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077来客1

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野外での寝泊りだが、テント型の小屋のおかげで十分な休息を取れる2人は
朝から森を散策し、夜は拓は薬を作り、ガラは体を鍛えている。
今は森の散策が終った後と、夜の作業が終った後に露天風呂に浸かっている。
食事にしてもベットにしても宿に泊まるよりも上等だ。

「露天風呂なんて本当に贅沢だ。これは、冒険者の生活ではないな。」

露天風呂に浸かりながら、思わずガラが呟いてしまうのも仕方が無いだろう。

「このまま、ガラと旅をするのも楽しいかもしれないね。」

そんな拓の言葉にガラは嬉しくなってしまう。


2週間ほど森の散策を行っている間、拓は記憶の腕輪でマッピングを行っている。

「拓さん、そんなにマッピングをしてどうするんだ。」

ガラが不思議に思うのも無理は無い。
この辺の森は浅いので、春になればまた冒険者が薬草を取りに来るため
せっかく行ったマッピングの意味が無くなってしまう。

「この辺って、雪華草が手に入れられるみたいなんだ。
 少し、目星をつけておこうと思ってね。」

雪華草は冬に咲く花で、その花を毒消し等の薬に混ぜるとその効果を高める性質を持っている。
ただ、花は雪の下で咲く。
寒さの中、雪を掻き分けて探す為、ギルドに依頼が有っても冒険者が受ける事は殆ど無い。

「拓さんは、真冬に薬草採取に来るつもりなのか。」
「未だはっきりとは決めていない。ただ、雪華草は優秀な材料なんだよね。」
「なら、採取しに来よう。拓さんがそう言うのなら持っておいた方が良い。」

自分の事を持ち上げ過ぎだと思う拓だったが

「俺の空間魔法なら保管も出来るから、採取しに来ようか。
 テント型の小屋も有るから、泊りでも寒さは問題ないし。」

ガラの言葉で雪華草を採取する事に決めた。
十分に薬草を採取し、王都周辺の森の状態も把握できたところで、王都に戻る事にした。


家に戻った拓を待っていたのは、アーネスのニヤついた顔だった。

「やっと帰って来たな。この色男。しかし、拓も隅に置けないな。
 2人が森に行っている間にアゼルド家の令嬢、クリスティーヌさんが尋ねてきたぞ。
 1年もしない内に、2人の御令嬢と知り合いになるなんてやるな。
 サーシャさんにクリスティーヌさん、本命はどっちなんだ。」

アーネスは拓をからかいながら、クリスティーヌが泊まっている宿までの地図を渡した。

「拓に、この俺が直々に女性を口説くテクニックを教えてやろう。
 先に言っておくが、複数の女性と付き合うのは男のロマンだが、本命1人に絞った方が良いぞ。
 いいか女性を口説く基本は、マメさとプレゼントだ。
 相手も出先だから花は止めた方が良い。手作りの菓子なんてどうだ。
 貴族の御令嬢となると舌が肥えているだろうが、拓のは美味いからな。」

自称、モテ男による女性の口説き方講座が始まったが

「貴方。その位にしてはどうです。拓さんも帰って来たばかりで疲れているでしょうから。
 拓さん、ガラさん、ゆっくりと休んでくださいね。アーネス様、失礼致します。」

奥さんのミーシアがアーネスを止めてくれた。
この手の話しでアーネスが暴走するのではないかと気にして来てくれたのだろうか。

それにしてもミーシアは綺麗で、コーギという子供がいる様には見えない。
アーネスと並ぶと美女と野獣という感じだろうか。
ミーシアが妻なら、確かにアーネスはモテル男と言ってもいいだろう。
ただ、ミーシアの後ろを大人しく付いて行くアーネスをの後姿を見ると、力関係はミーシアの方が上みたいだ。

「改めて、爺ちゃんただいま。」
「フォスターさん、ただ今帰りました。」
「お帰り。その顔を見ると、十分な成果が得られたみたいだな。
 しかしアーネスも懲りない男だ。」

昔、コーギに恋人が出来た時、アーネスは今と同じ様な状態になったらしく
最後は自分の若かりし時の武勇伝を話し始めて、ミーシアと喧嘩になったらしい。

「まぁ、その武勇伝が何処まで本当の事かは誰も知らないが。
 2人共、先ずは汚れを落として食事にしないか。」

拓とガラがサッパリした所で、夕食を食べながらお互いの状況を話をしたが
フォスターの方は、髪の色を変える方法もガラの呪いを解く方法も見つけられてなかった。
呪いについての本は有るが、量が多く未だ見きれていないらしい。
とりあえず、呪いを解除する際に使う薬のメモをとっていた。
そして話はクリスティーヌの事になり

「拓が世話になったのなら、儂も挨拶をした方がいいだろう。
 明日は一緒に伺っても良いか。」
「それは良いけど、爺ちゃんはクリスティーヌと会わなかったの。」
「儂が出掛けていた時に来てな。残念ながら会っていない。」
「そうなんだ。爺ちゃんが一緒なら、何か用意した方が良いよね。」

拓は、アーネスの言葉を参考に菓子を作る事にした。
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