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Episode Extra edition

Happy Valentine's Day‐3

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 プレゼントされたドレスは身体にピッタリ合っていた。

 こんなことなら、持っているアクセサリーを持ってくればよかったと思ったが、アクセサリーがなくても可愛いので、いいことにしようと萌衣は思った。

 連れて行ってもらったレストランは、フレンチの巨匠が運営している三ツ星レストランだった。

  まるでお城の中のような内装で、天井には大きなシャンデリアがぶら下がっている。

 天井と壁には、豪華な宗教画が描かれている。

 羽の生えた女神たちが、薄紫色の空で羽ばたいていた。
 
 一皿一皿がこだわって作られたメニューで、一口ずつ味わって食べる。

 彩りが綺麗な皿の上には、様々な食材が繊細にカットされて乗せられていた。

 オマール海老に、トリュフに、キャビアに、フォアグラに、鴨肉に、名だたる有名な食材が丁寧に調理されて皿に乗せられ、萌衣の前にやってくる。

 食事が一通り食べ終わった時だった。

 ワゴンに乗せられて、大きなバラの花束と、チョコレートケーキが運ばれてくる。

「どういうことですか?」

 驚く萌衣に、ジャンは「今日はバレンタインデーでしょう?」と笑った。

「こんな……私してもらいすぎですよ」

「先ほども言いましたが、自分の故郷を出て頑張っているモエにご褒美ですよ」

 運ばれて来たワゴンの上からバラの花束を取り、萌衣に膝まづいて渡すジャン。

 バラの花束には、Happy Valentine’s Dayハッピー・バレンタインデー from your secret admirerあなたの事を好きな人よりと書かれたメッセージカードが添えられている。

「あと、これは、ご褒美ではなく私からの愛の贈り物です」

 いつの間に持っていたのか、ジャンの手には、大粒のイエローダイヤモンドがついたネックレスが光り輝いていた。

「ジャンさん……!そんな……!」

My shining treasure私の光輝く宝物Will you continue to spend your life together?今後も共に人生を過ごしてくれますか?

Of courseもちろんです

 萌衣の胸元に宝石の王様と呼ばれるイエローダイヤモンドが光り輝く。

 薄緑色のドレスと、ネックレスがよく合っていた。

 ホテルに戻り、息もつく間に、萌衣はジャンをバルコニーへと呼び出した。

 夜景が広がっている。

 黄金色に輝くエッフェル塔が二人を照らした。

「ジャンさんのプレゼントには劣りますけど……」

 手に持ったチョコレートと、プレゼントの箱。

 バレンタインを目指して、語学学校の帰り道に色々と探して歩いていたのだ。

「モエ……」

「日本だと、バレンタインデーは女性から男性に贈るんです……」

 ジャンが感動したように、チョコレートとプレゼントの箱を受け取る。

 箱の中から出てきたのは、有名ブランドのカフスボタンだった。

「ありがとう。とても気に入りました」

 嬉しそうな表情を浮かべて、ジャンはカフスボタンをすぐに着ているタキシードに身に着ける。

「これだったら、ジャンさん毎日つけられると思って」

「毎日つけますよ。毎日仕事をしている間、モエを思い出します」

「喜んでくれてよかった……」

 ホッとしたように息をつく萌衣に、ジャンはキスを落とした。
 
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