上 下
63 / 304

063一流の男

しおりを挟む
次の日の朝、ドアをノックする音がして拓が出ると

「拓、おはよう。これ、ルドルフ料理長から焼きたてのパンよ。」

サーシャがマリーと一緒に朝食を届けに来てくれた。
直ぐにアーネスを呼んで紹介する。

「お初にお目にかかります。
 私は、商人をしていますアーネスと申します。
 拓がお世話になっています。」
「始めましてアーネス様。ペンデルトン家のサーシャと申します。
 こちらこそ、拓さんには、いつもお世話になっています。」

サーシャは、少しアーネスと話して屋敷に戻っていった。
そして、サーシャを見送ると朝食を食べながらアーネスは

「素敵なお嬢さんじゃないか。成程な。」

そう言って、ニヤつきながら拓の事を見ている。

「何だが、下世話な事を考えているみたいだけど、違うから。」
「いやいや、拓の事をオッサン臭いと思っていたが、若い、若い。
 しかし、侯爵令嬢か・・・人生、色々と思い通りには行かない事もあるが
 その時は、俺が酒を奢ってやるからな。」
「だから、なんでそうなるの。」

拓の言葉を「まぁまぁ」と聞き流しながら、終始アーネスは拓かからかって笑顔で食事を続けていた。


拓はヘンデリック侯爵に冬の間、アーネスと共に王都に行くことを伝え、ガラ、アーネスと共に町に買出しに来ている。
先ず購入したのは2人でも十分に寝れるサイズのベット。
拓のテントで使う為の物だ。

「旦那。このベットを運ぶのに、別途料金が掛かりますがどうしますか。」
「いや、運ぶ必要は無い。俺がそのまま持ち帰る。」

アーネスがゲートを開いて、空間魔法で収納した。

「俺はこれでも上級魔道師でな。商人をやっているアーネスという。」
「まさか、鮮血のアーネス…」

驚く店主に満足したアーネスが、得意げに拓の方を見るが、拓はガラと一緒に他の商品の物色をしていた。
次に向かったのは岩の加工の依頼。
拓が事前に用意していた岩をアーネスがゲートを開いて取り出すと

「凄い、上級魔道師なのか。」

職人達が驚いているので

「まぁな。俺は商人をしているアーネスという者だ。」
「まさか、鮮血のアーネス・・・」

この反応に満足したアーネスが、今度こそはと拓の方を見るが
石職人の親方と岩の加工内容について話をしていてアーネスの事を見ていなかった。
その後、市場で大量に食材を仕入れに来たのだが

「拓、新鮮な果物を王都まで運んでもらっても良いか。」
「空間魔法の収納は問題ないけど、ゴンさんはどうします。」
「販売目的で仕入れる訳じゃないから、そこは上手くやる。爺様も居るからどうにでもなるしな。」

そうと決まればと、王都で売っていない果物や野菜を大量に買い始めた。
買った果物や野菜をアーネスがゲートを開いて収納していく姿を見ていた店主から

「もしかして、あんた鮮血のアーネスかい。」
「そうだが。俺の事を知っているのか。」
「いや、この町に来ていると聞いてな。やはり一流の男は風格が違うねぇ。」

アーネスが横目でチラッと見るが、ガラと売っている食材で何を作るかの話で盛り上がっていた。
その後は、珍しい果物や野菜だけでなく、王都でも普通に買える物まで買い始めた。

「この辺は王都でも買えると思うけど。」
「この食料は非常時用で拓が持ってくれ。有るだけで気持ちに余裕が出来る。
 ゴンは俺が最も信用している部下だが、いざという時の判断は拓に任せる。
 移動の際に使わずに済んだら、拓が食べればいい。」

最後にアーネスが砂糖を購入すると

「旅の間に、小腹が空いたら食べれる菓子が有ると良いよな。
 ゴンの奴、大酒飲みの上に甘い物が好きなんだ。」

とゴンの為と言いながら、拓に渡していた。
拓が森で暮らしていた時、アーネスは必ず砂糖や果物を渡してケーキを作ってもらっていたので今更の話なのだが・・・
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

騎士団長のお抱え薬師

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:610pt お気に入り:314

自殺したお飾り皇太子妃は復讐を望む ~二周目の君は変われない~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:184

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:568pt お気に入り:9,827

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:553pt お気に入り:4,190

チートなタブレットを持って快適異世界生活

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:511pt お気に入り:14,298

処理中です...