異世界薬剤師 ～緑の髪の子～

116肉

拓とガラは町に戻り、サーシャが屋敷に居る時間を狙ってヘンデリック侯爵にポーションを卸し
そのまま、サーシャの元へと向かった。

「随分と長い間　森に入っていたわね。で、その顔は何なのよ。」

サーシャに言われて、思わず拓が自分の顔を触ると、控えていたマリーとガラがクスっと笑った。

「冗談よ。でも、何か企んでいるでしょう。」

「ばれちゃ、ちょうがねぇ。ちょいと俺達の企みに手を貸してもらおうか。」
「・・・」
「サーシャって、ノリが悪いね。」
「ノリの問題じゃないと思うわ。で、何を手伝ってほしいの。」
「アリゲータの肉を手に入れたんだ。５人分。
　ここに４人、そしてルドフル料理長を入れて丁度５人。」

ニヤリと笑う拓に釣られて、サーシャもニヤリと笑う。

「アリゲータの肉って美味しいのよね。
　私がルドルフ料理長をこちらに引き込めば良いのね。」

それを見ていたマリーが頭を痛めていたが、自分も食べられるとなると口出しはしない。
４人は、夕食の準備が始まる前の調理場に向かうと

「ルドルフ料理長。少し話が有るのだけど、今良いかしら。」
「サーシャ様。拓が一緒と言う事は、新しい食材でも手に入れたか。」

ルドルフ料理長は直ぐに察したみたいで、拓が取り出したアリゲータの肉を受け取った。

「随分と良い肉じゃないか。このサイズだと５人分っていう所か。」

そう言って、期待を込めた目でサーシャを見ると

「ちょうどここに居る人数は５人。丁度良いと思わない。」

サーシャが声を潜めて話しかける。

「任せてください。もう、調理を開始しますか。」

小声で話すルドルフ料理長に、４人は静かに頷く。
ルドルフ料理長は腕まくりをすると、肉を持って調理場へ。
拓も許可をもらい、調理する所を見せてもらっていた。
所々で、ルドルフ料理長は拓にも味見をさせならが、調理を進める。

そして、出来上がった料理はステーキとパイ生地に包まれた品。
５人でテーブルを囲み、暖かいうちに頂くことに

「「「美味しい」」」

拓は、この料理を堪能してした。
ルドルフ料理長は惜しげもなく自分の技術、レシピを教えてくれ、拓は全てを記憶の腕輪に残している。

「ダイフクも少し食べるか。」

拓がダイフクに肉を分けると、皆に驚かれていた。

皆の食事が終わった所で、拓がゲートを開くとルビー色の液体が入った瓶を取り出した。

「デザートに使ってみてください。」

ルドルフ料理長は液体を舐めると、その上品な甘さに驚いていた。

「こんな凄いのを貰っても良いのか。
　これだけの物、手に入れるのも難しいだろう。」
「その代わり、これを使った料理が出来たら味見をさせてくださいよ。」
「もちろんだ。期待してくれ。」

サーシャとマリーが興味津々な目で見ていたので、ルドルフ料理長が味見をさせると驚いていた。

「サーシャ、この液体は本当に特別だから味見で減らさないでね。」

拓が言うと、サーシャがお代わりを貰おうと出そうとしていた手を引っ込めた。