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Episode09:I can't marry you
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ロメーヌとのお茶会が終わってから、完全にジャンと話をするタイミングを失っていた。
実際には、話をする機会は仕事上多いのだが、それ以外の時間になると萌衣は完全に委縮してしまっていた。
ジャンの初恋が萌衣だと知ったとしても、ジャンにしてしまったことを考えると、簡単に話しかける気にはなれなかった。
TOMOKAのことに関しても、完全に疑念が晴れたわけではない。
そんな自分が嫌だった。
実家に泊まったまま、萌衣はこれからのことを考える。
「ちょっと、萌衣いいかしら」
ノックされて、母親が萌衣に声をかけた。
「どうしたの?」
「おばあちゃんが、萌衣と話がしたいって家に来ちゃったのよ」
ロメーヌから話が行ったのだろう。
この結婚を誰よりも喜んでいたのは、祖母の絹江だった。
きっと結婚がだめになってしまうかもしれないと知れば、がっかりしてしまうかもしれない。
「今行く」
ベッドから起き上がり、萌衣は母親の後に続いて祖母が待っているリビングへと向かった。
「ロメーヌから話は聞きました」
「おばあちゃん……ごめんなさい」
一瞬部屋の中が沈黙に包まれた。
「謝るのは私の方よ、萌衣さん。私ったらすっかり意気込んでしまって、着るものなんかどっちでもいいのにねえ」
話が噛み合っていないと思ったが、よくよく絹江の話を聞いてみると、ロメーヌが伝えたのはウェディングドレスか白無垢かで、萌衣が精神的に追い詰められてしまっているということだけだった。
そんな売り言葉、買い言葉での破棄なんて認めるなんて一言も言っていないわ。
ロメーヌの言葉が脳裏によぎった。
まだ、ロメーヌは萌衣とジャンが結婚することを信じているのだ。
「これでも、あなたの幸せを願っているのよ」
「おばあちゃん……」
萌衣が結婚できるようにと奔走してくれた絹江。
幼い頃は、祖母の絹江が大好きで、よく祖母の家に遊びに行っていた。
祖母の家にある高級な調度品を眺めるのが大好きで、その一つ一つを説明する祖母の声が好きだった。
マナーがなっていなければ叱られることもあったが、祖母と過ごす時間は嫌いではなかった。
萌衣さんは幸せな結婚をしなさいね。
花嫁姿見れるかしら。
萌衣が幼い頃、絹江が萌衣に言った台詞だった。
萌衣は意気込んで「絶対おばあちゃんが生きているうちに幸せな結婚をするね」と話していた。
小学生が終わり、中学生になって、高校生になって、大学生へと成長していくうちに、萌衣の関心は祖母よりも他の物に気を取られるようになっていき、祖母も寂しかったのかもしれない。
「おばあちゃん……わがままばっかりでごめんなさい」
「だから、あなたが謝ることではないの。しっかりしなさい。綺麗な花嫁姿見せてちょうだいね」
泣きじゃくる萌衣の両手を絹江がしっかりと握りしめた。
細い手だった。
皺の刻まれた手が、萌衣の手に力を込める。
「ちゃんと考えて結論だすね」
「当たり前です。先方にも失礼がないようなさい。あなたの人生だけれど、相手の人生も振り回していることを、忘れないように」
厳しい祖母の言葉が身体の中にすーっとしみ込んでいった。
ジャンの行動が萌衣の心の中を人生をかき乱すように、萌衣の行動もジャンの人生をかき乱しているのだ。
本当は、絹江は全て知っていたのかもしれない。
萌衣は、涙を拭いて、大きく頷いた。
実際には、話をする機会は仕事上多いのだが、それ以外の時間になると萌衣は完全に委縮してしまっていた。
ジャンの初恋が萌衣だと知ったとしても、ジャンにしてしまったことを考えると、簡単に話しかける気にはなれなかった。
TOMOKAのことに関しても、完全に疑念が晴れたわけではない。
そんな自分が嫌だった。
実家に泊まったまま、萌衣はこれからのことを考える。
「ちょっと、萌衣いいかしら」
ノックされて、母親が萌衣に声をかけた。
「どうしたの?」
「おばあちゃんが、萌衣と話がしたいって家に来ちゃったのよ」
ロメーヌから話が行ったのだろう。
この結婚を誰よりも喜んでいたのは、祖母の絹江だった。
きっと結婚がだめになってしまうかもしれないと知れば、がっかりしてしまうかもしれない。
「今行く」
ベッドから起き上がり、萌衣は母親の後に続いて祖母が待っているリビングへと向かった。
「ロメーヌから話は聞きました」
「おばあちゃん……ごめんなさい」
一瞬部屋の中が沈黙に包まれた。
「謝るのは私の方よ、萌衣さん。私ったらすっかり意気込んでしまって、着るものなんかどっちでもいいのにねえ」
話が噛み合っていないと思ったが、よくよく絹江の話を聞いてみると、ロメーヌが伝えたのはウェディングドレスか白無垢かで、萌衣が精神的に追い詰められてしまっているということだけだった。
そんな売り言葉、買い言葉での破棄なんて認めるなんて一言も言っていないわ。
ロメーヌの言葉が脳裏によぎった。
まだ、ロメーヌは萌衣とジャンが結婚することを信じているのだ。
「これでも、あなたの幸せを願っているのよ」
「おばあちゃん……」
萌衣が結婚できるようにと奔走してくれた絹江。
幼い頃は、祖母の絹江が大好きで、よく祖母の家に遊びに行っていた。
祖母の家にある高級な調度品を眺めるのが大好きで、その一つ一つを説明する祖母の声が好きだった。
マナーがなっていなければ叱られることもあったが、祖母と過ごす時間は嫌いではなかった。
萌衣さんは幸せな結婚をしなさいね。
花嫁姿見れるかしら。
萌衣が幼い頃、絹江が萌衣に言った台詞だった。
萌衣は意気込んで「絶対おばあちゃんが生きているうちに幸せな結婚をするね」と話していた。
小学生が終わり、中学生になって、高校生になって、大学生へと成長していくうちに、萌衣の関心は祖母よりも他の物に気を取られるようになっていき、祖母も寂しかったのかもしれない。
「おばあちゃん……わがままばっかりでごめんなさい」
「だから、あなたが謝ることではないの。しっかりしなさい。綺麗な花嫁姿見せてちょうだいね」
泣きじゃくる萌衣の両手を絹江がしっかりと握りしめた。
細い手だった。
皺の刻まれた手が、萌衣の手に力を込める。
「ちゃんと考えて結論だすね」
「当たり前です。先方にも失礼がないようなさい。あなたの人生だけれど、相手の人生も振り回していることを、忘れないように」
厳しい祖母の言葉が身体の中にすーっとしみ込んでいった。
ジャンの行動が萌衣の心の中を人生をかき乱すように、萌衣の行動もジャンの人生をかき乱しているのだ。
本当は、絹江は全て知っていたのかもしれない。
萌衣は、涙を拭いて、大きく頷いた。
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