侯爵と話をした後、拓の小屋の方へと移動しサーシャ達と挨拶。

「あの、シルビア魔導士は元宮廷魔導士3位のあのシルビア魔導士ですか。」

おずおずとユンクが尋ねる。

「そうよ。若いのに良く知っているわね。」

にっこりと笑うシルビアに、ユンクだけでなく、拓やサーシャもその地位に驚いていた。たが

「ですが、シルビア魔導士と言えば、ドクス魔導士と同じ年だったと・・・」

その後にユンクが余計な1言を続け、ヘルガの拳が頭に落ちた。
ヘルガとユンクが謝る中、拓はシルビアとヘルガの年齢に合わない外見に驚き
もしかすると、女性だけに伝わる美容魔法が有るのではないかと考えていた。

そしてドクスはガラにだけ聞こえる小声で

「シルビアは根っからのショタコンだ。拓が食われない様に気を付けろ。
 若い男の子の生気を吸い取って、あの若さを保っているとも言われている。」

危険な忠告をする。
ガラは拓が望むなら仕方がないが、そうでないなら自分が守ると誓うのであった。


シルビアが来た理由は、奴隷契約の呪いに信号を乗せた通信方法について調べる為だった。
古代の遺跡から発掘された通信機があるが、原理は全く分かっていない。
現在は、城や飛行船などの重要な場所に設置されているだけだ。
それを調べる対価として、シルビアは魔道具を拓に渡すことになった。

ガラの上半身に変な器具を取り付け拓が信号を送った時の状態を調べ始めた。
その後は、拓の糸電話と波動の伝搬についての説明を聞いては検討を行っていた。
拓の話は波の広がりや周波数、共振現象へと進んだ。
シルビアは特殊魔法でもある造形魔法の使い手で、物の形を変える事が出来る。
その力を使い、拓の話を聞いて、音叉を作って共振の実験まで行っていた。

初めはドクスも話を聞いていたが、理解できなくなった所で古文書をまとめる作業を始めた。
ただガラは内容が分からなくても、妙に拓に近づくシルビアを阻止するために必ず一緒に居る。
そして何時もガラは拓とシルビアの間に入り変に近寄らせなかった。


シルビアの目的は離れた場所と通信が出来る魔道具の開発だった。
拓は元の世界での電気を使った無線技術も知っていたが、さすがにそこまでを教える気は無い。
ただ、音の波動や周波数のついでに、レコードとして音を蓄積できる所までは話している。

「拓のお陰で、信号を送る理論までは出来たと思うわ。
 そういえば、報酬の魔道具の話をして無かったわね。欲しいものは有るかしら。」

改めて報酬の話になり、拓はガラのマジックバックの保存量の拡張をお願いしてみた。

「これだけの知識を教えてもらって、そんな事で良いの。
 今なら、おまけも付けるわよ。」

拓はダメ元で言ってみたが、報酬は簡単に受け入れられた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

騎士団長のお抱え薬師

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:596pt お気に入り:311

自殺したお飾り皇太子妃は復讐を望む ~二周目の君は変われない~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:184

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:525pt お気に入り:9,828

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:511pt お気に入り:4,190

チートなタブレットを持って快適異世界生活

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:511pt お気に入り:14,298

処理中です...