英国紳士の熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです

坂合奏

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Episode04:I worried about you

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 その日、帰る支度をしている時だった。

 スマートフォンに「今夜は、接待がないので、一緒に帰りましょう」とジャンからメッセージが届いていた。

「分かりました。車の前で待っています」と返事を打って、萌衣は地下の駐車場へと向かおうとした時だった。

「清水さん、ちょっといいかな?」

 田口が、萌衣のことを呼んだので、萌衣は振り返った。

「今日、みんなで飲み会しようかって話をしてるんだけど、一緒に来ない?女子会女子会!」

「えっと……今日はちょっと」

「そっか……残念」

 本当に残念そうな表情を浮かべて、田口は言った。

「すみません。また次回誘っていただけたら嬉しいです」

「もちろん。急に誘ったのは、こっちだし」

 あっさりと引き下がって田口は、萌衣の傍から離れて行った。

 行きたかったという気持ちがないと言ったら嘘になるが、ジャンに一緒に帰ることを了承したメッセージを送ってしまったのだ。

 今更、やっぱり飲み会があるので、先に帰っててということを送ることはできない。

 逆の立場だったら、ジャンに同じことをされたらひどく傷つくだろう。

 少しだけ寂しいような気持になって、同僚たちとワイワイと楽しそうにやっている田口を見つめた。

「行ってくればいいじゃないですか?」

 背後から、ジャンの言葉が聞こえて驚き振り返る。

「ジャ……ブラウン部長」

「あなたに同僚の仲間が少ないのは、上司として気になっておりました。気にせず、追いかけて行ってください」

「いいんですか?」

「良いも何も、日付が変わる前に帰ってくればいいですよ。帰りも迎えに行きましょう」

「そんな悪いです」

「夜中にあなたにフラフラされる方が、私としては心配ですから、場所だけ後で教えてください」

 ジャンの心遣いに、驚いて萌衣はお礼を述べた。

「ありがとうございます」

 頭を下げて、萌衣は田口のいる場所へと向かう。

「あの、田口さん!私もやっぱり一緒に行ってもいいですか?」

 息を切らして、追いかけてきた萌衣に、田口とその同僚たちは「当たり前」と受け入れてくれた。

「清水さんと私も話してみたかったんだよね」

「最近頑張ってんじゃん」

「一緒に飲み会しよ」

 萌衣が想像していたよりも、温かい出迎えだった。

 振り返ると、ジャンは既に帰宅した後だった。
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