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018最低限度の生活レベル

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奴隷商人に見送られ、みすぼらしい服を着たガラと店の外に出ると

「拓様、買って頂きありがとうございます。」

ガラが、拓に膝を付いて挨拶を行った。
拓はガラを立たせると

「こちらこそ、お願いします。
 早速、命令しますが、様付で俺を呼ぶのは禁止。
 それから、挨拶をするのに膝を付くのも禁止。
 丁寧に話すのは良いですが、敬語も禁止で。
 敬意は払ってもらいたいですが、仲間として接してください。」

拓の言葉にトウもガラもキョトンとし、ヘルガは吹き出して思いっきり笑い始めた。

「そんな命令をするなんて、やはり拓だな。本当に面白い。」

それだけ言うと、また笑い始めた。

「ガラ、私はヘルガだ。私にも様は不要だ。
 拓が仲間だと言うのであれば、普通に接してくれ。」

そう言って、ガラに手を出し握手をしていた。
ヘルガがトウに目配せをしてきたので

「俺の事はトウと呼んでくれ。
 拓には俺も驚いているが、正直良かった。宜しくな。」

トウもガラと握手をした。
拓としては、敬称なしで「拓」と呼ばせたかったみたいだが、流石にガラには受け入れ難く「拓さん」という呼び方で落ち着いた。

「ヘルガさんのお陰で余裕が出来たので、このまま買い物に行きたいのですが。」
「荷物持ちなら任せて貰おう。先ずは、何処から回る。」

ヘルガの案内で服から買い物がが始まった。
拓はガラの事を本当に奴隷として見ていない。
必要経費と言って、服を10着ほど購入し初めに着ていた服を着替えた後は、武器屋へ
拓には武器の善し悪しが分からないと言うので、ガラの意見を参考にトウが選んだ。
上限金額が金貨5枚までと言われ、そこそこ良い武器を購入する事が出来た。
しかし、選んだトウとしては拓が太っ腹過ぎると言うしかない。

最後は家具屋で、ベットを購入すると言うが

「拓さん、俺は床で大丈夫です。」

ガラは購入するのが自分のベットだと知って断るが

「それは駄目だよ。快適な睡眠は疲れを取る為に必要不可欠。
 この出費は想定内だから、安心して問題ない。
 今月は厳しいけど、最低限度の生活は保障するよ。」

拓が床で寝るなんて事を受け入れる訳がなかった。
トウは拓の中の最低限度の生活レベルが気になるが・・・
購入したベットは、ヘルガが空間魔法で収納し
他にも必要な物を購入した所で、拓の奢りでお茶をする事に。

「ガラは何をしているの。早く座りなよ。」
「しかし、私は奴隷ですので。」
「それが何、仲間が座るのに何か問題にでも。」

拓は少しイラっとしていた。
ガラの態度はある程度理解できるのだが、拓はそんな関係を望んでいない。
そんな状態に、ガラは戸惑うばかりだ。
仲間として接する様に言われたからといって、奴隷が主人と同じ席に座るなんて普通では在り得ない。
店の外に待たせるのが普通だ。

「俺の奴隷に対する考えが悪い方にズレていないなら、そこは俺に合わせて。
 他の事でズレが有るなら、指摘してもらいたいけど。」

拓がガラの事を本当に仲間として扱うなら、トウもガラの事を拓の本当の仲間として接しようと改めて思った。

「ガラ、早く座ると良い。ちなみに、果物のたっぷりのケーキがお勧めだ。
 甘いのが駄目で無ければ、これにしてみないか。
 丁度ケーキは4種類有る。4人でなら食べ比べが出来るぞ。
 トウはケーキセットを選ぶよな。」

ヘルガは、どんな時でもマイペースだった。

「全く、姐さんは甘い物が好きなんだから。どうせ、俺に反対する権利は無いんでしょ。」
「そんなの当り前だ。それにトウも甘いのは好きだろう。拓とガラもケーキセットにしないか。」

ヘルガは、考えるまでもなくガラを仲間として扱っている。
しかし、誰であろうとケーキセット以外の意見を受け付ける気は無いだろう。
ケーキが出てきて、拓が早速食べると嬉しそうな顔になる。

「ここのケーキは美味しいですね。」
「そうだろう。結構高くて、何種類も食べることはなかなか出来ないからな。」

ヘルガに言われて、拓が値段を見て驚いている。
値段を確認しないで姐さんに同意していたとは、無謀な事をすると思うトウだった。

「1セット銀貨1枚か。砂糖が高いのは知っていたけど高過ぎるな。銅貨位かと思った。」

流石に銅貨は無いだろう。トウとしては拓の金銭感覚が心配になって来た。

「拓、今更だが金の価値は分かっているよな。」

一応、トウが拓に確認してみると

「鉄貨10枚で銅貨1枚、銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚
 市民の一般的な大人だと月収は金貨2、3枚ですかね。」

と問題無く答えた。
考えてみると、服屋では普通の金銭感覚だった。
拓は森に爺さんと2人で暮らしていたと言っていた。
こんなデザートを食べたのも初めだと考えれば、銅貨という拓の感覚もおかしくはないのか。
トウなりに拓の考えに納得をしていたが、後で別の理由が有る事を思い知らされた。

更に、拓は帰りがけに食料品店に寄って、銀貨5枚分の砂糖と蜂蜜を購入していた。
今日、ヘンデリック様にポーションを卸した分の殆どを使ったと聞いているが、生活費は大丈夫だろうか。
トウが心配しているのが分かったのか、ヘルガが

「拓なら大丈夫だろう。金の管理は出来ている。
 私も薬代として、それなりに払っているから安心しろ。」

笑いながら、トウの肩を叩いて来る。
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