英国紳士の熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです

坂合奏

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Episode08:I don't know own feeling

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「あなた達一体いつ結婚式を挙げるの?」

 疑問のメッセージが、母から送られてくるまで萌衣はすっかり結婚式や入籍の日取りのことを失念していた。

 一緒に暮らしているし、両親、そして祖母たちのお互いの紹介は済んでいるものの、事実上二人はまだ夫婦ではないのだ。
 
 仕事が忙しいと、すっかり後回しになってしまう。

「あの……母から」

 萌衣は朝食を取っている時に、ジャンに母から送られてきたメッセージを見せた。

「考えてはいましたが、ちゃんと話し合いはしていませんでしたね」

「いつって返したらいいでしょうか?」

「あなたの今抱えている仕事が一旦落ち着かないことには、何も動けないでしょうね」

 確かに、今萌衣が抱えているTOMOKAとのコラボ商品企画の仕事は佳境に入っている。

 物理的にも精神的にもいっぱいいっぱいになってしまっているため、そこに結婚式の準備まで入ってしまったら、確実に萌衣のキャパシティはパンクしてしまうだろう。

「確かに、今はちょっと厳しいかもしれません……」

「非常に仰々しい式になってもいいのであれば、両親や祖母たちに丸投げしてしまってもいい気もしますが……」

 さすがに、結婚式を周りに丸投げしてしまうのは、いかがなものだろうか。

 この結婚は二人のことではあるが、確実に家の関係も入っている。

「私、時間を見つけてプラン練ります」

 英会話に通う前にやることがあったと、深く反省する。

 次の日曜日に、午後からジャンと一緒に結婚式について計画を練ることにした。

 驚くほど色々なプランがあって、目が回ってしまう程だ。

 式の会場もそうだが、お色直しの回数など考えることは山ほどある。

「す、すごいですね……」

 大量に届いた資料に目を通しながら、萌衣は困惑を隠しきれずにいた。

 どのドレスも綺麗で、可愛くて、素敵だ。

「好きなドレスも会場も選んでください。別に日本じゃなくてもいいですし」

 スケールの大きな結婚式になりそうだと、「さすがに海外は……」と遠慮する。

 そういえば、ジャンの両親はイギリスの教会で結婚式を挙げたいと言っていたような気もする。

「ジャンさんは、どこか挙げたい場所はあるんですか?」

「私は、別にどこでも構いません。モエが挙げたい場所ならどこでも」

「そ、そうですか……」

 ジャンのこだわりが特にないのであれば、萌衣の好みで決めてしまってもいいのだろうか。

 しかし、一緒に決めるはずなのに、ジャンの意見がないのは正直、どうでもいいと言われてしまっているようで寂しい。

 ジャンも選んで欲しいと強く主張すればいいのだろうが、TOMOKAのように上手くやりあえる自信はなかった。
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