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109洞窟

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「あ~、そこそこ。気持ちいい。お~~っ」

森に入ってからは、昼間は薬草採取、夜は薬の調合と拓が働き詰めているので
洞窟に入る前にガラが拓にマッサージを施していた。

「しかし、この歳で凝り過ぎだ。少し、頑張り過ぎじゃないか。」

そう言いながらも、マッサージをした時の反応がオヤジ臭い拓にガラは苦笑してしまう。

「そうだ、香油を作ってみたから、使ってもらえない。」
「香油?」

ガラが渡された瓶を開けると、ほんのりと良い香りが漂った。
拓に言われる通りに、香油を付けてマッサージをすると、肌がしっとりと光沢をもつ。
先ほどまでは、服の上からマッサージをしていたが、今回は直接肌に触っている・・・
何故か、ガラの顔が少し赤い。

「これ、やってもらうと本当に気持ち良いね。代わるからガラも試してみるか。」

流石にガラは拓の提案を断り、自分の腕に香油を塗り付けて感触を確かめてみる

「これは香水?化粧水?」
「香水みたいなものかな。アルコールは入っていないよ。」

香水にアルコールが使われている事も知らないガラは、拓の答えを理解できていないが問題はそこではない。

「拓さんは、これを販売するつもりか。」
「まさか、香水を作るときに、ついでに作ってみただけだよ。
 良くマッサージに使うけど、実際に気持ち良いね。」

販売する訳でなければ、問題ないだろう。
ガラとしては、これ以上 自分の主が忙しくなるのは防ぎたかった。
ただ、拓が気に入ったのだから、香油を使ったマッサージは続けるつもりだ。
ダイフクが香油に近づいてきたが、食べられる前にマジックバックにしっかりとしまった。


ガラのマッサージ効果か、拓の体調は良いみたいだ。

「これが洞窟の入り口か。思っていたよりデカいな。」

拓達の目の前で地面が窪み、その先にはパックリと黒い穴が開いていた。

「中は入り組んでいて、迷子になる可能性が高い。
 冒険者達も入り口付近で野営をするくらいらしい。」

2人は明かりの魔道具を装備すると、洞窟の中へと踏み入れた。
入口付近には焚火の跡があったりするが、少し奥へ進むと人の入った気配は全くない。
穴は幾つもに分かれ、本当に自然の迷路だ。
拓は記憶の腕輪と風魔法を使ってマッピングをしながら進む。

「強い魔獣は居ないみたいだけど、アクラットが多いな。」

アクラットはネズミの様な魔獣で、攻撃力は大したことは無いが毒を持っている。
他にもダークサーペンという毒を持つ蛇の様な魔獣などの姿が有った。
ある程度の広さの空間に出た所でテント型の小屋を取り出して今日の探索は終了とした。

「暗闇の中を歩くのは、思ったより疲れるね。食事にしようか。」

拓が水桶を用意し、体を拭くとベットの上で夕食を食べて寛いだ。

「しかし、何にも発見できないとは思わなかったな。」 
 
ここまで歩いてきたが、玄翁どころか、薬に使えそうな物は何も発見でずにいた。

「俺も洞窟は初めてだが、岩ばかりなんだな。
 拓さんのお陰で食事も休憩も問題は無いが、探索期限を決めた方が良いかもしれないな。」

ガラの提案に従い、後2日探索を行い何も見つからなければ地上に戻ることにした。
これからの予定が決まった所で、

「拓さん、歩き疲れただろうからマッサージをするよ。」

ガラはマジックバックから香油を取り出すと、嬉しそうにマッサージを施しはじめた。
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