英国紳士の熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです

Episode last:Ending

Epilogue

　桜の花が舞い散る頃、イギリスの教会で結婚式を挙げた。

　結局ジャンの故郷であるイギリスで結婚式を挙げることを萌衣が望んだのだ。

　結婚式会場は、ジャンと二人で一緒に見て回って決めた。

　日本風の結婚式はあげられなかったが、白無垢を着た写真を東京の中で一番由緒ある神社で撮影したので、絹江は満足したようだった。

　ドレスの件で散々揉めていた祖母達は、孫たちの結婚式に参加しながら、せっかくだから結婚式が終わったら、ユーロスターでパリにでも足を運ぼうかと盛り上がっている。

　萌衣の知らないところで、絹江とロメーヌは何度も電話をして作戦会議を立てていたということだ。

「幸せなのが一番よ」とロメーヌが言うと「そんなのは当たり前です」と絹江も負けじと言った。

　なんだかんだ仲のいい親友である。

　そして荒巻は、解雇処分という措置が取られた。

　高岡も荒巻に対しても、萌衣は刑事事件にはしなかった。

　荒巻にはまだ小さな子供がいる。

　子供のためにも、もう二度と道を踏み外すようなことをしてほしくなかった。

　ジャンには甘すぎると言われたが、もう充分二人とも社会的制裁を受けていると萌衣は思ったのだ。

　荒巻は萌衣のことを馬鹿にしていたのかもしれないが、彼の上辺だけの優しさに救われていた時期があったのも事実なのだ。

　もう二度と会いたいとは思わないが、判断を変えたいとは思わなかった。

　マーメイドラインのウェディングドレスは、自分で選んだ。

　ジャンが一番綺麗だと言ってくれたドレスを選んだので、二人で選んだと言った方が正しいかもしれない。

　バージンロードを父親と一緒に歩いて、ジャンのいる場所へと歩いていく。

　教会の中で、パイプオルガンの音が壁に反響して響き渡る。

　厳かな雰囲気の中、萌衣はジャンの姿をベール越しにしっかりと見つめた。

　最初はただ怖いだけの人だと思っていた。

　愛をたくさん与えてくれて、だめな萌衣を仕事でも私生活でも支えてくれたジャン。

　彼を愛し抜きたい。

　例えこの先何が待っていたとしても。

　牧師に愛の誓いを二人でたてて、ジャンは静かにベールを外した。

「My darling私の愛しい人I love you more than anyone in the world世界中の誰よりも愛しています」

　ジャンが、萌衣の頬に両手で触れて愛の言葉を囁いた。

「I love you the most in the world too私も世界で一番愛しています」

　初めて英語で愛の言葉を返すと、ジャンは目を丸くした後、嬉しそうな表情を浮かべて、優しい触れるだけのキスを落とした。

　～終～