上 下
38 / 304

038合流

しおりを挟む
4日目、歩いていた拓が立ち止まり、崖の上を眺めている。
崖に切れ目が有り、細い獣道が有った。

「もしかして、ここが上に登れる道なの。」
「どうもそうみたい。ガラが降り始めている。
 正直、こんな道だとは思わなかった。これは気合を入れて登るしかないかな。足の方は大丈夫?」
「毎日、拓に治癒魔法を掛けてもらっているから問題ないわ。」
「疲れを取るくらい位には効果が有って良かった。」

2人は道なき道を歩き、岩場が有ると拓が先に登り、垂らしてくれるロープを使ってサーシャが登る。

「後ろを見てみなよ。結構高い所まで登って来たよ。少し休もうか。」

川が低い所にある。かなり頑張って登って来た。
水を飲みながら、拓が出したお菓子を食べて一休み。
更に登り続けていると

「拓さ~ん。拓さ~ん。」

ガラの声が聞こえてくる。

「ガラ、ここに居る。」

拓が声を張り上げ答えて少しすると、上の方からガラが駆け寄り

「無事で良かった。本当に良かった。」

がっちりと拓を抱きしめた。
その後から、「お嬢。大丈夫ですか。」とトウ、ジャンがサーシャに駆け寄ってきた。

「心配を掛けてごめんなさい。拓のお陰で私は大丈夫。安心して。」

サーシャを見て少しは落ち着いてくれた。
皆の様子を聞くと、バンは状況を説明に町に戻り、他の皆は上で待機している。
クリスティーヌやユンクも降りて来ようとしたが、道が険し過ぎるとヘルガに止められているらしい。

何とか上まで登りきると、

「サーシャ、拓、無事でよかった。」
「あんな所から落ちて、無事に帰って来れるなんて信じられないよ。」

クリスティーヌとユンクが泣いてしまい、しがみつくクリスティーヌが落ち着くまでサーシャは身動きも取れなかった。
2人が落ち着くと

「サーシャ様、護衛としてついて居ながら、危険な目に合わせて申し訳有りません。
 拓も危険な目に合わせて申し訳なかった。サーシャ様を助けてくれて本当にありがとう。」

ヘルガが片膝をつき、頭を下げている。その後ろでトウ、ジャンも同じ様に頭を下げる。

「皆、頭を上げて。私は大丈夫だから。
 崖の下を歩いている間も危険な事は何も無かったから。
 救助に来てくれてありがとう。」

暫く、皆で再会を喜んだ。
皆が落ち着くと、

「拓、あの崖から落ちて、どうやって怪我も無く助かったんだ。」

ヘルガが質問をする。それは、サーシャも疑問に思い、拓に聞いてみたが笑って誤魔化されていた事だった。

「崖の下から強い風が吹いたみたいです。
 その風で落下速度が落ちて、木の枝がクッションになって助かったみたいですね。」

嘘だ。木の枝がクッションになったのなら、サーシャに傷もなく服も汚れていないのは可笑しい。
皆も同じことを考えたみたいだが、そのことを指摘する人は居なかった。

ヘルガも「本当に無事でよかった」と言うだけで、それ以上は追及しなかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

スキルガチャで異世界を冒険しよう

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:276pt お気に入り:1,758

星屑を拾って-森の薬師と王の話-

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:111

おれは忍者の子孫

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:13

異世界で趣味(ハンドメイド)のお店を開きます!

ree
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:846

お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので

恋愛 / 完結 24h.ポイント:440pt お気に入り:4,641

ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:45

スキルは見るだけ簡単入手! ~ローグの冒険譚~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:7,074

アウトドアショップin異世界店 冒険者の始まりの街でオープン!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,435pt お気に入り:3,035

夫のかつての婚約者が現れて、離縁を求めて来ました──。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:411pt お気に入り:444

処理中です...