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Episode04:I worried about you
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田口が中心となって開催された女子会は、オフィスの傍にあるお洒落なフランスのビストロ料理店だった。
店に入った瞬間、萌衣はジャンに店の名前とURLと、二時間制の飲み放題なので、と終わる時間の予想を送信した。
フランスのアルザス地方の料理など、様々な地方の郷土料理を出しているという店で、全員で色々と頼んでシェアして食べようということになったのだ。
「ところでさ、さっき清水さん、ブラウン部長と何話してたの?なんか、よく話してるよね」
鈴木芽衣子と言う女性社員が、嬉々とした表情で萌衣に尋ねた。
「いや、あの……仕事の話です」
「えー、怪しいなあ。ブラウン部長、なんか清水さんのこと気に入ってるよね」
「あ、それ、分かる」
鈴木の話に名倉藍が同意した。
今日は、田口、鈴木、名倉、萌衣の四人で食事に来ている。
「ちょっと、本人に、実力で仕事取ってきたんだから自信持ちなってアドバイスしたばっかりなんだから、本人の心揺らさないの」
田口が萌衣を守るように、口をはさんだ。
「仕事の実力と、恋のゴシップはベクトル別でしょ。で、実際どうなの清水さん?」
鈴木が楽しそうな笑みを浮かべて、萌衣に詰め寄る。
「いや、あの……」
そのブラウン部長と、家族同士の都合で契約結婚するんです。
とは口が裂けても言ってはいけない気がして、「私、婚約者がいるので……」と精一杯の誤魔化しを入れた。
「え?婚約者?何それ!詳しく」
名倉が興味津々といった様子で、身を乗り出した。
「いえ、そんな大した結婚でもないですので」
「いやいや、結婚に大したもこーしたもないから!」
「ちょっと、名倉、前のめりになりすぎ。清水さん引いてんじゃん。で、どんな婚約者なのよ」
「鈴木だって、前のめりじゃん。ってか、聞いて。この間彼氏がさあ」
鈴木と名倉が楽しそうに言い合っている姿を見ながら「ごめんね。うるさい感じになっちゃって」と田口がフォローを入れてきた。
「いえ、すごい楽しいです。今まで、こんな風に一緒にご飯に行く人会社にいなかったので」
正直な感想を述べると、田口は嬉しそうに笑った。
「よかった。実はさ、ブラウン部長に清水さんのこと頼まれてたんだ」
「え?そうなんですか?」
「そうそう。社内のチームワークの結束を固くしたいから、孤立している人間と、悪評をばらまく人間をなくしたいんだって。確かに、今まで空気悪かったもんね。うちの部署」
「そんなことは……」
「嫌な思いしてるの知ってて、私らも巻き込まれないようにしてたところあったし、鈴木も名倉も気にしてたみたい」
「そうなんですね……」
ジャンが裏でそんな風に動いていただなんて、全く知らなかった。
「まあ、でも頼まれていたからと言って一緒に飲み会に行きたいかどうかは別。今日の飲み会誘ったのは、私が清水さんのことを誘いたかっただけだから、楽しも」
田口の言葉に、萌衣は大きく頷いてもう一度乾杯をするのだった。
店に入った瞬間、萌衣はジャンに店の名前とURLと、二時間制の飲み放題なので、と終わる時間の予想を送信した。
フランスのアルザス地方の料理など、様々な地方の郷土料理を出しているという店で、全員で色々と頼んでシェアして食べようということになったのだ。
「ところでさ、さっき清水さん、ブラウン部長と何話してたの?なんか、よく話してるよね」
鈴木芽衣子と言う女性社員が、嬉々とした表情で萌衣に尋ねた。
「いや、あの……仕事の話です」
「えー、怪しいなあ。ブラウン部長、なんか清水さんのこと気に入ってるよね」
「あ、それ、分かる」
鈴木の話に名倉藍が同意した。
今日は、田口、鈴木、名倉、萌衣の四人で食事に来ている。
「ちょっと、本人に、実力で仕事取ってきたんだから自信持ちなってアドバイスしたばっかりなんだから、本人の心揺らさないの」
田口が萌衣を守るように、口をはさんだ。
「仕事の実力と、恋のゴシップはベクトル別でしょ。で、実際どうなの清水さん?」
鈴木が楽しそうな笑みを浮かべて、萌衣に詰め寄る。
「いや、あの……」
そのブラウン部長と、家族同士の都合で契約結婚するんです。
とは口が裂けても言ってはいけない気がして、「私、婚約者がいるので……」と精一杯の誤魔化しを入れた。
「え?婚約者?何それ!詳しく」
名倉が興味津々といった様子で、身を乗り出した。
「いえ、そんな大した結婚でもないですので」
「いやいや、結婚に大したもこーしたもないから!」
「ちょっと、名倉、前のめりになりすぎ。清水さん引いてんじゃん。で、どんな婚約者なのよ」
「鈴木だって、前のめりじゃん。ってか、聞いて。この間彼氏がさあ」
鈴木と名倉が楽しそうに言い合っている姿を見ながら「ごめんね。うるさい感じになっちゃって」と田口がフォローを入れてきた。
「いえ、すごい楽しいです。今まで、こんな風に一緒にご飯に行く人会社にいなかったので」
正直な感想を述べると、田口は嬉しそうに笑った。
「よかった。実はさ、ブラウン部長に清水さんのこと頼まれてたんだ」
「え?そうなんですか?」
「そうそう。社内のチームワークの結束を固くしたいから、孤立している人間と、悪評をばらまく人間をなくしたいんだって。確かに、今まで空気悪かったもんね。うちの部署」
「そんなことは……」
「嫌な思いしてるの知ってて、私らも巻き込まれないようにしてたところあったし、鈴木も名倉も気にしてたみたい」
「そうなんですね……」
ジャンが裏でそんな風に動いていただなんて、全く知らなかった。
「まあ、でも頼まれていたからと言って一緒に飲み会に行きたいかどうかは別。今日の飲み会誘ったのは、私が清水さんのことを誘いたかっただけだから、楽しも」
田口の言葉に、萌衣は大きく頷いてもう一度乾杯をするのだった。
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