異世界薬剤師 ～緑の髪の子～

061鮮血

「先程、拓殿がアーネス殿を小父さんと呼んでいたが、
　２人の関係を良ければ教えてもらっても良いだろうか。」

ヘンデリック侯爵が２人の関係を尋ねると

「以前、私が森で爺ちゃんと暮らしていた話をしたと思いますが
　その時、生活に必要な物を運んでくれた商人がアーネス小父さんなんです。」

拓が２人の関係を教えてくれた。

「拓殿があの鮮血のアーネス殿と知り合いだったとは。」

ヘンデリック侯爵の呟きに、拓が聞き返す。

「鮮血って何のことです。」
「何って、俺の２つ名だ。言った事が無かったか？
　これでも、王都で鮮血のアーネスと言ったら勇名なんだぞ。」
「・・・鮮血って魔獣に襲われて、怪我で血塗れにでもなったからとか？」
「違う。戦で敵を倒し返り血を浴びて鮮血に染まったからだ。」
「・・・」
「何だ、その疑いの目は。今度、俺の武勇伝を、じっくり話してやろう。」

アーネスの得意そうな顔に対し、拓の呆れた顔。
２人の様子を見て、ヘンデリック侯爵とヘルガは安心した。

「拓、色々と話をしたいが、今は何処に住んでいる？」
「ヘンデリック侯爵の好意で、敷地内の小屋に住んでいるよ。
　こちらのガラと一緒に生活をしてる。」

拓の側に立っている、ガラの紹介を終えると
アーネスはヘンデリック侯爵とガラに拓の住んでいる小屋に伺う許可をもらった。

「久しぶりに、拓の手料理が食えるな。
　表に店の奴を待たしているから、一言伝えてから小屋に伺わせてもらおうか。」

ヘンデリック侯爵達に挨拶をした後、セバスに案内された場所は
客が来たときに、お付きの者が待つのに使っている部屋だった。
そこで、アーネスの部下とジャンが寛いで話をしていた。
拓とアーネスが知り合いだと分かり、部屋に通されていた。

「大将、無事に話が終ったんですね。」

アーネスが部屋に入ってくると、部下が直ぐに立ち上がった。

「あぁ、こいつが拓だ。こっちはゴン。」
「先程、門の所で会いました。改めて拓さん。俺はゴン。大将の護衛を任されている。
　実際は大将の方が強いんで、荷物番だけどな。」

ゴンは人懐っこい笑顔で挨拶をする。

「拓です。こちらこそ宜しくお願いします。
　それから、こちらが仲間のガラ。」

拓とガラがゴンと簡単に挨拶を済ませると

「ゴン。今日は拓と話すことがあるから、一人で宿に戻って休んでくれ。
　今後の予定は、明日話す。
　後、羽を伸ばす前に手紙を１通頼む。」

アーネスはそう言って、ゴンに手紙と幾らかの金を渡していた。
今夜の遊ぶ分の金も有るのか、受け取ったゴンが礼を言っていた。