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076露店風呂

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それから2日ほど、拓とガラは王都を散策し、防寒具等の冬支度をすると

「じゃあ、爺ちゃん、アーネス小父さん、2週間ほど王都周辺を調べてくるね。」

暫く王都周辺の森の散策を行う事にした。
今回は、ダイフクも一緒でガラの持つバックの中に入っている。
途中まで乗合馬車を使って移動したが、乗っているのは拓とガラの他に5人組の冒険者だけだった。
その中の1人が拓とガラに話しかけてきた

「2人は冒険者か。何処まで行くんだ。」
「薬草採取に森の側まで行く予定です。」
「こんな時期の薬草だと、風邪薬の材料って所か。」
「そんな所です。皆さんは何処へ。」
「俺たちは、ヘーゼの村で魔獣退治だ。
 時期外れのが出たらしくてな、臨時の稼ぎだな。」

随分と気さくな人で、暇つぶしにと
王都でのお勧めの店や、流行の服装や遊び、そして色事などを話してくれた。
話が盛り上がっていたが、拓とガラの目的地に着いたので

「面白い話をありがとうございました。魔獣退治気をつけてください。」
「ありがとうな。そっちも頑張れよ。」

馬車を降りた2人を元気に送り出してくれた。
ここから、森の中を散策することなるのだが

「凄いよ。落ち葉がこんなに溜まっている。天然のクッションだ。」

拓は落ち葉の踏んだ感触を楽しんでいたと思うと

「ガラ、見てろよ。葉隠れの術。」

風魔法で自分の周囲に落ち葉を舞わした次の瞬間、拓の姿は無くなっていた。
慌てて、ガラが拓の居た場所へと向かうと、落ち葉の中から手が出てガラの足首を掴む。

「うゎ」

ガラが驚くと、落ち葉の下から拓が出てきた。

「どう、驚いた。
 風魔法で落ち葉を舞わせて姿が隠れたら、闇魔法で気配を消して落ち葉の下に潜ったんだよ。
 名づけて葉隠れの術・・・なんてね。」

嬉しそうに笑う拓の服に付いた落ち葉を払いながら、ガラは溜息を吐いた。

「全く、本気で消えたと思って焦ったぞ。
 本当に拓さんは器用に魔法を使いこなすな。」

ガラは半分呆れながらも、拓の魔道師としての才能に感心していた。
その後、2人は森を散策しながら薬草採取を行った。

薄暗くなり、肌寒くなって来たところで
拓がテント型の小屋を取り出し、本日の散策は終了とした。
ガラが風呂の状態を確認しようとすると

「この森には俺達以外に誰も居ないみたいだから
 今日の風呂は外で入る事にしようか。」

拓がガラを連れて外に出ると、ゲートを開いて大きな岩の塊を取り出した。
中はくり抜かれていて、湯が張ってある。

「ペンデルトン領で作た露天風呂。
 水を温める魔道具も付いているよ。早速入ろう。」

拓は「さむっ」と言いながら服を脱ぐと、掛け湯をして湯に飛び込んだ。
直ぐに、ガラとダイフクも後に続く。
外が暗くなると、岩風呂の淵に設置してある光の魔道具が仄かな明かりを灯す。

「ちょっと灯を消してみようか」

拓が灯を消して目が慣れてくると、空には満点の星空。

「これは凄い。拓さんには何時も驚かされる。」
「ダイフクが掃除をしてくれるから作ってみたんだ。やっぱり露天風呂は良いね。」

何度も湯を温め直すほど、2人と1匹は露天風呂に浸かって星空を眺めていた。
十分に寛いで、テント型の小屋に入ったのだが

「何だかラブホテルみたいだな。」

それが、寝る部屋を見た拓の感想だった。

「そのラブホテルって何だ。」

聞いたことのない言葉をガラが尋ねるので、拓がラブホテルを簡単に説明すると
ガラは変に意識してしまい、自分の顔が赤くなるのが分かる。
『俺は何を考えている。相手は主だぞ。』
そして、拓を見て更に顔が赤くなる。

「ガラ、もしかして長湯し過ぎた。顔が赤いよ。」
「だっ、大丈夫だ。少しのぼせただけだと思う。」

食事の準備が終わるまで少し休むように言われ、心を落ち着けるガラだった。
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