上 下
71 / 111
Episode07:I protect you

10

しおりを挟む
「きっかけは、ジャンじゃなくて、他の男だったんだよ。ジャンに親友がいてさ。そいつ、超性格悪いの」
 
「ジャンさんじゃだと思ってました。インタビューで御曹司ってお話されてたんで」

「ああ、あの記事読んだのね。確かにあんな言い方だと、清水ちゃんの立場だったらジャンだと思うわよね。その親友も大きな会社の御曹司だったわけ。本当金持ちのコミュニティって狭い中で固まるから、余所者が行くと肩身が狭いわよね、腹立ったから死ぬほど努力して綺麗になってやったし、ざまあ!みたいなね。いい女だってこと分からしてやりたくてさ」

「その人が好きなんですか……?」

 TOMOKAの反応がいつもと違ったので、何気なく萌衣は質問すると、いつもはへらへらとしているTOMOKAの顔が真っ赤に染まった。

「ちょっと……清水ちゃん。あんた変なところでズバッと切り込むわね。ま、まあ……そんなところ。全く相手にされてないけどね」

「そうだったんですね」

「まさか、清水ちゃん。この間から思ってたけど、私とジャンの関係疑っているでしょ」

「そ、そんなことないですよ。仲いいなとは思ってましたけど」

「ないないないない!絶対ない。安心して。本当にこれは神に誓って言える!」

 慌てたように言うTOMOKAに「分かってますよ」と笑顔で返事をする。

「本当に、絶対ないし。ジャンなんて恋愛対象外中の対象外だから。それに、あいつだってほら、清水ちゃんって婚約者がいるのに、浮気なんて絶対しない性格だから……信じてあげて。あいつのこと」

 萌衣よりもTOMOKAの方が付き合いが長いから、ジャンのことを分かっているのだと思っていた。

 だが、TOMOKAと話をしていて一つだけ分かったことがあった。

 萌衣よりも、TOMOKAの方がジャンの幸せを願っているということだ。

 萌衣は、なんだかんだ言いつつも、ジャンの幸せを願うふりをして、自分の幸せを一番に考えてしまっていたのではないか。

 おそらくずっと感じていた違和感は、その差だったのだろう。

「分かってますよ。ジャンさん優しいし、大事にしてくれてます。たまに勝手に横暴なところありますけど。今日も半分軟禁状態ですし」

「あ、それは否めない。まあ、あのくらいちょっと強引なところないと、将来会社経営なんて難しいんだろうけどね」

 TOMOKAは明日撮影があるので夕方近くに帰ってしまい、深夜を過ぎてもジャンは帰ってこなかった。

 玄関で物音がして目が覚めた萌衣は、時計を確認すると明け方になっていた。

 ベッドを抜け出して、玄関へと向かうと、疲れ切ったジャンの姿があった。

「お、おかえりなさい……」

「……念書書かせてきました」

 靴を脱ぎながら話すジャンの言葉の意味が分からなくて、萌衣は「え?」と聞き返した。

「ですから、クレーム入れてきた犯人及び、英会話教室であなたに絡んで来た高岡という女性に、今後一切あなたに近づかないように念書を書かせてきたんです。もう安心していいですよ」

 どうやらジャンは、自分の持っている力を総動員して、萌衣の身の安全を守ってくれるために出掛けていたらしい。

「ありがとう……ございます。でも接待って……」

「そう言ったら、あなたに余計なことをするなと言われると思いまして」

「で、でも……」
 
 あまりに実感が沸かなくて戸惑う萌衣に「眠い」とジャンが覆いかぶさって来た。

「ちょっと、ジャンさん。ベッドで寝てください」

「ご褒美に、一緒に寝てくれませんか。奥さん」

 触れるだけのキスをして、寄り添うように萌衣はジャンと共に彼の部屋へと入って行った。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

Good Bye 〜愛していた人〜

鳴宮鶉子
恋愛
Good Bye 〜愛していた人〜

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜

葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在 一緒にいるのに 言えない言葉 すれ違い、通り過ぎる二人の想いは いつか重なるのだろうか… 心に秘めた想いを いつか伝えてもいいのだろうか… 遠回りする幼馴染二人の恋の行方は? 幼い頃からいつも一緒にいた 幼馴染の朱里と瑛。 瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、 朱里を遠ざけようとする。 そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて… ・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・ 栗田 朱里(21歳)… 大学生 桐生 瑛(21歳)… 大学生 桐生ホールディングス 御曹司

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

処理中です...