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084雪見酒

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家に戻ってくると、早速テント型の小屋の飾りつけ。
拓の方は簡単に終わり、明りの魔道具を取り付けて空間魔法で収納したのだが
アーネスは、一人テントに篭り、色々と悩んでいるみたいだ。
フォスターの家の裏で、他の人には見られない様に秘密裏に作業をしている。
拓が中を覗いてみると、棚に物をどう飾るかで悩んでいた。
ベットの上には酒の瓶や飾り皿、置物が並び、棚に置いては戻すことを何度も繰り返している。

「アーネス小父さん、俺が管理するんだから余り高価な物は置かないでよ。」

一応、拓が忠告すると

「分かっている。ただ、気に入った部屋にしたいからな。」

アーネスは夜までかかり部屋の飾りを終え、その日はフォスターの所で飲むと言って自分の小屋で寝ていた。


暫くして、雪が降り積もり本格的な冬がやって来た。
そろそろ、雪の下で雪華草が咲いている時期だ。
その花を毒消し等の薬に混ぜるとその効果を高める性質を持っている。

「爺ちゃん、雪華草を探しに行こうと思っているけど一緒に来ない。」

拓が、フォスターを森に薬草探しへ誘うが

「まだ、ガラの呪いについて調べ終わっていないからな。
 お前達が森に行っている間に、もう少し調べてみるつもりだ。」

ガラは申し訳ない気持ちで、礼を言っていた。
最近家に引き篭もっているスライムのダイフクは強制参加とし、アーネスに家を空ける事を話しに行くと

「そうか、それなら俺も一緒に行こう。冬の間なら仕事はコーギに任せておけば問題ない。
 ガラの訓練に付き合うことも出来るしな。」

直ぐにコーギに話をしに行くと

「父を宜しくお願いします。」

と、何も問題なく話が通った。
拓としては商会のトップがこんな感じで大丈夫か心配になるが、それだけコーギが優秀なのだろう。
それでも、簡単な引継ぎが有るらしく出発は2日後。
その間に、拓とガラは大量の料理を作り上げる事にした。


冬の間は乗合馬車は無く、雪の上での移動は短めのスキー板を使う。
ただ、このメンバーの場合、拓が翼の腕輪で重さを軽く出来るので
アーネスとガラが拓を引っ張る形になっても、1人で動く時の半分の力も必要としない。
おかげで、1日で目的地に辿り着くことが出来た。
木々が途切れた空き地で拓がゲートを開いて、テント型の小屋を取り出す。

「いよいよ、俺のテントでの生活が始まるのか。」

アーネスがテントの接続を行うと、真っ先に中に入り
自分の部屋でベットに座り、満足気に壁の棚を眺めている。

「アーネス小父さん、ベットが汚れるから先に風呂に入った方が良いよ。」

拓に言われて立ち上がると、

「このメンバーで風呂と言ったら、あれだよな。」

アーネスが期待を込めて言うので、拓はテントの外に出るとゲートを開いて岩風呂を取り出した。
皆で風呂につかると、アーネスはゲートを開いて酒を取り出す。

「雪景色の中で露天風呂、酒まで付いてたまらないな。」

アーネスは拓やガラだけでなく、スライムのダイフクにまで酒を勧める。

「ダイフクもイケル口だな。もうちょっと飲んでみるか。」

暗くなった所で風呂を上がり拓が晩飯の鍋やつまみを用意すると、アーネスは更に酒を取り出していた。
テントの断熱効果も高く、火属性の魔法で一度部屋を温めれば保温が効いて
雪の積もる真冬の野外でも、Tシャツに短パンで過ごしている。

「露天風呂に美味い料理、そして気に入った部屋。本当に良い旅行だな。
 拓、もう一つ、2面ガラス張りにしたテントも用意しないか。
 部屋から外の景色が見えれば完璧だろう。」

アーネスは飲み過ぎには気を付けているが、完全に旅行気分だ。

食事の後、2面がガラス張りのテントについて話をしたが
この世界のガラスは強度は低いので、そこまでは用意しないことになった。
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