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053報告

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拓とガラはアークのメンバーと別れ、屋敷に顔を出しヘンデリック侯爵に期限より早いがポーションを収めさせてもらった。
ヘンデリック侯爵としても、これから冬に向けて魔獣も活発に動くようになるので助かっている。
ポーションの売上も順調で、冒険者が並んで買うほどだった。

「使用人たちに配った薬の効果について報告が有るがどうする。」

急ぎの用事も無いので伺う事にすると、執事のセバスとメイド長のロッテンマイヤーを呼び出した。
以前に配った、風邪薬に傷薬、化粧水やハンドクリーム、日焼け止めの報告書を受け取り話を伺うと
高い効果が確認され、皮膚が被れるなどの被害も無かった。
ただ、風邪薬だけは全員健康で使っていない。

指摘事項としてハンドクリームの香りが上げられていた。
クリームの材料として使った薬草が良い香りだったので、あえて香りを残してある。
効果を確認の為、ヘンデリック侯爵の計らいで付けても良いとしたが
屋敷で働く者としては、香りが有るのは問題になる。
また貴族に売るとしても、大抵の女性は好きな香水が有るので、香りは無いほうが良いとの事だった。

「次にナターシャ婦人とミラー婦人に渡す分から香りの無い物を用意します。
 この度は、付き合って頂きありがとうございました。」

一通り報告を伺い、話は終わりかと思ったが、

「拓様、屋敷の従業員でも購入可能な
 化粧水、ハンドクリーム、日焼け止めを用意して頂く事は可能でしょうか。」

セバスが拓に訪ねてくる。
今回作った薬はナターシャ婦人に高い値段で売る事になった。
安く売っても良いが、同じ物を安く売るのも問題になる。
そもそも拓には、化粧品を銀貨5枚も出して買う行為を理解できていないが…

「そうですね。効果が低くなりますが屋敷の方々の分だけなら対応させてもらいます。
 銀貨1枚位に抑えようと思いますが良いですか。」

「宜しくお願い致します。」

拓の言葉にセバスではなく、ロッテンマイヤーが即答していた。
銀貨1枚の効果はどの程度有れば良いのかも分からず、
拓は問題を先送りにし、期待を込めるメイド達の視線を避けるように森へと戻って行った。



今回やって来たのは、以前にサーシャと拓が落ちた渓谷の上。

「拓さん、本当にやるのか。」
「前にサーシャと歩いた時は、時間が取れなかったからね。」

崖の下を覗くガラの顔は冴えない。

「さぁ、ガラ様。宜しければ御手をどうぞ。」

拓が笑顔で差し出す手を、ガラが恐る恐る掴む。

「行くぞ。」

拓の掛け声で、2人は崖から飛び出した。

「わ~~。」

ガラは叫び声を上げて拓の腕に力いっぱいしがみ付くが、2人の体はゆっくりと崖を落ちていく。
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