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070工房
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フォスターと拓は夜中まで話し込んでしまい、遅い朝食を取っていた。
「爺様、拓、昨夜はゆっくり話せたか。
これから拓のテント型の小屋を発注に行くが一緒に来るか。」
アーネスが誘ってくれたので、2つ返事で行くことを決めた。
「後、ゴンからタレの材料費と作業代として金を預かっているぞ。」
拓は金貨1枚を受け取った。
「ゴンさんは、どれだけの量を欲しがっているんですかね。
王都のでの物価次第ですが、銀貨1枚で十分だと思うけど・・・」
「手間賃に拓の技術料も入っているんだろ。どうする。」
「技術料までは必要ないな。銀貨1枚分を渡して様子見です。」
ガラを呼びに行くと、アーネスから借りた地図に書かれている内容を、自分の地図に書き写していた。
「ガラが地図を把握していれば、もう迷子にはならないな。」
アーネスが笑って言うと、ガラも「拓さん、任せてください。」と答えている。
拓としては、前の世界の常識で見てしまったのが問題で、地図は読めると言いたい所だが苦笑いしか出来なかった。
ダイフクをどうしようかと思ったが、フォスターに懐いているので
そのままフォスターに預け、家の掃除をする様にお願いしておいた。
アーネス、ガラ、拓で町に出ると
「うゎ、人が多い。」
これが、拓の第一声だ。
昨日は馬車移動の上、拓はフォスターと会うことで頭が一杯で町を見ていなかった。
多くの人が行き交い、活気がある。
アーネスに案内されて向かったのは、職人達が集まる区画。
もう冬という事も有り、少し閑散としている感じがする。
アーネスはその中の1つの工房に入って行くと
「アーネスだか、親方は居るだろうか。」
店番の女性に話しかける。
店番が「親方、アーネスさんが来ましたよ。」奥の方へ大声で叫ぶと、小柄だが筋肉で分厚い体をした男が出てきた。
「アーネス、久しぶりだな。」
「少し遠出をしたからな。」
ガッチリと握手をした後、親方に拓とガラを紹介してくれた。
「ゼレフ工房は、良い職人が揃っていてな。良い仕事をする。」
「お前が来たと言う事は、また変わった依頼か。」
「以前に頼んだテントを覚えているか。」
「おぉ、あれはテントというよりちょっとした家だったがな。」
「あれを追加で7個依頼したい。」
拓が6個と間違えていると伝えたが、アーネスはこれで良いと言って話を進める。
「うむ、あれを7個か。この冬の間掛かっても問題ないか。」
「冬の間に出来上がるなら問題ない。で、価格の方なんだが……」
そこからアーネスと親方との交渉が始まったが、長引きそうで店番の女性が
「ガラさんと拓さんでしたよね。待っている間 工房を案内しましょうか。」
誘ってくれたので、アーネスと親方を置いて工房見学をしてもらう事になった。
店の奥が直ぐに工房になっていて、何人かの職人が魔道具で鉄を熱して軟らかくして加工作業を行っていた。
「鉄の塊をインゴットって言うけど、
ここでは、そのインゴットや他の金属を使って製品にしているの。
主に武器や防具を作っているわ。」
職人達は無言だが、誰もが自分の仕事を熟知し、無駄の無い作業を行っていた。
実際の暑さとは違う熱気が伝わってくる。
魔獣の出現が減る冬になると武器の仕事が減るので、武器以外の商品を作っているらしい。
別の部屋に連れて行かれると
「ここは、魔獣の皮等の素材を使って製品を作っているわ。
素材によっては、金属より丈夫な物も有るわね。」
職人が器用に素材を製品に加工していた。
春になると、職人達の熱気はもっと凄い事になり、罵声が飛び交うのは日常茶飯事で
とても、お客に工房を案内することは出来ないそうだ。
一通り工房を見学した後は出来上がった製品を見せてもらうと、包丁等の料理道具もあった。
「これ、俺が使っている包丁と同じだ。」
拓の使っている包丁一式はアーネスが用意してくれたもので、多分ここで購入したものなのだろう。
結構な価格だったが、ガラ用に購入する事にした。
武器や防具も良い物が揃っていてガラがじっくりと見ていたが
これから特注のテントを購入する事を考えると、購入は諦めるしかなかった。
一通り工房を案内してもらい、戻って来た時には交渉も終わり
アーネスは笑顔で、親方は疲れた感じでお茶を飲んでいた。
「拓、ガラ、工房はどうだった。
この工房は王都でも1、2を争う程の腕利きだからな。」
「その腕利きの工房で、ここまで値切るお前はどういう性格をしているんだ。」
それだけで、アーネスの交渉が上手くいった事が分かる。
親方にお礼を言って店を出た所で、拓がアーネスに問いかける。
「アーネス小父さん。テントを7個も発注した理由を教えてもらえる。」
「それは、俺のテントを拓に持っておいて貰おうと思ってな。
流石に俺の空間魔法にあんなのを収納しておく余裕は無いが、拓なら大丈夫だろう。」
「保管しておくのは良いけど、春になったら俺はペンデルトン領に戻るよ。」
「先行投資だ。この先、拓と行動する事も有るだろうし。男の秘密基地だな。
保管料として、内装の家具は俺からプレゼントするぞ。
それから、テントの代金も予定より安くなったからな。喜べ。」
ただ、テントの内層についてはじっくりと考えるらしく家具は日を改める事にし
町の中を案内してもらいゴンへ渡すタレの材料の他に
アーネスのコネで拓自身が使う食材や薬草を大量に安く購入して帰ってきた。
一部は拓の空間魔法で収納したが、人前では殆どをアーネスが収納してくれた。
「劣化しないと、大量に食材を購入できて良いな。
ペンデルトン領で問題を起して居づらくなったら、俺の商会で働けば良いからな。」
不吉な事は言わないで欲しいと思いながら、拓はアーネスに運んでもらった荷物を受け取った。
「爺様、拓、昨夜はゆっくり話せたか。
これから拓のテント型の小屋を発注に行くが一緒に来るか。」
アーネスが誘ってくれたので、2つ返事で行くことを決めた。
「後、ゴンからタレの材料費と作業代として金を預かっているぞ。」
拓は金貨1枚を受け取った。
「ゴンさんは、どれだけの量を欲しがっているんですかね。
王都のでの物価次第ですが、銀貨1枚で十分だと思うけど・・・」
「手間賃に拓の技術料も入っているんだろ。どうする。」
「技術料までは必要ないな。銀貨1枚分を渡して様子見です。」
ガラを呼びに行くと、アーネスから借りた地図に書かれている内容を、自分の地図に書き写していた。
「ガラが地図を把握していれば、もう迷子にはならないな。」
アーネスが笑って言うと、ガラも「拓さん、任せてください。」と答えている。
拓としては、前の世界の常識で見てしまったのが問題で、地図は読めると言いたい所だが苦笑いしか出来なかった。
ダイフクをどうしようかと思ったが、フォスターに懐いているので
そのままフォスターに預け、家の掃除をする様にお願いしておいた。
アーネス、ガラ、拓で町に出ると
「うゎ、人が多い。」
これが、拓の第一声だ。
昨日は馬車移動の上、拓はフォスターと会うことで頭が一杯で町を見ていなかった。
多くの人が行き交い、活気がある。
アーネスに案内されて向かったのは、職人達が集まる区画。
もう冬という事も有り、少し閑散としている感じがする。
アーネスはその中の1つの工房に入って行くと
「アーネスだか、親方は居るだろうか。」
店番の女性に話しかける。
店番が「親方、アーネスさんが来ましたよ。」奥の方へ大声で叫ぶと、小柄だが筋肉で分厚い体をした男が出てきた。
「アーネス、久しぶりだな。」
「少し遠出をしたからな。」
ガッチリと握手をした後、親方に拓とガラを紹介してくれた。
「ゼレフ工房は、良い職人が揃っていてな。良い仕事をする。」
「お前が来たと言う事は、また変わった依頼か。」
「以前に頼んだテントを覚えているか。」
「おぉ、あれはテントというよりちょっとした家だったがな。」
「あれを追加で7個依頼したい。」
拓が6個と間違えていると伝えたが、アーネスはこれで良いと言って話を進める。
「うむ、あれを7個か。この冬の間掛かっても問題ないか。」
「冬の間に出来上がるなら問題ない。で、価格の方なんだが……」
そこからアーネスと親方との交渉が始まったが、長引きそうで店番の女性が
「ガラさんと拓さんでしたよね。待っている間 工房を案内しましょうか。」
誘ってくれたので、アーネスと親方を置いて工房見学をしてもらう事になった。
店の奥が直ぐに工房になっていて、何人かの職人が魔道具で鉄を熱して軟らかくして加工作業を行っていた。
「鉄の塊をインゴットって言うけど、
ここでは、そのインゴットや他の金属を使って製品にしているの。
主に武器や防具を作っているわ。」
職人達は無言だが、誰もが自分の仕事を熟知し、無駄の無い作業を行っていた。
実際の暑さとは違う熱気が伝わってくる。
魔獣の出現が減る冬になると武器の仕事が減るので、武器以外の商品を作っているらしい。
別の部屋に連れて行かれると
「ここは、魔獣の皮等の素材を使って製品を作っているわ。
素材によっては、金属より丈夫な物も有るわね。」
職人が器用に素材を製品に加工していた。
春になると、職人達の熱気はもっと凄い事になり、罵声が飛び交うのは日常茶飯事で
とても、お客に工房を案内することは出来ないそうだ。
一通り工房を見学した後は出来上がった製品を見せてもらうと、包丁等の料理道具もあった。
「これ、俺が使っている包丁と同じだ。」
拓の使っている包丁一式はアーネスが用意してくれたもので、多分ここで購入したものなのだろう。
結構な価格だったが、ガラ用に購入する事にした。
武器や防具も良い物が揃っていてガラがじっくりと見ていたが
これから特注のテントを購入する事を考えると、購入は諦めるしかなかった。
一通り工房を案内してもらい、戻って来た時には交渉も終わり
アーネスは笑顔で、親方は疲れた感じでお茶を飲んでいた。
「拓、ガラ、工房はどうだった。
この工房は王都でも1、2を争う程の腕利きだからな。」
「その腕利きの工房で、ここまで値切るお前はどういう性格をしているんだ。」
それだけで、アーネスの交渉が上手くいった事が分かる。
親方にお礼を言って店を出た所で、拓がアーネスに問いかける。
「アーネス小父さん。テントを7個も発注した理由を教えてもらえる。」
「それは、俺のテントを拓に持っておいて貰おうと思ってな。
流石に俺の空間魔法にあんなのを収納しておく余裕は無いが、拓なら大丈夫だろう。」
「保管しておくのは良いけど、春になったら俺はペンデルトン領に戻るよ。」
「先行投資だ。この先、拓と行動する事も有るだろうし。男の秘密基地だな。
保管料として、内装の家具は俺からプレゼントするぞ。
それから、テントの代金も予定より安くなったからな。喜べ。」
ただ、テントの内層についてはじっくりと考えるらしく家具は日を改める事にし
町の中を案内してもらいゴンへ渡すタレの材料の他に
アーネスのコネで拓自身が使う食材や薬草を大量に安く購入して帰ってきた。
一部は拓の空間魔法で収納したが、人前では殆どをアーネスが収納してくれた。
「劣化しないと、大量に食材を購入できて良いな。
ペンデルトン領で問題を起して居づらくなったら、俺の商会で働けば良いからな。」
不吉な事は言わないで欲しいと思いながら、拓はアーネスに運んでもらった荷物を受け取った。
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